第112話 平和な日常

登校しているときに思ったんだが、日に日に一緒に登校する人も増えるし、それに比例するように俺への殺意が増えてるように思うんだよな。



学校に着くと、特に喋る相手もいない俺は席につく。


すると、前の方からニヤニヤしながらとある男が歩いてくる。俺の唯一の親友だ。


「いやー、今日も朝から熱々ですなー」


「うるせえよ。でも、これからテストが終わるまではこんな感じになるかもな。ほんといつか殺されそうで怖いわ」


「まあ、俺もお前を狙う1人でもあるからな。でも、一ノ瀬ちゃんと宮下ちゃんが京と一緒に登校するのはわかるけど、村瀬と一緒てのはどうしてなんだ?」


頼むからお前だけは俺の味方であってくれ。頼むから俺の命なんて狙わないでー。お前しかいないんだよー!


「まあ、ちょっと色々あってな。まあ、それは昼にでも話すからよ」


「了解。めちゃくちゃ面白そうな匂いがぷんぷんするぜ」


ニヤニヤしながら言う郷田。いやいや笑い事じゃねえよ!もしこんなとこで「数日3人と同じ家で暮らすことになった」なんて言ったら翌日には確実に命はない。


「それにしても、いつからお前真昼とかのこと『ちゃん』付けにしたの?前までは『さん』だったんじゃなかったっけ?」


そう、以前までは「一ノ瀬さん」「宮下さん」と読んでいたので、純粋に気になった。


「俺も一応高校生だからな。青春したいんだよ。俺はお前みたいに女の子から近づいてきてくれるわけじゃないからな。ちゃんと自分からアプローチしていかないといけないんだよ。ひとまず気になった子にはめちゃくちゃラインしてる。宮下ちゃんだってお前に譲る気はねえぞ」


郷田は郷田で色々と頑張っているらしい。ここで変なこと言ったりすると、怒られてしまう可能性があるので、黙っておくことにした。うん。絶対これが正しい。


話してたらあっという間に時は過ぎる。中学生のときに比べたら、十分と言っていいほど学校生活を楽しめている。まあ、命を狙われてるけど。



昼休みになった。


村瀬や真昼にも昼食を誘われたが、断った。


なぜなら?唯一の親友と食べるから。今日は久しぶりにパンだ。朝忙しかったから、今日の朝みんなコンビニで買った。


「よかったのか?誘われていたんじゃないのか?」


「ああ、まあ、あいつらはいつも一緒だからな」


「うぜえ、死ね。それで、朝の話してくれよ」


「ああ、俺はこれからテストまであいつら3人と同じ家で暮らすことになった」


「はあああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!」


目を思いっきり開く郷田。おい、目ん玉落ちないか?大丈夫か?


でもまあ、そうですよね。普通そうなりますよね。でも、流石に声のトーン落として欲しいんですけど。


「おい、それどういうことだよ?!詳しく!」


はい、説明しますから、声のトーン落として。


「いや、なんかおれが2人に勉強を教えることになってて、その2人がなんか勝負してて、それで真昼だけ不公平だってなってこうなった」


流石に一ノ瀬と一緒に寝ていることは伏せておいた。流石に郷田とはいえ、殺される。


「めっちゃ羨ましいじゃねえか!頼むから一人わけてくれよ」


「いや、わけろって言われてもな……」


「じゃ、じゃあ、テストの後にある林間学校ではおんなじ班にしてくれよ」


「いや、それはこっちから頼むわ。俺お前以外に男友達いないし」


いや、ほんと郷田がいなかったら、俺また中学の時みたいに、喋れない子と同じ班にされちゃうじゃないか!


言っておくが、友達もいない林間学校、修学旅行は本当に地獄だ。


心の中ではめちゃくちゃ休みたいけど、熱も出なくて休ませてくれない母親。もう、地獄以外の言葉がない。


だから、絶対に郷田という男を手放してはいけないんだ!


まあ、こいつの目的は俺ではなく、真昼たちなのかもしれないけど。

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