お出かけ編
第56話 デートのお誘い
俺の名前は、森木 京。402号室に住む普通の高校生だ。
そして、401号室に住むのは、俺の幼馴染だった宮下 真昼。さらに付け加えておくと、学校でも席が隣で、昔こいつは俺のことが好きだったらしい。物好きもいるんだなぁ。
そして、これから403号室に住むのは、とっても美人で、とっても優しくて、すべてにおいて完璧な女性の一ノ瀬 来未。付け加えておくと、一ノ瀬も俺たちと同じ学校で同じクラス。そして、俺たちのクラスの学級委員長に勤めており、現在俺は彼女に片思い中だ。
言っておくと、隣人になったのは数十分前のことである。
今は、俺の部屋に一ノ瀬が来ている。真昼もいる。
「いや、ここに引っ越してくるなら先に言っとけよ。挨拶の返事を考えるのに昨日はまともにならなかったんだからな」
「まぁ、ちょっと驚かそうと思ってね。それより、挨拶ってどんなのを考えてたの?教えてよ」
「嫌だよ。ってか、結局思いつかなかったんだよ。だから、今日は一度も部屋から出ないように決めてた」
俺が話すと、一ノ瀬はケラケラ笑う。
久しぶりだな、悪魔モード。まぁ、可愛いからいいけど。
「そんなの、世間話とかしといたらいいじゃん。まっひーに挨拶した時のこととか覚えてないの?」
「それがさっぱりだったんだよ。俺、挨拶とか初めてだったからめっちゃ緊張しててさ。その時の記憶が全然ないんだよ。どんな会話とかしてたのかな……。なぁ、真昼、俺ってどんな話してたっけ?」
一応、真昼が美人なお姉さんだと思っていたことは記憶にあるが、言っても俺にメリットがない。だから、言わなかった。
そして、白々しく話手を真昼に向ける。
「いや、京くんには言ったと思うけど、私も誰かから挨拶されたのとか初めてだったから、そのことを何にも覚えてないんだよね……」
「そうか……。まぁ、私が来たからこれでこの階には空いてる部屋がないから挨拶とかされることはないね」
「そうだな……、そう考えると隣人が真昼でよかったって思うなぁ。俺からしてみれば、話ができる数人しかいない奴の人だしな」
嘘である。今、正直に考えてることを口にするとするならば、「よっしゃーーー!大好きな一ノ瀬が隣の部屋に!なんか、ラブコメみたいだな。言うと悪いが、真昼の裸も見れたんだし、もしかしたら一ノ瀬のも……」なんてことを考えている。まぁ、口が裂けても言うことは無いが。
「そうだね。私にもっと感謝してもいいんだよ?」
「うるせぇ。ってか、部屋の片付けとかしなくてもいいのか?」
俺が聞くと、一ノ瀬は少し動揺した。
「まぁ、挨拶がてらに休憩を……ね」
なるほど……。こいつ、現実逃避してるな。意外と集中力とか続かない感じのやつなのかなぁ。
「さっさと戻って片付けしてこい。現実逃避してたらあとあとめんどくさいことになるだけだぞ」
俺だって一ノ瀬ともっと話をしたいが、俺も引っ越してきた時、地獄を見たので助言をしておく。
「もーだってめちゃくちゃしんどいんだもん。こういうのってすぐ飽きてくるんだもん」
まぁ、なんと可愛いんだ。駄々をこねる一ノ瀬も最高です!
「俺も引っ越してきてからその調子だったら一週間ぐらいかかった。地獄を見たくなかったら頑張れ」
一ノ瀬はその光景が想像できたのだろう。
「はぁ、じゃあ戻るね」
そう言って立ち上がった。その時だ。
「それじゃあさ!今日中に片付け終わったら、明日私に付き合ってよ」
一ノ瀬が言った。これってもしかして……告白?!
それを聞こうとしたが、一ノ瀬の話はまだ終わっていなかった。
「最近隣町に大きなショッピングモールができたじゃん?そこに行きたいんだよね。3人で行こうよ」
「いいよ!行こ行こ!」
真昼はテンションが上がっていた。
こうなって仕舞えば、どうせ俺が断っても行くことになるだろうから俺は断らなかった。
しかも、ポジティブに考えれば、これは一ノ瀬とのデートだ。
「まぁ、どっちでも」
「じゃあ決定!それなら明日の朝10時に部屋の前集合で!それでは!」
一ノ瀬はその言葉を残し、俺の部屋から出て行った。
明日は、一ノ瀬と(真昼と)デートか……。なんかワクワクするなぁ……。
一応言っておくと、午後9時ごろに『片付け終了!』とラインが送られてきた。
やるなぁ。さすが一ノ瀬。
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