交差する世界で(2)

 そのとき、穂花は何が起こったのか全くわからなかった。

 何か、勢いよく自分が掻っ攫われていくような……。SFのワープなんかはこんな感じなんだろうか。


 あまりに事が急すぎて、視界もはっきりしない。

 気づいたら、部屋の真ん中にちゃぶ台しかない、本だらけのとても殺風景な部屋に連れ込まれていた。


 そして急に息を切らせた、誘拐犯に抱きしめられて、玄関のドアに押し付けられた。


「……宮内……さん?」


 見覚えのある少女だった。

 細くて、美人で、頭もいいし、運動もできる。

 でも、気取ったところが何もなくて、クラスどころか、学年でも一番の人気者。


 穂花が近づけるような存在ではない。


 始業式の日、保健室に連れて行ってくれたのが舞だと知って、何度もお礼に行こうと思ったが、常にたくさんの級友に囲まれている舞に話しかけるなんて事、到底出来なかった。


 その舞が、なぜ?


 咄嗟にさっきまでの出来事が、頭の中に蘇った。全身が震えて、制御できない。

 ……きっと、見られてしまったんだ。

 立っている事が辛くて、その場に崩れるようにしゃがみ込むと、抱きついている舞も一緒にしゃがみ込んだ。


「……大丈夫。……大丈夫……」


 背中を撫でられて、囁かれる。

 胸の中の熱い物がどんどん大きくなって、耐えられなくなって、それは大きな嗚咽をもたらした。

その大きな苦しさはもっともっと膨らんでいく。

穂花はそのまま大声を上げて泣いた。


 舞は穂花が泣き止むまで、ずっとその体制で背中をさすってくれた。

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