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「すみませんね。貧乳で」


 ステージに向かうと、すでにbeautiful heartとbeautiful cherryのモデルがガウンをつけハイチェアに座っていた。


 二人ともロングヘアの美女だ。香坂は他店のスタッフと挨拶を交わす。


 beautiful heartのモデルを見た香坂の視線が止まった。


「あら、蓮、久しぶりね」


「瑠璃……」


 瑠璃? どこかで聞いた名前。


 瑠璃……。


 あっ、香坂の元カノ!?


 ショーのモデルをする予定だった女性!?


 beautiful heartのスタッフと彼女は親しそうに話をしている。


 もしかして今彼なの?

 系列店で複雑だな。


 すでに火花がパチパチしてる。


 あの香坂が……。

 元カノ登場にまさかの動揺!?


「私の代わりに男の子を選んだの? 女装でもさせる気?」


 ぶっ、男の子!?


 女装!? はあ? 私のこと!?


「それもアリだったかもな。男性モデルはNGだとどこにもエントリー資格には明記されていない」


「男の子にあのワンピースを着せる気? まさかね、香坂蓮が私のお下がりを新しいモデルに着せないわよね」


 ヤバいな、私、着る予定なんですけど。


「着せないよ。類、いつまで突っ立ってる。早く椅子に座れ」


「はい」


 ていうか、衣装どうするの?


 ステージにスポットライトが当たる。私の顔が緊張で強張る。


「類、楽しそうな顔をしろ」


 全然楽しくないよ。

 もう帰りたい。


 香坂はヘアから取り掛かる。ショートヘアをいきなり逆立て始めた。


 ええー!! 鶏冠じゃないんだから。

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