第2話 ハーレムプランナー……その裏


「おはようございます。マリアージュ、ギルド支部の皆さん」

「朝じゃねーし、一人しかいねーし、ここしか会社ぬぇーっすけど、てめーの頭は、おはようございますっすぅ、社長~」



さて、紳士淑女、あるいはその成れの果ての皆様。

ようこそ、ここへ。ギルド会館3階、物置部屋に紛れた、真の掃き溜めへ。

ここはマリアージュ。俺がこの異世界に所有する会社であり、悩み多き乙女たちが勇者とのハーレムで人生の一発逆転を企む戦場だ。



「おはよう様を舐めるなよ。おはよう様は、やる気の元。やる気があれば、何でもできる。おはよう様を崇めよ」

「すいませんっすぅ~。私、異教:もうおうち帰りたい教の人間なんすよ、実は」

「残念だ……おぉ、残念だ! 異教に染まりやがるとは」

「だって、終業時刻だし~。もぉーヤダヤダヤダ! 私はおうちに帰るっすぅ!」

「待てコラ! ……これまで家族のように、同じ会社で同じ時間まで仕事をこなしてきた仲だというのに……グググッ! 我が秘書……いや、もはや我が妹、リザ・グラドよ。何か思うことは無いのか!?」

「はは、なに言ってんだ、こいつ」

「この銭ゲバ秘書☆グラドちゃんが……悪質な低確率ガチャで出てきそうな見た目しやがって」



銀髪碧眼、残念美人、兼秘書のリザ・グラドは、一転、棒付きキャンディーの溶けたカスを水着の上にヌチャヌチャとこぼしながら、こちらに猛烈的な抗議を行う。



「こんな見た目にしないと、暑さでやってらんねーんすぅよぉ!」

「きったねぇぞ、口元拭け」

「ん……つーか、あんたにだけは、銭ゲバって言われたくぬぇーっす、社長」



酔っぱらいみたいな口調だ。前は、もう少しマシだったのに。

いや、待て。前から変わってない気もする。



「それで、さっきの仕事はどうだったんすかぁ~、銭ゲバ社長ぉ」

「もう、ほんっと最悪だわ。暴漢役の奴らは、ポンコツ。メイクだって素人かって……」

「んなグチは、どうでもいいんすよぉ~……結果はどうなんすかぁ? カップリングは上手くいったんすかぁ?」

「……上手くいったけど」

「ぬぁら、いいじゃないっすかぁ~。ギルドから報酬も出るしぃ~。お兄ぃ……王様にも褒めてもらえるかもだしぃ~」

「あの、なんちゃって色欲王に褒めてもらえたって、何の足しにもならねぇわ」



とは言え、あの仕事の報酬の額は悪くなかった。

没落貴族を使い、反乱を企てそうな公爵家こうしゃくけとかいう、未来の反乱分子を平和的に潰せた分、執政官たちの評価も高かったのかもしれない。


昨日の仕事、その全容はこうだ。

没落貴族の箱入り娘(今回のヒロインA)ユラ・カリオスちゃんを、将来有望な転生者、白銀しろがねセイジくんのハーレム要員として加えること。

報酬は金貨10枚と銀貨20枚、税として後で引かれる分の銅貨、96枚。



「カリオス家は、相当な問題児ちゃんっすからぁ。王様だってそりゃぁもう、感謝しまくって色々くれるっすよぉ~。例えば、褒美にお姫様の一人とか。チラッチラッ」



没落貴族、カリオス家は代々子爵ししゃくの爵位を継ぎ、公爵こうしゃく家であるユリガ家の補佐役として、ギルドがいの南東部を収めていた貴族だ。

それがどういう訳だか領土を失い、没落してしまったらしい。

高い税率に怒れる市民とか、そんな彼らを陽動した貴族とか、そういう、どーうでも良い事が絡んでるそうだが、そんなことは心底本当どうでもいい。


栄華を極めた貴族が没落して、ハーレムシステムを頼った。

これが大事なことだ。



転生勇者は、危険分子であると共に、将来の成功を約束された存在だ。

勇者は魔王を倒せぬ今であっても、能力ゆえにどの業種でも引く手数多である。

それに、勇者の転生特典、チート能力は、高確率でその子孫に遺伝する。

勇者の子を授かった貴族家は、向かうところ敵ナシになる。


一夫多妻の一人であっても、このように、得られる恩恵はとても大きい。


だから、貴族家の娘や、あるいは町娘であっても、多くの女性がハーレム要員になりたがる。

そこに恋愛感情などは無く、単純な出世欲や処世術が、彼女たちを動かしているのだ。

逆に、ここにそうした感情モノを持ち込む輩は、99.99パーセント痛い目に遭う。



「聞いてるっすかぁ、飛鳥さぁん?」

「……ごめん。何だって?」



ハーレムは損だ。経済的にも、精神的にも。

実際の現実はそうだろう。

だから、俺はそんなものには憧れない。



「そんぬぁんしてっとぉ~……いつか本気マジで刺されるっすよ?」

「え」

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