第162話 俺は決めた。
作り終えた後、机に並べて行く。
今日の料理は野菜炒めと白米、そして味噌汁だ。
白米以外は全て一ノ瀬に教わった料理だ。
こうして見ると、改めて自分は料理ができるようになったんだなあと思わされる。
ほんと、一ノ瀬に感謝だな。
先に少し分けておいた。
もし白雪さんが起きた時、すぐに食べれるように。
「「いただきます」」
こうして、俺とあいちゃんの食事が始まった。
あいちゃんは俺の料理を美味しそうに食べてくれる。俺まで幸せな気分になる。
「ねえ、あいちゃん」
「ん?」
白米を口にかき込んでいる状態で俺が話しかけてしまったため、その状態で目線だけがこちらを向ける。可愛すぎて頭なでなでしたくなってきた。
「食べてていいよ。あのさ、お姉ちゃんっていつも何時くらいに帰ってきてるの?」
さっき見たスケジュール表が本当なのかがずっと頭から離れなかったから、つい聞いてしまった。
あ、俺はあいちゃんと話すときは、白雪さんのことを『お姉ちゃん』と呼ぶことにした。『小春さん』とは呼べないし、あいちゃんに対してならこれが一番いいかなという感じで決めた。
あいちゃんは口の中に含んでいたものをしっかりと飲み込んでから話した。
「平日の日は、火曜日と木曜日以外は何時に帰ってきてるのかわからない。先に寝ちゃってしまうから。火曜日と木曜日は今日みたいに早く帰ってくるよ。休みの日は、寝るのと同じくらいに帰ってくる」
なるほど。あのスケジュールは合っているらしい。
でも、白雪さんのことだ。火曜、木曜日でも、夜遅くまで勉強しているんだろうな。
「そっか、教えてくれてありがと」
「うん♪」
俺がお礼一つするだけで幸せそうな笑顔を見せる。まじでこの子天使だわ。
でも、それなら、早めに対策を考えた方が良さそうだな。
「あ、そうだ、前の日曜日はお姉ちゃんお仕事じゃなかったの?」
さっきまでの会話やスケジュール表を見る限り、休日はバイトをしているんだろう。
だったら、なんで遊園地にきているのかが気になった。
「あいね、その日誕生日だったんだー♪で、お姉ちゃんが連れて行ってくれたの♪」
そうだったのか。でも、知ってしまったら、プレゼントあげたくなるよね。うーん、なにあげよっか。
「ねえ、あいちゃん、ゲーム好き?」
「ううん、あいはゲームやったことないんだ」
その表情は、やや寂しさを表しているようにも見えた。
俺はこの時決めた。この子の笑顔は必ず守って見せると。
「そっか。それじゃあさ、今週の日曜日、好きなゲームソフト買いに行こっか。それは、俺からの誕生日プレゼントって事で。本体は俺のがあるし、それもプレゼントって事で」
「ほ、ほんと……?」
冗談なのかと思ったのかもしれない。
でも、俺は決めてしまったんだ。それに、これからはバイトもする予定だしお金には少し余裕がある筈だ。
こんなことに使ってもバチなんて当たらない筈だ。
だから、俺は改めて言った。
「うん、ほんとだよ。誕生日おめでとう」
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