第47話 50メートル走
体育祭が開幕し、はやくも最初の種目が始まろうとしていた。
最初の種目は50メートル走だ。
そして、その50メートル走には一ノ瀬が参加している。
俺の2人しかいない唯一の友達?が参加するため、俺は少し前に出て、50メートル走が見える場所へ移動する。
「第1種目、50メートル走です」
放送部の人がアナウンスをし、選手も入場する。
50メートル走に出場する選手は各クラス男女それぞれ3名ずつだ。
それが、三学年出てくるので、グランドにはかなりの人数の生徒が集まった。
50メートル走は、各学年ごとに行われ、1組から5組、6組から10組に分かれて行われる。
そして、一位には5点、ニ位は3点、三位には1点がはいる。
走る順番としては、低学年から走るので、一年生の50メートル走が始まろうとしていた。
はじめに走るのは、女子からだ。
はじめにスタートラインについたのは、1組から5組の5名だ。
俺たちのクラスからは、小坂というバスケ部の生徒が準備をしていた。
何度か朝練で走りを見たことがあるが、この少女はかなり速い。
これはかなり期待できるだろう。
さらに付け加えておくと、顔もかなりのものだ。
真昼や一ノ瀬には及ばないものの、髪はポニーテールで、人当たりも良く、部活もしっかりと取り組んでいるらしく、バスケ部でも活躍しているらしい。
こんなやつなので、おそらくもう告白も何度もされているだろう。
クラスには真昼や一ノ瀬というとびきり美人がいるため少し隠れてしまうが、この2人がいなければ、間違いなくクラスでもかなりの人気を得ることだろう。
正直、俺もかなりタイプかもしれない。
まぁ、一番は一ノ瀬だがな。
”パンッ!”
はじめの走者が、このスターターピストルの反応し、足を前に運び出す。
スタートの瞬間から、人の生徒が単独トップに立った。
もちろん小坂だ。
誰が見てもわかる。速すぎる。
これは決して他の生徒が遅いというわけではない。
小坂がいなければ、この後ろで走る生徒もかなり速い方だろう。
しかし、前に小坂という1人の少女がいるため、この後ろの生徒には目も向けられない。
そのまま小坂は、抜かされることなく、いや、抜かれるどころかさらにリードを広げ続け、ニ位とは5メートル以上離してゴールした。
小坂自身も余裕の表情を見せ、俺たちのクラスに向かって手を振っていた。
それを見た俺のクラスの奴らは手を振り返す。
ほんと一緒に走った奴らかわいそうだな……。
このようにして、いきなり最初の種目で驚きが現れた。
次に3組の2人目が走った時は、惜しくも四位だった。
そして、とうとう一ノ瀬の番が来た。
一ノ瀬はいつも通りの笑顔で楽しんでいる様子だった。
さすがは一ノ瀬、クラスからの応援もすごい。
俺もどさくさに紛れて応援しようと思ったが、やはり勇気は出なかった。
心の中では応援している。
心の中では精一杯叫んでいるのだが、それが口から出ることはなく、ボイスとなることはなかった。
”パンッ!”
その合図とともにスタートを切る。
今回は、小坂のようにうまくはいかなかった。
スタートともに3人がほぼ真横に並んでいる。
その中には一ノ瀬の姿もあった。
50メートル走という速い人なら6秒ほどで終わる一瞬の競技だが、俺にはこの戦いがとても長く感じた。
抜け出した3人の誰も譲る気はなく、この三つの点がずっと一直線のままあと10メートル……。
みんな一歩前にと頑張っているが、全員がそうで全く動かない。
レースが動いたのは、ゴールの直前だった。
1人の少女がほんの少しではあるが抜け出した。
その差はごくわずかだが、なぜか抜け出したことに気づいた。
その抜け出した1人の少女は、赤色のハチマキを巻いた一ノ瀬……ではなく、黄色のハチマキを巻いた少女だった。
そのままゴール……。
一ノ瀬は惜しくも二位となった。
一ノ瀬はかなり悔しいだろうが、なぜかめっちゃ笑顔だった。
試合に負けても、悔いがないほど本気でやりきった証拠だ。
これだけ頑張れるというのは容易なことではない。
シンプルに尊敬してしまう。
俺も見習わなくちゃな。
これからの種目では、俺もこんな気持ちで挑むとしよう。
その後の男子の部では、大野が一位をとったが、残りの2人はどちらもトップ3に入ることはできなかった。
2年、3年生も赤団はなかなか勝つことができなかった。
この時点で、赤団はかなりのビハインドを負うことになった。
一ノ瀬や、小坂などが50メートル走を終えて帰ってきた。
一ノ瀬に声をかけようと思ったのだが、一瞬で周りは囲まれ、話しかけることはできなかった……、と思っていたのだが、一ノ瀬はわざわざ俺の方へ向かって来た。
なぜだ?
シンプルにその疑問。
でも、近づいて来てくれてるなら、こっちもアタックしなきゃ。
「おつかれ」
「うん。惜しかったねーあとちょっとだったのに……、あっ、それと、第三種目って玉入れだよね?京くんって玉入れじゃなかったっけ?」
「あ、わすれてたあぁぁぁぁ」
俺はその話を聞いた瞬間方向転換し、入場門へと走っていった。
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