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 鍵を開け室内に入る。


「類、俺は朝シャワーを浴びるから。お前浴室使っていいよ」


「はい。おやすみなさい」


 なんかスッキリしない。


 和服美人と香坂の、親密だけど微妙な距離感。二人の関係者が気になり悶々としてる。


 ◇


 翌朝、部屋を出るとシャワーの水音がした。香坂の部屋のドアは開いている。


「類、髪色変えたんだ。似合ってるよ。表情が明るくなった」


「ありがとうございます」


「昨日遅かったね。蓮さんとどこに行ったの?」


「駅裏の恋唄ってお店。捺希さん知ってる?」


「恋唄? 知らないな。蓮さんの隠れ家かな?」


 隠れ家か……。

 確かに、そんな感じだった。


「蓮さんが類を隠れ家に連れて行くなんて意外。類に気を許してるってことだよね」


「私に? まさか、店主に『お兄さん』って呼ばれて、蓮さん笑ったんだよ。失礼しちゃうよね」


「お兄さん?」


 諸星はクスクスと笑う。


「類、みんなに奢るはめになるかもよ。お金貯めときなさい」


 それって、私が賭けに負けるってこと?

 諸星も可愛い顔して失礼しちゃうな。


 いよいよ明日はファッションショーだ。まだ前日なのに、考えただけで足が震える。


 小心者の私。

 男にしか見えない私。


 本当に上手くいくの?


 ニューハーフにしか見えなかったら、どうしよう。


「おはよう類、カラーしたんだね。前よりいいよ。昨日遅かったね。蓮さんと何してたの?」


 三上にポンッと頭を叩かれた。


「な、何もしてません。誤解しないで下さい。カラーして、おでん食べただけです」


「おでん? 蓮さんと?」


「はい」


 三上はちょっと首を傾げる。鳴海店長が二階から降りて来た。


「類、いよいよ明日だな」


 うわ、意地悪だな。


 プレッシャー感じてるんだから、その話に触れないでよ。

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