第34話 のぼせちゃいました

「ねえヴィーク。これからどうするの? 本当にこのまま最後までいっちゃう?」


 少し落ち着きを取り戻したアインが聞いてみる。アインとしてはヴィークが求めてくるなら今、初めてを捧げる所存である。


「いや…今これ以上ないほど幸せなんだ。あれだけ言っておいて悪いんだけど、今日はこのアインと初めてキスした嬉しさとかをゆっくりかみしめたい」


「分かった。そうだね。私も今の幸せをしっかリ感じることにする」


 2人はお互いに今この瞬間を楽しんでいた。なにも喋らなくてもただ横にいるだけで楽しい。


「ねえヴィーク。なんだか身体が熱いの。頭がくらくらする…」


 最初はこれは嬉しさとかから来たのもかなって思っていた。でもなんだか違う感じがする。


「どうしたんだ? アイン」


 心配そうに問いかけるヴィーク。急にそんなことを言われたらとても不安になる。まさか、この水にそういう悪い効果があるのだろうか。


「えへへ。たぶんのぼせちゃった」


「そっか。なら早く上がった方がいいよ。もっとやばい病気かと思って心配した~」


「むぅ! そんな冷静に考えられたら寂しいよ。もっと取り乱すくらいがよかった!」


 アインとしてはもっとあわわわっとなって欲しかったらしい。たまにはそんなヴィークも見てみたい。


「いや、そんなことしたら逆に危ないよ。こういう時は冷静に対処するのが大切。慌ててもいいことは無いからね。心配なときほど冷静になった方がいいんだよ。大切なアインを守れなかったら困るだろ」


 これも勇者パーティーで自分が思ったこと。不測の事態にも冷静に対処しないと戦線は下手をしたら崩壊する。それにあのマリンも動きが不規則だったし。


(案外あの時のことが役に立ってるよな)


「やっぱりヴィークはかっこいいや」


「ありがとなアイン。アインもとても可愛いよ。ってのぼせてるんなら早く上がらないと!」


「上がったら後でもっとイチャイチャしてくれる?」


 上目遣いでそう問うてくる。そうやって言われればヴィークが言えることは一つしかない。


「イチャイチャでもなんでもしてあげるから先に体調を治すんだ。さあゆっくり上がろう。あぁ、もうふらふらじゃないか。ほら、しっかり掴まって」


 アインは納得いったのか嬉しそうにヴィークの腕をぎゅっと掴む。そしてそのままヴィークに連れられて温泉を後にした。



 ◆◆◆



「はい、アイン。冷たい水だよ。調子はどう?」


「ありがとう。もう大丈夫。のぼせたって言っても軽かったみたい」


 ヴィークから貰った水をぐいっと飲み干すとベターッと抱き着いた。ほのかに香る良い匂い。とても安心する。


「ちょっとアイン…これじゃご飯の準備ができないんだけど」


 今回はアインに無理はさせられないということでヴィークがご飯を作ることになっていた。でもこうして抱き着かれると何もできない。もうすぐ日が落ちて暗くなってしまうのに。


「さっきイチャイチャしてくれるって言った」


 むすっとしてそう言うアインはさっきよりもっと強くヴィークを抱きしめる。


「しょうがないなぁアインは。ご飯作らないといけないからあんまりできないけど」


 ヴィークの方からもアインをぎゅっと抱きしめる。そしてさらさらなアインの髪をそっと指で梳いた。


 それと同時にふわっとした甘い匂いが鼻孔をくすぐる。同じ石鹸、同じ湯に浸かったのに何でだろう。


「ふぁぁ~ヴィークにこうされるの好き」


 匂いだけでなく声まで甘い。さっきまで軽症とはいえ、のぼせていたのか疑いたくなってしまうほどアインは元気にヴィークに抱き着いている。


「なぁアイン…ご飯食べるの遅くなっていいかな? もうしばらくこうしてたい…」


 2人が満足するまでこのままだったため、ご飯は暗くなってからになった。





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