第135話 嘘つき俺

おっと……。


本日2回目のナンパを発見してしまった。


しかも、こっちは絶対に助けないといけない。


だって、デートなんだもん。


一応、俺は彼氏(仮)なわけだし。


それにしても、さっきと同じ奴らってのはちょっとめんどくさいな。


俺のことを覚えてなければ幸いだが。


よし、本日2回目。行きますか。


「真昼!」


俺は彼氏っぽく叫んだ。


ラノベの主人公になりきってみた。真昼相手なら引かれる心配はないだろう。


真昼は俺の声が聞こえたとともに、俺の元へ駆け出してきた。さすがに抱きついたりはしてこなかったけど。


ナンパ男どもは当然のごとく俺の方を向く。


頼む……。俺の顔を忘れていてくれ……。


「おい!あれ、さっきのパッとしない奴じゃねえか?」


「おお、たしかにそうだ。パッとしない奴だ!」


「さっき、白髪の姉ちゃんと抱き合ってたパッとしない奴だ!」


おい!さっきから、パッとしないパッとしないうるさいな!俺も分かっとるわ、パッとしないことぐらい!


真昼は俺に疑問の顔をする。


俺は真昼の耳元で「後で説明するから」と囁く。


すると、真昼は大きく頷いた。どうやら分かってくれたようだ。


さて、どうしましょうか。


男たちはゆっくりこっちに歩いてくる。


そして、当たり前の質問をしてきた。


「おい、さっきの姉ちゃんはどうしたんだよ?」


うん、ですよねー。だって、あの人俺に向かって「ダァ〜リ〜ン♪」って言ってましたもんね。


普通に考えたら、俺はあの人の彼氏だと思いますよねー。


でも、実は違いましたー!あのとき、俺と彼女は初対面でしたー!


なんて、言うわけにもいかない。


はて、どうしましょうか。ひとまず、『そんなことありましたっけ作戦』で!


「ん?誰のことでしょうか?」


ちゃんと動揺もせずに答えることができた。


「い、いや、でも、さっきお前と同じ奴が……」


うーん。どうしよう。うん、次は『双子作戦』だ!


「あ、それ多分僕の兄ですよ。僕には双子がいまして。でも、今日ここに遊びにきているなんて聞いてなかったな。後で聞いておこうっと」


「……え?」


うん、お前は話を合わせてくれ。


そりゃ、幼馴染だもん。真昼は知ってるよ、俺が一人っ子だってこと。まあ、今は色々あって違うんだけど。


でも、そこで変な顔されると困るんだよね。


俺が真昼を見つめると、真昼は納得したようだ。


「へ、へー」


男どもはなんとか騙せそうだ。3人のうち1人はもうほぼ納得している。


「じゃ、じゃあ、その姉ちゃんとお前はどんな関係なんだよ?!」


「恋人だ!」


俺は自信満々に、あたかも本当かのように言った。


「「「「…………っ!」」」」


俺以外の4人がものすごく反応した。


一番反応したのは隣の子だったかもしれないな。


耳まで真っ赤だ。


悪い真昼!これしか思いつかなかったんだ!許してくれ!


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