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ウルウルしてる私を、香坂がカップ麺を啜りながら見ている。
うー……。
それ、私のカップ麺だし。
「でも傑作だったな」
「蓮さん、なにが?」
諸星はホットドッグにかぶり付きながら、香坂を見つめた。
「客は誰一人、類が女だと気付かなかったことだよ」
「……ぷっ、ごめん、類。それはお客様の思い込みだよ。beautiful magicは男性スタッフだけだと、店舗の公式サイトでも宣伝してるから」
諸星のフォローが何故か虚しく聞こえる。女として、仕事のミスよりもダメージが大きいかも。
「鳴海店長、どうします? 類が女性だと公表した方がいいのでは?」
鳴海店長はビールを飲みながら、私を見つめた。
「別に説明する必要もないだろう。錦折が戻らなくても、代わりのヘアメイクアーティストがいずれ来るはずだ。類はそれまでのアシスタントだからな」
「どうせ私は女としての色気も魅力も欠落してます」
「自分で認めてんの? 結論から言うとそういうことになるな」
「蓮さんそんな意地悪言わないの。類は可愛いよ、だから自信持って」
「だったら、いつ客が気付くか賭けないか? 負けたヤツは高級クラブで奢る」
私の性別を賭けの対象に?
バカにしないでよ。
すぐに気付くに決まってる。
「気付かないに、一票」
真っ先にテーブルの中央に缶ビールをトンと置いたのは、鳴海店長だった。
「俺も気付かないに一票」
香坂が缶ビールをテーブルの中央に置く。
まさか、三上と諸星はこんな賭けに参加しないよね?
だって、癒し系と乙女系男子。か弱い女性をくだらない賭けの対象にはしないはず。
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