いっしょに遊ぼう

大澤めぐみ

いっしょに遊ぼう


 スーパー、から家にかえるまでの道のわきに、首つり屋敷、ってよばれて、いた建物があって、ただのきたない家で、ぜんぜん屋敷じゃ、ない、けどみんな首つり屋敷、って、呼んでて、まだ人が住んでたときから、ただのきたない家だったけど、じつはその家の人たちは一家心中? してて、だから途中からもう人は、住んでなかった、んだけど、誰も気づいてなくて、すごくくさくて、近所の人が警察にでんわして警察の人がいったら、なかでみんな死んでて、みんなをころした旦那さんも首、をつって死んでて、でももうずるずるになってた、から、もう首はつってなくて、ずるずるになってユカにおちていて、それからずっと誰も住んでなくて、きたない家はもっときたない家になってて、ウラの勝手口、がこわれていて、そこからなか、に、はいれるから、中学のときはよく男の子たちと勝手になかに、はいって、遊んだ、りしてた、んだけど、今日ふと見あげてみたら、二階のマドのところに、知らないおじさんがいて、いっしゅんこっち、を見た、んだけど、すぐに見えなくなった。なかで遊んでる、のかな、とおもって、わたしもウラの勝手口にまわってなかにはいったけど、そういえばスーパーからかえるとちゅうだから、いそがないと牛乳、がぬるくなっちゃう。

 どうしようかな、っておもったら、うえ、でがたがた音がしたから、気になって、中学のときになんどもなか、には、はいってるから、ぜんぜんまよわない。ぎしぎしいうカイダン、をのぼって二階のたたみのヘヤ、にはいったら、しらないおじさんがピストルをこっちにむけていて、びっくりした。

「……なんだ、どうしたお嬢ちゃん、こんなところに」

 おじさんはそういって、ピストルをおろした。きたない家のきたないたたみ、に、じか、に、すわっていて、ヘンなガラのシャツをきていて、おじさんもヘンなガラのシャツも、家とおなじくらいにきたない。

「人がいたから、遊んでるのかとおもって」と、わたし、は、へんじをした。いってから、あ、そういえば、しらない人と、ハナシをしちゃいけないんだった、て、おもいだした。ママがいつも、そういってる。

「遊ぶって……こんなおばけ屋敷みたいな廃墟に、遊びにこないだろ、普通は」

 おじさんがなんかいってて、首つり屋敷、は、おばけ屋敷、みたい、じゃなくて、ほんとうにおばけがでるから、ちゃんとおばけ屋敷だし、いまはもう誰もこないけど、たぶん、どこかにいっちゃったから、もうこないけど、中学のときはわりとみんなここで遊んでたから、おばけ屋敷では遊ぶものだとおもう。おもったけど、しらない人とはなしちゃいけないから、いわなかった。かわりに「おじさん、だれ?」と、きいた。

「おじさんって……まあ、お嬢ちゃんから見りゃあ十分におじさんか……。俺は、桐生だ」

「きりゅう?」

「そう、桐生。木の桐に、生って書いて」

 おじさんがたたみにゆびでモジをかく、ほこりがつもってるから、ちゃんとのこる、から、わたしもスーパーのフクロをおろし、て、ちかくにしゃがんで「わたしはね」と、自分の名前をモジで、かく。

「み……ぶ………………せ………………まい」

 千と生はすぐかけるけど、瀬はむずかしいし、舞もものすごくむずかしく、て、いつも、だんだんおしりのほうがおおきくなっていっちゃう。テストのときも、まいかい、名前をかくらんのなかに、名前がおさまらなくて、こまった。

「あ、おじさんも、ぶ、は一緒だね」

 しらない人としゃべっちゃだめだけど、おじさんは桐生って人だってもうしってるから、しらない人じゃないし、しゃべってもだいじょうぶだ、と、おもう。

「お嬢ちゃん、ひょっとして、その……あんまり、頭がよくないのか?」

 おじさんが、目をかたっぽだけほそめて、そう、いって、わたしは「うん」と、へんじをする。「軽度知的障害なんだって」

 軽度知的障害、は、むずかしいことばだけど、なんどもいったから、おぼえてる。

「なるほどな。まあ、あれだ。あんたみたいにかわいいお嬢ちゃんが、こんなおばけ屋敷みたいなところにひょいひょい入り込んでると危ないから、はやいとこ帰んな」おじさんがいって、もういちど、ピストルをこっちにむける。「じゃないと、おじさんみたいなのに、あっさり殺されちゃうかもしれないぜ?」

 でも、たぶんおじさん、はわたしを殺さないとおもうし、中学のときもなんどもはいりこんで遊んでたけど、おばけはでたけど、殺されなかったから、ここで遊んでても、だいじょうぶだとおもう。

「おじさんは、ここでなにしてるの?」

「おじさんはね、人殺して逃げてきて、ここに隠れてんの」

「ダメじゃん」わたしはあんまりあたまがよくない、けど、人を殺したらダメなのはしってる。たぶん、ものすごい、おこられるし、なぐられる。おこられる、のも、なぐられる、のも、いやだから、殺しちゃダメだとおもう。「なんで殺しちゃったの」

「殺したかったわけじゃねーよ。殺してこいって言われたの。俺、ヤクザの鉄砲玉なんだわ。いや、ヤクザっていっても、ケンカができるわけでも気合いが入ってるわけでもねぇ、ずるずる借金焦げ付かせて世間様からドロップアウトして、パチンコ屋の打ち子やったりしてただけだったんだけど。恩義のある兄貴に殺してこいって言われたらさ、断れねぇじゃん。こりゃ、俺も人生で一回くらいは気合い入れなきゃなって」

「ふーん?」よくわからない、けど、きらいだから、とか、ムカついた、から、殺したんじゃなくて、殺してきなさい、て、いわれて、殺した、て、ことっぽい。怖い人に、やりなさい、て、いわれたら、わたしもやっちゃうかも。「でもじゃあ、なんでこんなところに隠れてるの? おんぎのあるあにきのところに行けば?」

「それがさ。シロだったのよ。殺してこいって言われてソッコー出掛けていって殺したんだけどさ、その相手がシロだったの。早とちりだったわけ」

「シロって?」

「悪いことをしたやつだと思ってたけど、それは勘違いで、なにも悪いことしてなかったんだよ。俺、勘違いで悪くない人を殺しちゃったの」

「でも、殺してきなさいっていわれてやったんでしょ? じゃあ、かんちがいしたのはおじさんじゃなくて、その殺してきなさいっていった人じゃない?」

「そうなんだけどさ……でも、勘違いでもなんでも、殺っちまった以上は誰かが落とし前つけなきゃ収まらねぇんだよ、こういうのは。しかも、よりにもよって、ビビりの俺が今回ばかりはなんでか妙に気合い入って、ソッコーで殺っちまってさ。いつも通り、ビビッてぐずぐずしてたら、その間に実は勘違いだったってことが分かって、ぜんぶ丸く収まってたはずなんだよ。ほんと、間が悪いんだ」

 ――間の悪い人間が、人生にイッペンの晴れ舞台だなんて、妙に気合いを入れるべきじゃなかったんだ。間が悪いんだもの。気合いを入れたって、絶対にしくじるに決まってるんだ。

 なんか、いっぺんにいろいろといわれた、から、わからなかった。

「じゃあ、おじさん、隠れてるだけで、忙しくないんだ?」

「うん……? まあ、忙しくはねぇけどな。あとは追手に嗅ぎつけられるまで、なんとか息を潜めてるくらいしかやることねぇし」

「じゃあ、遊ぶ?」

 わたしがきくと、おじさんはマユをぎゅっ、と、よせて「なに言ってんだ?」と、いう。

「こんなところで変なおじさんと遊んでないで、もっと別の人に遊んでもらえよ」

「だって、みんなどっかいっちゃったんだもん。中学とか高校のころは遊んでくれる人もいたけど、さいきんはずっとひとりだよ。つまんないよ」

 中学のときは、クラスのオタクっぽい男の子が、しゃべりかけてきたから、いっしょに遊ぶ、ようになった。学校のかえりとかに、ここでよく遊んだりした。けど、そのあとサッカー部の子もしゃべりかけてくるようになって、なんかいろいろいわれて、遊ぶようになって、そしたら、オタクっぽい子とサッカー部の子と、りょうほうと遊んでたのがよくなかった、みたいで、なんか、おこられた。りょうほうと遊んじゃダメだっていうきまり、を、しらなかったから、どっちもじゃダメなの? といったら、なぐられたから、おこられるのはいやだ、し、なぐられるの、は、もっといやだから、オタクっぽい男の子と遊ぶのはやめたし、べつの男の子と遊ぶのもやめにした。でも、りょうほうと遊んじゃだめだけど、サッカー部の男の子たちみんな、と、いっしょに遊ぶのはべつにいいらしくて、みんなで遊んだ、りもした。

 ベンキョウしたり、おつかいしたり、しても、じょうずにできなく、て、おこられるばっかりだから、いやだけど、わたしは遊ぶのはじょうずだから、いっしょに遊ぶ、と、ほめられるから、うれしいし、たのしい。

「高校のころって、お嬢ちゃん、もう高校出てるのか? 何歳だ?」

「あ、えっと、でてはいないよ。もういってないけど。18だよ」

「18か……、もっと、中学生くらいかと思って。童顔なんだな。いや、印象の問題か?」

 わたしはだいたい、ほんとうのトシよりもずっと、したにみられるけど、たぶん、バカだからだとおもう。

「あのね、高校に入ってからも、またクラスの男の子と遊んでたんだけど、そしたら、しみちゃんが、ないわ~っていうから、その子と遊ぶのはやめにして、しみちゃん、が、つきあいなっていう人、と遊んでて、彼女ができると、もう遊ばなくなるけど、そしたら、またしみちゃん、が別の男の子をつれてきて、この子と、つきあいなっていうから、その子と遊んだりしてたから、よかったよ」

「え? なに? 遊ぶって、そういう話?」って、おじさんがいう。「乱れてんな。いや、悪いのはお嬢ちゃんじゃねぇか。周りに誰もマトモなやついなかったのか」

 高校のころは、バカでも、おつかいもじょうずにできなくても、スカートをみじかくして、わらって遊んでれば、ほめられたから、よかった。ときどき、男の子は、おこったり、なぐったり、してくるけど、そうすると、しみちゃんがまた、ちがう男の子をつれてきて、くれるし、いつも誰かはいたから、さみしくなく、て、たのしかった。

「でも、やっぱりわたしバカだから、なんかいろいろ、きまりとか、が、よくわからなくて、トモくんがケイくんを、なぐったり、ヨシくんがトモくんを、なぐったり、あと、わたしもボコボコになぐられたり、して、しみちゃんも、もうさすがに高校にいられないね~みたいなかんじ、で、やめちゃったから、わたしも高校やめ、て、しみちゃんは東京、に、いって、キャバクラではたらいてる、んだけど、わたしはママがダメっていうから家にいて、もう誰もいないの」

 いって、わたしはヘンなガラのシャツのうえから、おじさんの乳首をつねる。わたしは遊ぶのがじょうずなので、服のうえから乳首のばしょをあてるのもとくいだ。

「ねえ、つまんないよ。おじさん、遊ぼうよ」

「いや、ダメだって。お嬢ちゃん、こんなとこで知らない変なおじさんと遊んだりしてたら、ロクなことにならないぞ? さっさと家に帰りな?」

「だって、家にかえったって誰もいないもの。ママはクラブで、はたいて、るから夜中まで、かえってこないし、テレビみててもぜんぜんイミ、わかんないし、テレビの人はさわれない、し、ゆかの、タイヨウのひかりがのびて、またちぢんで、くらくなって、ママがかえってきて、おすしたべて、ママはすぐねちゃうから、また誰もいないの。そんなの、ずっとつづけてたら、あたまがおかしくなっちゃうよ」

 いちにち、おきてて、スーパーの人としかしゃべらないし、スーパーの人とだってほとんどしゃべらないし、スーパーまでの道を行ってもかえっても、誰もわたしのほうを見もしないし、しゃべらないし、ときどき、わたしはじつはおばけで、トウメイで、誰にも見えてないんじゃないか、て、ふあん、になる。

「誰もいないの、こわいよ。ねえ、おじさん。舞と遊ぼうよ」

 おじさんの乳首をつねりながら、ぎゅっと体重をかけていくと、おじさんはうしろにかたむいて、ピストルを持ってた手を、どん、と、たたみにつく。わたしはそのまま、顔をおじさんのほうに、ずい、と、ちかづける。

「うわ、くっさ」

 おじさんの口に、鼻をちかづけたら、びっくりするくらいくさくて、びっくりした。ずるずるの死体のおばけみたいな、においがした。

「そりゃまあ、風呂にも入ってないしな。おじさんってのは臭いもんなんだよ」

 びっくりして、おじさんからはなれると、おじさんはポリポリと、頭をかきながら、いった。

「いや、でも、だいじょうぶ。なれてきた。いけるきがする」

 なんどか、しんこきゅう、して、わたしがもういちど、チャレンジすると、こんどはおじさんは「だから、ダメだって」と、たたみのうえをころがりながら、にげる。

「ねえ、どうしてにげるの? 舞、遊ぶのじょうずだよ。おじさん、遊ぼうよ」

「どうしてもこうしてもないんだよ。そういうのはダメなの。ここで突っ張りきれなかったら、俺はさらになにか色々なことがダメになるんだよ。俺はもうなにもかも全部ダメで、最低の最悪でもう終わるしかないんだけど、それでも、意地くらいはまだ残ってるんだよ」

 おじさんは、ばたばたとたたみのうえをにげるけど、そんなにひろいヘヤじゃないし、すぐにカドに、あたって、にげられなくなるから、わたしはまた、うでをおじさんの首にまわして、ぎゅっと体重をかける。

「ほら、おじさん、遊ぼう?」

「ああ……もう、ああもう……やっぱ、いい匂いがするなぁ……。かわいいなぁ」

 ゴトリ、と、ピストルがたたみにおちる、重い音がする。おじさんはギュッと目をつぶって、おそるおそる、みたいな感じ、で、わたしのこし、に、手をまわしてくる。おしりのあたりを、さわさわとなでる。ちょっとざらざらしてるし、やっぱりくさいけど、どうしてもがまんできないほどじゃないし、なれれば、ちゃんと、きもちいい気、が、する。

「ちくしょう、俺はなんでこう……ああ、ダメだなぁ」

 おじさんが、ぐ、と身をのりだしてきて、ぐるん、と、こんどはわたしがしたになる。おじさんは、わたしの首のあたり、に、鼻をつけて「ダメだなぁ。ダメだなぁ」って、なんかいってる。

 そしたら、きゅうにヘヤのフスマがばーんってとんで、そっちを見たら、マルボウズのこわそうな顔をした、べつのおじさんが、ピストルをかまえてる。

「見つけたで、桐生。なんやゴソゴソうるさいなぁって思ったら、お前、こんなんなってまで、女連れで逃げとったんか。えらい余裕やなぁ」

 桐生さんのほうのおじさんは、わたしをしたに、しいたままで、あわてて、おとしたピストルをひろう。からだをおこして、ガチャッて、なんかやって、ピストルを、こわいほうの、おじさんに、むける。手が、ガタガタふるえている。

「いや、違う。この子は全然、関係ない! たまたま迷い込んできただけの近所の子だ! ちょっと頭が弱いんだ! 俺とはまったく、関係ない!」

「へえ、そうか。まあ、関係がなさそうには見えへんけどな。いままさに、関係しとるところのように見えるけどな。まあええわ。これから、俺はお前を殺すし、そしたら、その子は俺がお前を殺すところ見る羽目になるし、そんなん、見られてもうた以上は、ほっとくわけにもいかんやん?」

「違うんだ! 待ってくれ! 俺は……まあ、仕方がないけど、この子は本当に関係な」

 バスン! って、おもいっきり鼻をかんだみたいな音がして、桐生のおじさんが「んあっ!」って、さけぶ。おなかから、血がでて、たたみに、びちゃってとぶ。

「だから、知らんやん。一緒に死んだほうが、お前もさみしないやろ?」

 そういって、こわそうなほうのおじさんが、こんどはわたしにピストルをむける。その、肩のむこう。こわそうなおじさんの、うしろ、に、ずるずる死体のおばけがいて、マルボウズのこわそうなおじさん、は「ん?」て、いって、ふりかえって、ずるずる死体のおばけを、見る。

「え? は? え? なに??」

 マルボウズのこわそうなおじさん、が、そんなふうに、こまっているあいだ、に、桐生のおじさんがピストルで、パン! パン! って、こわそうなおじさんを、うって、おじさんは頭から血をふいて、たおれて、もう動かなくなる。気がつけば、ずるずる死体のおばけもいなくなってる。桐生のおじさんは、ずるずる死体のおばけには、きづかなかった、のかも、しれない。

「まただ……一撃だ……。あんなにガタガタに震えてたのに、殺すのは失敗しない。ひょっとして、俺、人を殺す才能はあったのかな……」

 ずるずる死体のおばけ、は、たまにでてきて、おどかすけど、それいじょうはなにもしてこないって、中学のときからしってるから、気にしなくていい、と、おもう。

「お嬢ちゃん、逃げよ」

 桐生のおじさんが手をだして、わたしをたすけおこして、くれる。マルボウズのこわいおじさん、の死体をまたいで、ヘヤをでる。わたしも、スーパーのフクロをひろって、あとをおう。カイダンをおりようとしたところで、桐生のおじさんはグラッとして、ゴロゴロところげおちていってしまう。

 わたしもカイダンをおりて、たおれている桐生のおじさんのワキにかがんで「だいじょうぶ?」と、こえをかける。桐生のおじさんは「いや、ダメっぽいなぁ……」と、目をほそめる。

「ああ……なんもかんもダメな人生だったけど、最後の最後に、お嬢ちゃんだけは助けられて、よかったなあ。こんな俺でも、人の命、いっこ救ったんだもんなあ。これでなんとか、閻魔様も、天国に行かしてくれんかなぁ」

 桐生のおじさんが、わたしの、ほっぺたに手をのばしてくる。

「お嬢ちゃんはなぁ、俺みたいになるなよ。一個転げ落ちると、そこからズルズル転げ落ちて、もうどうにもならなくなっちゃうから。こんなところで、変なおじさんと遊んでないで、ちゃんと踏ん張って、マトモになれよ」

 そういって、桐生のおじさんは、す、と目を、とじる。手が、ボン、と、ゆかにおちる。死んじゃった。死んだらもう、遊べない。桐生のおじさんも、あのこわいおじさんも、ここでずるずる死体のおばけ、に、なるのだろう、か。ずるずるおばけも、三人もいたら、さみしくないかもしれない。

 勝手口からおもてにでて、道にでたところで「お、舞じゃん」と、声を、かけられた。

「あ、ヨシくん」と、わたしはへんじをする。ヨシくんは「ウケる」って、わらってる。今は、おこってないみたいだ。

 ヨシくんは、高校のときに、おこってわたしをボコボコになぐってきたけど、おこってないときはやさしいし、いっしょに遊ぶのはたのしいから、好きだ。

「なにお前、まだこんなとこで遊んでんの? 変わんねーな。ていうか、マジ全然変わってなくない? ちゃんと歳とってる」

「とってるよー。18になったもん」

 ヨシくんがおこってなくて、わらってるから、わたしもわらう。「ねえ、ヨシくんも、遊んでいこうよ」と、わたしがいうと、ヨシくんは「え? ここ? さすがにここはもうねーよ。ここ、ガチでおばけ出るしさ」と、首をふる。

「おばけはでるけど、でるだけだし、だいじょうぶだよ」

「いや、全然大丈夫じゃないでしょ。ほんと、よくやってたわって感じ。怖いもの知らずかよ。まあ、あの頃は金もなかったしなー」

 ヨシくんが顔をしかめる。「遊んでいかないの?」と、きくと「まあ、暇だけど。ここは嫌だから、ホテルいこーぜ。パチンコ勝ったから、いま金あるし。おごってやるよ」と、いう。

「え、ほんと? やった!」

 ホテルは一回だけいったことあるけれど、きたなくないし、おばけもでないし、いろいろふかふかだし、すごくたのしかったから、よかった。またいきたい。

「え、いこういこう。ホテルで遊ぼう」と、いうと、ヨシくんは「え、このままいく? それ、なんか買い物した帰りじゃないの?」と、わたしのスーパーのフクロを指さす。

 あ。

「そうだった。牛乳、ぬるくなっちゃったかも」

 またママに、おこられる。

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いっしょに遊ぼう 大澤めぐみ @kinky12x08

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