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「お仕事忙しそうですね」


「お陰様で。捺希さんのお蔭だよ。今日もウーンと綺麗にしてね。今度デートしない?」


 口調がオネエ系?


 ウーンと綺麗に?


「はい、畏まりました。ウーンと綺麗にですね。今度ライブ見に行きます」


「ライブじゃなくて、二人きりでデートしようよ。アフターとかダメなの?」


「屋代様、ここはクラブじゃありませんから」


「いやん、イジワルね」


 いやん!?


「類、西野様をお見送りして」


「はい、先ほどは申し訳ありませんでした」


 私は西野に深々と頭を下げる。


「鳴海店長のもとで、しっかりお勉強なさい」


「西野様ありがとうございました」


 鳴海店長は店の外まで西野を見送る。すぐにブティックに戻り、北麹のスーツの直しを採寸する。


 何をしていても様になってるな。


 振り向くと、屋代はみつ編みのエクステでアップにし、大きなカチューシャをつけた。


 あの髪型……どこかで見たことある。


「今日はね、お台場海浜公園でライブなの」


「専属のヘアメイクさんこないの?」


「私の専属は捺希さんだから。局に来て欲しいけど、忙しいでしょうから私が来てるのよ」


「大人気のヤッキーさんに来ていただけて嬉しいです」


 ヤッキー!?


 あの青年が美少女キャラで売り出し中のお笑いタレント。


 諸星は屋代にメイクを始めた。屋代はウットリとした眼差しで諸星を見つめる。


 美少女キャラは演技ではなく、屋代は内面も乙女なんだね。


「類、北麹様のお見送りをして」


「はい、北麹様本日は大変失礼致しました」


「今後気をつけるんだな。捺希君、ではまた」

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