人物像について

 小説を書くにはキャラクター設定が重要ですよね。「キャラクター設定を綿密に行えばキャラクターが勝手に動く」などと言われたりしますし。これは練り込まれたキャラクター設定を実践すれば、その設定に従って生み出された登場人物の言動や行動が自然に規定されていくということですね。

 また、演劇などでも、演じる役柄について人格・深層心理レベルまで掘り下げて分析を行い、劇中で役柄に生じる感情や状況については、自身の経験や役柄がおかれた状況を擬似的に追体験する事によって、自然な演技を行う「メソッド演技法」などがあります。いずれにせよ、架空のキャラクターの人生や人格などを徹底的に作り込むことがリアリティに繋がる訳です。

 とはいえ、小説を書き慣れていないとキャラクター設定自体も簡単ではないですよね。ですので慣れないうちはシンプルに、

「今描こうとしているキャラクターはどんな人だろう?」

と思い浮かべることから初めてみましょう。そうは言っても小説を書き慣れていないとどこから手をつけて良いか途方に暮れてしまいますよね。そこでこの機会を利用して、

「この話し手はどんなキャラクターだろう?」

と思いを巡らせてキャラクター設定を行う練習をしてみましょう。


 あなたは私をどんな人だと思ってここまでの文章を読んでいましたか? 明確に意識はせずとも無意識に何らかのイメージを持っていたはずです。頭の中に漠然と存在する人物イメージをより具体的に言葉にしていくことは、即ち小説の読者に対してあなたの思い描く人物像を具体的に想起させることにも繋がります。そのような練習を繰り返すうちに、あなたの描いたキャラクターには血が通って、恰も実在の人物のように動き始めるはずです。


 あなたがイメージする私は……


 性別は男? 女?

 年齢は若い? 老いている?

 この話している声は通っている? 嗄れている?

 人種は?

 国籍は?

 家族構成は?

 顔は美しい? 醜い?

 名前は?

 

 どんなものでも構いません。あなたがイメージしやすく親しみやすい「私」をイメージしてください。

 どうですか、無味乾燥だったこれまでの私の言葉にも具体的な体温や手触りが生まれた気がしませんか? より詳細に具体的に話し手である「私」をイメージすることによって、これからあなたが私の言葉を読んでいく際にもまるで実在の人物が語っているかのように感じられると思います。


 小説を書くために、より精緻に具体的に人物を描く練習を積み重ねていきましょう。

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