第88話 お風呂

飯を食べ終えた後、村瀬は先に風呂に入れと言ってきた。


村瀬は洗い物をするから、とのことだ。


ここはお言葉に甘えようかな。


こうして、俺は今風呂に入っている。


「はぁ、まさかこの俺が告白されるとはな。めちゃくちゃ驚いたなー」


風呂ということもあり、今までの緊張が一気に溶けていく。


ものすごく気持ちいい。


めちゃくちゃ落ち着けるわー。


なんか、今日めっちゃ濃い1日だったな。


朝起きたら美少女2人が添い寝してるし、昔あってた子が村瀬だと判明するし、その村瀬から告白されるし。どうなってるんだ?もしかして、明日俺死ぬのか?


なんて馬鹿なことを考えていた。


「洗うか」


俺は湯船から出て、椅子に座り洗い始めた。


俺は頭から洗う派の人間なので、シャンプーで頭を洗っている。


”ガチャ”


ん?なんか今風呂の扉が開いたような気がしたんだけどな……。でも、特に誰も話しかけたりしてこないしきっと気のせいだな。


俺は頭をしっかり洗う。


俺はしっかりと頭を洗う……。


俺はしっかりと……って!おかしいだろ!泡が全く落ちないだが?!


ん?耳を覚ましてみれば、なにやら少女がくすくす笑っている。


幻聴か?いや、はっきりと聞こえるぞ。これは……


「村瀬いるのか?」


そうだ。普通に考えれば、この風呂でイタズラをしているのはお化けもしくは村瀬しかいない。


普通に考えて、こんなくだらないイタズラをするお化けなんていない。ということは、ここにいるのはおそらく村瀬だ。


「ぷっ、やっと気づいたの?!ちょっと前からここにいたんだけどなー」


そこには予想通り村瀬がいた。


俺は目の部分だけをお湯で流し、村瀬を見る。


「って、なんて格好してるんだよ!」


そこには、バスタオルを体に巻いた村瀬がいた。


いや、ダメでしょ!ってか、なんだよこのアニメみたいなシチュエーションは!


「いや、けーちゃんに好きなってもらおうと思って。体張っちゃった、てへっ」


なんだ?こいつ、どうかしたのか?


おれに告白してから、突然のウザキャラにも驚いたし、どこかおかしい。


でも……、めちゃくちゃ可愛い……。


元々こんなに可愛いのに、ウザキャラとか反則だろ……。


でも、シャンプーをずっと出されてたのは、ウザカワというよりかは、ウザいだけだったけど。


「いやいや、そういうのはまだ早いんじゃないか?」


「そんなことないよ。未来の旦那さんなんだし、お背中流しますよ」


『未来の旦那さん』と言われた時は、シンプルに照れてしまった。いや、これ照れないとか無理じゃね?


「背中流したら出て行けよ?」


このままぶつぶつ言っても聞かないと思ったので、背中だけ流させることにした。


「うん!」


いや、ほんとこの嬉しそうな返事、まじで反則だろ!惚れてまうわー!


俺はしっかりと椅子に座り直す。


それを確認した村瀬は俺の背中を流し始めた。


なんだろう……。どう頑張っても、この先の妄想をしてしまう。村瀬のむむむ胸で、俺の背中を……ああああああああああ!このクソ変態野郎!


しかし、嬉しいのか悲しいのか、超絶妄想イベントは起こらなかった。


村瀬は俺の背中を流しただけだった。


なんで悔しがってんだ俺は?!この変態め!


「終わったか?それじゃあ出て行けよー」


「せっかく背中流してあげたのに、お礼もなしですかー?まぁ、出るけど……。あっ!」


俺はその声にすぐさま反応し、視線を向ける。


む、む、村瀬の大事なとこを隠してるバスタオルが!バスタオルがひらひらと落ちてるぞ!


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