【8】美男はその気にさせて楽しむもの

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 ◇


「鳴海店長、もう飲まない方がいいですよ」


 鳴海店長は吉沢カンナと別れた日、珍しく私達の前で煽るようにビールを飲んだ。


「類、男にはとことん酒を飲みたい日もあるんだよ」


 香坂は私をたしなめ、鳴海店長にビールを勧める。


 酒を飲みたい日って、毎日飲んでるじゃない。みんな酒豪なんだから。


「蓮さん飲ませ過ぎですよ」


「ていうか、スタッフ全員類は女だって説明しているのに、信じてもらえないなんてアレだな」


 アレって何よ。


「蓮さん、それは制服を着てるからだよ。僕達と同じ制服を着ていたら、男だと思っちゃう」


「そうか? 小池真理亜がbeautiful magicの制服を着ても、男には見えねーよ」


「確かにそうだな」


 鳴海店長は枝豆を摘まみながら頷いた。


「小池真理亜さんと蓮さんは付き合ってるんですか?」


「俺が? そう見える?」


「はい。見えます。毎日来店されるなんて、絶対付き合ってますよね」


 いつも香坂にバカにされている私は、ここぞとばかり力説する。


「小池真理亜は俺の大切な常連さんだ。他の客もみんな恋人だよ」


「恋人!?」


「ばーか、恋人みたいに愛しい存在だと言ってるんだ」


 うわっ、でた。


 このセリフ、三上なら様になるが、香坂には全然似合わない。


「そう言えば……波瑠さんは?」


「今夜は友達と飲みだってさ。ていうか赤い口紅つけてる友達だったりして」


 三上に……恋人?


 あんなに美男なんだ。

 紳士的だし、優しいし、恋人がいても不思議はない。

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