第243話

 元々はヤマト大国という国で暮らしていたという言葉で、コジロウの話が始まった。

 自然豊かな国で、他国からの侵略がなければ自分たちから争いを仕掛けることなどしない民族だった。

 山を隔てたドヴォルク国とも親交があり、ドワーフ族から鍛冶の技術などを教えてもらう代わりに、ヤマト大国で育てられた食料や、独自の製法で作られたエールなどを輸出していた。

 ヤマト大国やドヴォルク国は、この世界が出来た当初からあると言われている。

 その裏付けとして、職業選択の自由がないからだ。

 山に囲まれた土地ということもあり、他の世界を見ていないともされているが、その後に現れたエルフ族の存在で、世界には多くの種族がいなかったとエルフ族の文献にも残っているそうだ。

 その当時は魔物は動物と一緒にされていたが、月日とともに体の中に魔核というものがあると分かり、エルフ族が最初に魔物と名付けた。

 エルフ族にドワーフ族、そして人間族。

 それぞれが国を持ち、適度な距離間を保っていたことで世界の均衡は保たれていた。

 数百年の年月が経ち、ヤマト大国以外にも人間族が現れて建国するようになる。

 その人間族が、どのようにして誕生したかは謎のままだ。

 ヤマト大国の人間と大きく異なるのは、好戦的なことだった。

 先住民であったエルフ族に攻撃を加えて、豊かな森を伐採するなどしたことで、エルフ族と人間族との間で争いが起こる。

 最初こそエルフ族が圧倒していたが、人間族のなかにも幾つかの属性を持つ魔法という力を手にした者が現れた。

 風の精霊魔法の他にも多属性の魔法を使用していたエルフ族だったが、人間族にも多属性の魔法を使うことが出来る者もいた。

 なによりもエルフ族と人間族とでは、戦う人数に大きな差があった。

 その差を埋めていたのが魔法だったが、人間族が魔法を手にしたことで形勢が逆転する。

 徐々に追いやられるエルフ族にヤマト大国は静観していた。

 助けを求めても応じようとしないヤマト大国の人間族も、自分たちを襲った人間族と同じだという結論を出し、ヤマト大国との断交を決定する。

 森を焼き払い、ドワーフ族が製作した武器で仲間を殺されたことで、ドワーフ族が人間族に手を貸したと判断したエルフ族は、ドワーフ族にも敵意を抱くようになる。

 だが、ドワーフ族は自分たちの製作した武器がエルフ族を襲うために使われていたことは知らなかった。

 人間族は言葉巧みにドワーフ族を騙して、武具を入手していたからだ。

 その事実を知ったドワーフ族は、人間族への武具の提供を止める決断をした。

 エルフ族に伝えたが、ドワーフ族の言葉にエルフ族が耳を傾けることは無かった。

 暫くすると、人間の領地に少数しかなかった迷宮ダンジョンが多く発見される。

 それがエルフ族との戦力差を決定的にする。

 最終的にエルフ族は、大きな湖に囲まれた土地に逃げ込んだ。

 その土地には多くの自然が残っており、中央には世界樹と言われる大きな樹がそびえ立っている。

 湖にも凶暴な魔物が生息している。

 風の精霊魔法を使うことが出来るエルフ族は飛行技術があるが、人間族が船を出して湖を渡ろうとすれば魔物の餌食となる。

 こうして、エルフ族は世界から隔離した場所で生活することとなる。

 エルフ族は今も、人間族やドワーフ族を敵視しているだろうと話を一旦終えた。


「まぁ、私たちも自分たちが作った武器や防具が魔物討伐や、狩り以外で使用されていることを知らなかった。だけど、知らなかったで済ませられる問題でもない」


 カリスの言葉から、今もドワーフ族が製作した全ての武具を輸出していない理由なのだと悟る。


「聞いた話だと人間族は急激に増えたため、資源不足だったらしいので、エルフ族の領土を奪っても資源が欲しかったのだろう」


 この世界の多くの土地は元々、エルフ族の領土だった。

 そして自分たちが暮らしていた場所も、エルフ族たちを追い払った場所という事実に、リゼは会ったことも無いエルフ族に申し訳ない気持ちを抱く。

 飲み物を一口飲むと、コジロウは話の続きを始めた。

 エルフ族が手の出せない土地に移住したことで、次にヤマト大国とドヴォルク国を自分の国にしようと考える者が現れる。

 その頃、人間族の間ではアルカントラ法国主導で“成人の儀”という特殊な能力を得る儀式が世界各地で行われていた。

 そう誰もが十歳になると神から授かる“スキル”だ。

 だが、ヤマト大国の人間に関しては一部の例外を除き、十歳になると同時に職業が“侍”と“忍”に決定する。

 これは血筋によるものらしい。

 そして、侍には“剣技”、忍には“忍術“というスキルを得る。

 ともに、修行や鍛錬を積むことで新しい技を覚えるそうだ。

 つまり、成人の儀はヤマト大国の国民にとっては意味のないものだった。

 しかし、実状を知らないアルカントラ法国からは再三にわたり“成人の儀”をするようにと通告を受ける。

 エルフ族とのこともあり、開国すべきだという意見も出始めたため、アルカントラ法国の要望を受け入れて、ヤマト大国内に教会を設置した。

 すぐにヤマト大国の民には、成人の儀が必要ないことを知ったアルカントラ法国だったが、アルカントラ法国の支配下という意味も含めて、機能しない教会を継続することを決めた。

 必要最低限の国交のみとしていたが、アルカントラ法国を招き入れたことで、隣国であるリリア聖国からも教会設置を要求される。

 アルカントラ法国より、リリア聖国は邪教と聞かされていたヤマト大国はリリア聖国の要求を拒否する。

 しかし、諦めずに何度も要求を突き付けてくるリリア聖国。

 その度に、拒否するヤマト大国。

 何年も同じやり取りが続いていた……そして、ヤマト大国が大火事になり滅亡することとなる。

 だがそれは表向きだった。

 実際は痺れを切らしたリリア聖国が侵略して、最終通告だとヤマト大国に脅しをかけるが、ヤマト大国は今まで通りに要求を拒否した。

 それが開戦の合図だったかのように、リリア聖国の侵略が始まる。

 百人程度の国民しかいないヤマト大国に対して、リリア聖国は千人という大人数で攻め入る。

 四方の山々に火を放たれ、次々と殺されていく人々。

 女子供関係なく、無残に殺されていく。

 当時、幼かったコジロウも両親とともにドヴォルク国へ避難した。

 コジロウの顔は怒りに満ちていた。

 国民の大多数を失ったヤマト大国。

 先祖代々過ごしてきた土地もリリア聖国に奪われたため、逃げ延びた人々はドヴォルク国でひっそりと暮らしているそうだ。

 しかし、コジロウは復讐者の目をしていることに、カリスは気付いていた。

 リゼは殺気の恐怖を思い出したのか、体が硬直していた。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十一』

 『魔力:三十』

 『力:二十五』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十一』

 『魔力耐性:十六』

 『敏捷:百一』

 『回避:五十三』

 『魅力:二十四』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・購入した品を二倍の販売価格で売る。

  ただし、販売価格は金貨一枚以上とすること。期限:六十日

 ・報酬:観察眼の進化。慧眼けいがん習得


■サブクエスト

 ・瀕死の重傷を負う。期限:三年

 ・報酬:全ての能力値(一増加)


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加) 

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