第51話 お弁当

午前の部が終わり、今から昼食の時間だ。


俺はこの昼食の時間でまたいじめられることになるかもしれない。


それもそのはず……。


「京くん!食べよー!」


そう。朝起きて確認したラインには、『今日のお昼は私とまっひーと京くんの3人で食べよー!お昼は用意してあるから準備しなくて大丈夫だよ』と書かれていた。


これは、一緒にお昼ご飯を食べたいということなのだろうか。それとも、ぼっちの俺を気にかけてご飯に誘ってくれたのか。


おそらく後者だろう……。


こんなぼっちと飯を共にしたい奴なんているわけないよな……。


でも、もし後者だったとして、お弁当か何かを用意してくれているのは何故だろう。


もしや、本当に一ノ瀬は俺のことが気になっていたり……。


でもだ……、お弁当をわざわざ嫌いな奴に食わせるか?毒を入れてる場合ならあり得るが、流石にそれはないだろう。それなら……。


俺にだってチャンスはあるぞ!


「お、おう」


俺は一ノ瀬に手招きされたので、そこに向かう。


一ノ瀬のお弁当……一ノ瀬のお弁当……


えっ?


そこには3個の弁当箱を手に持った真昼の姿があった。


あの真昼がお弁当を作ったのか?


「今日のお昼はまっひーのお弁当だよ」


まじかあぁぁぁ!一ノ瀬じゃないんかーい!


まぁ、一ノ瀬がお弁当箱を持ってなかったから何かおかしいとは思ってたけど……。


まさかのダークホース。あの真昼がお弁当を作ったというのか?


「今日のためにまっひーは一生懸命練習してたんだよ。ほんとすごいよね」


その言葉を俺に向かって言ってきたので、俺はその言葉を返す。


「まぁ、あの真昼がお弁当を作れるようになるとは考えてもいなかったな。正直普通にすごいと思うぞ。俺も負けてられないな」


これは本心だ。それに真昼と一ノ瀬が早く帰っていた理由はおそらくこれだったのだろう。


いじめられてはなかったのか。良かった……。


言うと、真昼の顔が少し赤くなった気がした。


まだ5月後半なのでそこまで暑いというわけではないだろうし熱中症の心配はないだろう。


それならなんで顔が赤いんだろう。気のせいか。


そう解釈したので特に顔色については言わなかった。そのうち自然と普通の色にも戻ってきたし心配はしなくて良さそうだな。


「まぁ、お腹も空いたし早く食べようよー!はい京くんもここに座って」


俺は一ノ瀬に指示された場所に座る。


いやー、美少女たちと昼食まで共にできるなんて俺は本当に幸せものだな。


「「「いただきます」」」


弁当箱を開けると想像以上の見た目に驚きが隠せなかった。


中は真ん中で区切られており、左半分には白米が入っていた。


そして、おかずなのだがウインナーや綺麗な形の卵焼き、しゅうまい、唐揚げ、そしてミニハンバーグ。


ものすごく食欲がそそられる。


自然と箸を動かしてしまう。そして一口。


「うっま!これめっちゃうまいな!こわなの作れるなんてすごすぎだろ」


逆に欠点を見つけることが難しいほどうまい。


唐揚げやミニハンバーグなんて作ってから時間が経ってるのに中を開けるとたっぷり肉汁が出てくる。


米が進む。


これがもし出来立てだった時のことを考えてしまった。


よだれが出そうになったが耐えた。


前を見ると、またしても真昼の顔は赤くなっていた。


「真昼……大丈夫か?さっきから顔が赤くなってるけど……」


俺が質問をしたら、一ノ瀬が反応した。


「ごほんっ!そうだよねー、京くんもこんなお昼ご飯が毎日だったら最高だよね?」


無理やり話を割り込んだように見えたが一応返事をしておく。


「まぁ、そうだな。こんなにうまい弁当が毎日食べれるなんて天国だしな。できることなら俺も作れるようになりたいよ」


この返答を待ってたぜ!と言わんばかりに一ノ瀬は発言した。


「だよねー!それならいい考えがあるんだよねー!3人のうち1人が順番に全員分のお弁当を作る。こうすることで三日に一回しか作らなくて済むしね」


「それができたら苦労しないけど、俺はこんなうまいもの作れないし……」


そうだ。この提案に断る理由なんて一つもないが、俺が作った弁当もこいつらが食べる。


俺が作る弁当なら味は壊滅的になってることは考えなくてもわかる。


さすがにそれを食べさせるのには抵抗がある。


「それは全然大丈夫だよ。私たちが教えればいいんだもん」


そうか。晩飯も少しずつ作れるやつも増えてきたし、これなら……


「いやいや、お弁当を作るんだぞ?そんなのいつ教える時間があるんだよ?」


そう。お弁当となれば夕食のように教えることができない。


教えるとしても朝の5時や6時にだぞ?その時間に俺の部屋に来るのか?真昼ならいけるが一ノ瀬はさすがに無理だろ。


「それは全然大丈夫なんだよねー。まぁ、すぐにわかることだから」


今、俺の頭の上にはクエスチョンマークがある。横を見ると、真昼も俺と同じような顔をしていた。


どんな理由かは分からないが、一ノ瀬が自信満々に言うのでこれ以上心配しなくても大丈夫なのだろう。


「それだけ言うならよほど自信があるんだな。真昼がそれでいいなら俺は断る理由はないな」


「私は全然いいよ」


「それじゃあ決定!」


なんだか一ノ瀬が嬉しそうだ。


それなら良かった。


それにしても気になるな……。


さっきの一ノ瀬のセリフ……。


『すぐにわかるよ』


何かをしようとしているのか?


とっても気になる……。


まぁ一ノ瀬のことだしすごいことしそうな気はするな。


どうせ俺には分からないし、その時が来るまで気長に待つとするか……。

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