32

 鳴海店長はやっぱり大人だ。ちゃんと私の気持ちも考えてくれている。


 みんなに申し訳なくて、私はニンニク入りのギョーザをパクパクと口に押し込む。


 口の中から、ニンニクが丸ごと飛び出しそうだ。


「類、意外と食べるんだね」


 三上が笑いながら私を見つめた。


「おい、そんなに食っても胸はデカくならないよ。腹が出たら水着着れねぇだろ」


「水着? 蓮さん何のこと」


 諸星がスペアリブを食べながら、香坂を見つめた。


「えっ……もしかして、瑠璃さんの代打?」


「そういうこと」


「まじ? プロポーション違い過ぎるよ」


 やっぱりみんな突っ込むところはそこだ。男ってどうして女性の胸に拘るのかな。


 思わずグラスを掴んで胃袋に流し込む。


「あっ、それ俺のビール」


「波瑠さんの……!?」


 またやってしまった。


 頭がグラッし、目が回る。

 ドンッとグラスをテーブルの上に置いた。


「貧乳、貧乳って煩いよ。女の価値はおっぱいなんね。エロ雑誌抱えて妄想しとる香坂蓮、なにが草食系よ、なにが……うぅ……」


 アルコールのせいで、涙腺が緩む。


 二日続けての醜態。


 今日こそ、クビだな。


 ◇


「うわっ」


「目が覚めた?」


「捺希さん……私」


「グラス一杯で酔うんだね。本当に可愛い」


 ベッドに横たわる私を、諸星がニヤニヤと笑いながら見ている。


「今……何時ですか?」


「午後十一時、大丈夫まだ朝じゃないよ」


「はぁー……、私ダメですね。完全に空回り」


「そうだね。でも一生懸命なのは認める。ギョーザもスペアリブも美味しかったし」


「捺希さん……」

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