誰も知らない小さな世界の些細な事

作者 常山 無

生きることは、本当に幸せか?死は絶対に不幸なのか?

  • ★★★ Excellent!!!

生きることは、本当に幸せか?
死とは、絶対的に不幸か。

生きることは素晴らしい。死は絶対に選択肢に入れてはいけない。私たちは皆そう教えられるし、それは決して疑ってはいけないことなのだと必死に念じるようにして日々を生きている。
けれど——もしもそんな綺麗事などでは済まされない状況に、置かれたとしたら。
幼い頃から誰からも愛情を受けることなく、想像を絶する苦しみを身体中に刻まれながら育ったとしたら。
それでも、私たちはそれを信じ続けることができるだろうか。
そんなことを読み手へ真っ直ぐに問いかけてくる、強い痛みを伴う重みに満ちた物語です。

この物語の主人公である少女二人は、外目からの印象は全く対照的でありながら、それぞれに過酷な環境の中で育った。
内面的にも全く異なる二人。それでも、心と身体に抱える痛みは酷似していた。
想像を絶する痛みを堪えて歩いてきた二人だからこそ分かり合えること。二人にしか分かり合えないこと。
彼女達は、やがて二人だけの世界を作ってゆく——。

追い詰められた少女たちの精神の極限状態を、作者はあくまでも淡々と、冷静に書き綴っていきます。そこに描かれているのは、物語というよりも、現実の社会の中にいくらでも潜んでいる地獄ではないかと、そう感じます。リアルでむき出しの鋭さを持つその一言一言は、読み手の心を抉るように突き刺さってきます。——そこでぼんやりと傍観者の顔をしていていいのか、と。

苦しみの中で、狂わない。むしろ一層冷静に穏やかに、現実という地獄を見つめる少女達。痛みを解りあえる存在に出会って初めて幸せを感じ、死に向かうと決意して初めて訪れた穏やかな日々。
そんな人生を歩ききった少女二人の、壮絶な物語。多くの方に是非読んでいただきたい作品です。

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