【15】美男は手解きして楽しむもの
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――翌朝……。
「蓮さん帰らなかったの?」
諸星の言葉に心が傷んだ。
「昨夜は随分騒がしかったようだな」
鳴海店長の言葉に、私は返答出来ない。
「明日広島から新しいスタッフが配属される。波瑠の部屋を使うから、みんな宜しくな」
広島から新しいスタッフか……。
三上は本当にもう戻って来ないんだね。
「鳴海店長、その人、素人じゃないよね?」
諸星は可愛い顔をして、時々言うことはキツい。
「美容師の資格はあるそうだ。詳しくは本人が来てからだ」
「良かった。資格がないと即戦力にならないよ。あっ、類のことじゃないからね。気にしないで」
絶対に、私のことだよね。
「類、メイクの練習しているのか? 美容師の資格を取りたいなら、それなりの指導もするがどうなんだ?」
「私が美容師なんて……」
――『俺が店長になったら、類を俺の店に引き抜く』
――『だからそれまでに色々な技術を身につけてプロになれ』
三上の言葉が鼓膜に甦る。
私には無理だよ。
人には向き不向きがある。
努力だけで、誰もが一流の美容師になれるわけじゃない。
それに……
私が本当にやりたいことは……。
ヘアメイクのプロではなく……。
「やっぱりエステティシャンに戻りたいのか?」
「えっ?」
「蓮が、『類はエステティシャンに戻りたいと思っているはずだ』と、昨夜飲みながら言っていたから気になってな」
香坂が……
そんなことを?
私の気持ちを……
どうして知ってるの?
誰にも話していないのに。
「エステティシャンに戻りたいなら、俺が口添えしてやる。beautiful line corporationのエステサロンは都内にも数店舗あるからな」
「鳴海店長……」
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