誰も知らない小さな世界の些細な事

作者 常山 無

82

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★★★ Excellent!!!

ふたりの少女が崖から身を投げるシーンからはじまります。
その絵面はうつくしい。
そこに至るまでのエピソードの数々は
怒涛と言えるほど陰惨な出来事が押し寄せます。
ふたりの正反対のような少女は
どちらものっぴきならない状況にいて
引き合う磁力のようにして一緒に死ぬことにするのですね。
悲しくつらい、美しさもあるお話でした。

★★★ Excellent!!!

自殺って聞くと、命の大切さについて説かれる正論が世の中には溢れている中で、この小説はそれを覆すほどの残酷さがあります。

でもこれは人間社会には現実の出来事であり、当事者になれば誰もが「命が一番大切だ」と安易に言える言葉ではないということを、この作品は教えてくれます。

短編なのに、心に深くしみて強い余韻を残す、ずっと心に残ってしまうであろうお話でした。

★★★ Excellent!!!

個人的に、小説の素晴らしいところは、自分ではない他者の主観で世界を追体験できるところだと思っているのですが、この作品は正にそれです。生々しいほどに、少女たちの感性で捉えられた残酷な世界が見えてきます。


学校でいじめがありました。性的虐待がありました。中学生が自殺しました。
ニュースでよく見る言葉ですね。でも、その被害者が何を考えて、どう生きていたのか、私たちは一生知ることができません。それでも、目を背けないで、ちゃんと考えつづけなければいけない、そんな気持ちにさせられるお話でした。

短いながらも、ずっしりと迫ってくる文章。是非読んでいただきたい、素敵な作品です。

★★★ Excellent!!!

とてもショッキングな出来事で幕を開ける本作。
その後、ことの経緯が語られていきますが、思わず目をそむけたくなるような、胸が痛くなる出来事が続きます。

でもこれは、確実に、この世界のどこかで起きていること。
今自分の周りに存在しなかったとしても、いつどこで、その世界を目にするかわからない。

そんなとき、自分は何をすべきか?何ができるだろうか?
読みながら何度も、何度も考えてしまいます。

人生の終わりを選択する人たちには、それぞれの、決して些細ではない出来事があり、それぞれの、決して他人には測れない痛みがある。
血を吐くような思いで導き出された選択を、ただ「いけないことだ」と否定するのは、彼らの思いを丸ごと否定するのと同じ。

人の痛みを知ろうともしない人たちに、このような作品が、ほんの少しでも触れてくれれば。

今はただ、この作品がひとりでも多くの人に読まれることを願っています。
たった、二万字ちょっとです。すぐに読めます。
二万字ちょっとの中に、新たに得られる大きなものが、必ずあるはずです。

★★★ Excellent!!!

生きることは、本当に幸せか?
死とは、絶対的に不幸か。

生きることは素晴らしい。死は絶対に選択肢に入れてはいけない。私たちは皆そう教えられるし、それは決して疑ってはいけないことなのだと必死に念じるようにして日々を生きている。
けれど——もしもそんな綺麗事などでは済まされない状況に、置かれたとしたら。
幼い頃から誰からも愛情を受けることなく、想像を絶する苦しみを身体中に刻まれながら育ったとしたら。
それでも、私たちはそれを信じ続けることができるだろうか。
そんなことを読み手へ真っ直ぐに問いかけてくる、強い痛みを伴う重みに満ちた物語です。

この物語の主人公である少女二人は、外目からの印象は全く対照的でありながら、それぞれに過酷な環境の中で育った。
内面的にも全く異なる二人。それでも、心と身体に抱える痛みは酷似していた。
想像を絶する痛みを堪えて歩いてきた二人だからこそ分かり合えること。二人にしか分かり合えないこと。
彼女達は、やがて二人だけの世界を作ってゆく——。

追い詰められた少女たちの精神の極限状態を、作者はあくまでも淡々と、冷静に書き綴っていきます。そこに描かれているのは、物語というよりも、現実の社会の中にいくらでも潜んでいる地獄ではないかと、そう感じます。リアルでむき出しの鋭さを持つその一言一言は、読み手の心を抉るように突き刺さってきます。——そこでぼんやりと傍観者の顔をしていていいのか、と。

苦しみの中で、狂わない。むしろ一層冷静に穏やかに、現実という地獄を見つめる少女達。痛みを解りあえる存在に出会って初めて幸せを感じ、死に向かうと決意して初めて訪れた穏やかな日々。
そんな人生を歩ききった少女二人の、壮絶な物語。多くの方に是非読んでいただきたい作品です。

★★★ Excellent!!!

こちらを拝読したのは8月の終わりでした。レビューするまで、これほど時間がかかった作品は初めてかもしれません。

それはたぶん、わたしにとって近すぎる物語だったからです。わたしの中の、おそらくは一生消えない傷を直に刺激してくるお話で。

けれど、救いのない物語が救いになることがある――ということもまた知っています。

万人におすすめできるお話ではありません。トラウマを刺激されて、心乱される人もいるかもしれません。それだけの力を持った作品です。

これは、物語であって物語ではない。すぐそこにある現実。こうしている今もどこかで起こっている、現実のお話です。

★★★ Excellent!!!

悲しく、切ないストーリー。
なのにとても美しい。
ただの百合では無い、新しい愛のカタチ。
初めは、癒し合いなのか、慰め合いなのか、とも思いました。
でもそうじゃない。
ただ、お互いがお互いの為に必要だった。
そんな、ささやかな2人だけの愛の物語。
きっと、あなたも一気読みしてしまいます。