第3話 おいしすぎる依頼……その裏


「コンコンっと。こんにちわ、おミャアさん。またなんぞ、頼まれてくれんかのぉ?」

「“こんばんわ”、ギルド長。依頼ですか?」

「わしの事はフルー婆さんでいいと言っとるのに……」

「……ギルド長。依頼なら窓口のリザを通してください」



ファンタジーなはだけた和装に、ファンタジーなデカイハンマーを背負い、緑髪をかきわけて頭頂部からケモ耳を生やした、萌え文化の祝福を受けたような見た目のロリババア……全ギルドの統括長、フルー・フリアンは金色の猫っぽい目をパチクリとさせ、仕方ないのぉ――と肩をすくめる。



「窓口終了ギリギリに来るのは、なにかの嫌がらせぬぁんすかぬぇ……」



そうボヤきながらも、渋々とリザが窓口対応に向かう。



「はぁーい。こちら、死霊のたまり場、マリアージュ。ご用件はぁ?」

「急ぎの仕事でのぉ。今日、女神の商店通りに現れる、オッドアイの娘っ子をハーレム要員として、おミャアさん達の手であてがって欲しいのじゃ」

「それはまた……ひどく曖昧なご依頼ですぬぇ」



リザは一瞬だが、しっかりと俺に視線を送る。

警戒が必要な案件、という合図だ。



「あてがう相手は? もちろん転生者っすよね?」

「あっ……あぁー、そういう感じじゃな?」



なんだ、この歯切れの悪さは。

フルーは高齢だが、まだボケていない。

それに、何かを隠してまで依頼するような、依頼の邪魔となる怖い敵も、彼女にはいないはずだ。

そんな敵は、彼女を前にして、2秒と生きてはいないだろうし。


とすると、考えられるのは彼女自身の陰謀か。


お茶を飲みながら、気付かれないように、腕にハメた念話の傍受装置を覗いてみるが、反応は無い。

とりあえず、外に協力者がいて、念話で秘密のやり取りをしているというのは無さそうだ。



「転生者さんのお名前は?」

「確か、久我くがカケルとか言ったかの」

「それで……ヒロインAさんのお名前は?」

「アリス・マードレイスじゃ……そう聞いとるのぅ」

「マードレイス……聞いたことない家名っすね。となると、貴族じゃないっすよね~……町娘さんとかっすかぁ?」

「あぁー……そうじゃよ。鍛冶屋の娘じゃよ」

「鍛冶屋さんに、娘さんなんていたんですぬぇ~……気付かなかったっす」

「なんでも、王都の魔術学院に通っていたらしいのじゃが、ついこの前に里帰りしたらしくてのぉ。それでおミャアさんとは会ったことがないんじゃろうて」



王都の魔術学院ね。嘘なら上手いところをついてきたな。

学院は政府と繋がっているため、秘密主義だから、生徒の情報を公開していない。

遠距離から使い魔を飛ばしての、生徒名簿の照会なんか、門前払いだろう。

だけど、近所の鍛冶屋のおやっさんとは、面識がある。

今は閉店して、もう店にはいないだろうが、明日になればフルーの話の裏が取れる。

鍛冶屋の娘が本当にいたのかどうか。その裏が。



「それで、仕事の期日はいつっすかぬぇ」

「今日中じゃ」



俺は思わず、飲んでいた麦茶を吹き出した。



「今日中!?」

「きったねぇのじゃ、口拭け」

「いやいや、情報集めして、役者雇って、バフ担当募集のためにクエスト受注して、メイクさんとか呼び子さんと連絡取って、“商人の左手”とか、“観測員”のスケジュールまで調べてから、やっと本番やってるんですよ、俺たちは」

「知っとるよ。プランは“裏路地のヒロインA”で頼むからの。夜露死苦よろしく

「勝手に話進めてんじゃねーぞ、このクソババア!」

「酷いのぉ、依頼主に何たる言い草じゃ……ちなみに、報酬は金貨4000万枚じゃぞ」

「4000まっ……えっ」



金は命より重い。

そんな名言が、頭の中をかすめ飛んでいった。



「やりますっす! その仕事ぉ!」



リザが即答したのも、無理はない。

お金で買えないものなど無いのだ。

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ハーレムのご利用は、計画的に。 松葉たけのこ @milli1984

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