第25話 成果発表です

 今日はヴィークたちの出発の前日。サムの家の庭で最後にどれだけ魔法を使えるようになったか披露することになっている。


 1か月しか日にちがなかったので高度なものは全然教えることが出来なかったが、それでも王都ではなかなかと言われる程になったとヴィークは確信していた。


「それじゃユリン、教えたやつをやってみて」


「うん…」


 今日はいつもの修業メンバー以外にスカーレットやアインなども見に来ている。そのせいかユリンは緊張していた。


「ユリン大丈夫。深呼吸して…さぁまずはライトから」


 落ち着いたユリンは魔力を指先に集中させぽわっと指先を光らせた。最初は小さい光だったものが徐々に強くなっていく。そして松明くらいの灯りになった。


「よしっ。ヴィークお兄ちゃん出来たよ」


「うん、しっかりできてるよ」


 ヴィークはいつも見ていてそんなに心情に変化はなかったが、初めて自分の娘が魔法を行使している姿を見てスカーレットはいろいろ思うことがあったようだ。


「ユリン…すごいわ。こんな凄いことを1か月で出来るようになるなんて。ヴィーク君もありがとう。今度から夜はユリンに頼んで照らしてもらおうかな」


 娘の成長を感じられたようでかなり感動している。アインも「すごい…」と感嘆も声を漏らしてユリンも見つめていた。ライトという魔法適正さえあればほぼだれでも使えるような魔法なのに。


「でもまだまだだよ。ヴィークお兄ちゃんには他の魔法も習ったんだよ」


 得意そうにそう言うユリンはライトを解除し次の魔法を発動させようとする。これがユリンが20日かけて出来るようになった魔法。


「でも見せてあげたいんだけどこれは今はできないんだ。これはそのときになったら見せるから」


そう言うと右手が少しだけ光ったのが消えていった。


「へぇ何を習ったの? 少しだけでも教えて欲しいな」


「ユリンとサムさんに教えてたのは…」


「それはユリンに言わせて。サムさんもいい?」


 サムもいいよと言ったのでふんっと鼻を鳴らして自慢げに言った。


「ユリンたちは治癒魔法を教えてもらったの。簡単なやつでもなかなか出来なくてすごい時間かかっちゃった」


 2人がヴィークから習ったのは二重魔法の治癒グレーターヒール回復ヒールの上位に位置するものでかなりいろんな傷や病気まで治すことができる。


 王都とかではこの魔法を習得して病院を開業できるくらいで難しく使える人が少ない魔法だ。これを1か月かからず習得できた2人はかなり魔法適正が高くセンスが良かったといえる。ヴィークもかなり驚いていた。


「サムさんは分かるけど、ユリンはどうしてこれを習ったの? 魔法って派手なのもあるらしいからもっとそういうのを教えてもらうのかと思ったよ」


「確かにそういうのもいいなって思ったんだけどね」


 ユリンがぽつぽつと喋り出した。


「お父さんをヴィークお兄ちゃんが救ってくれたでしょ。それで出来る事なら私もそういう人を救えるような村のみんなを助けられるような魔法を教わりたかったの。無理なら他のをって思ったけど」


 そのユリンの目はスカーレットが知っているのほほんとした目ではなく、しっかり覚悟を持った目をしていた。ヴィークが村の人の前でウールを助けるために使った魔法は一人の少女に強烈な印象を与えたのだ。


「ユリン私の知らないところでそんなに成長したんだね。よく家でもヴィーク君のこと喋ってたけどもしかしてユリンもヴィーク君のこと好きなの? そっちも成長ちゃった?」


 ニヤリと笑うスカーレットにいち早く反応したのは当事者のユリンではなく、今までそんなに存在感を出さなかったアインだった。


「ユリンちゃんヴィークを狙ってるの!? もしそうなら正彼女の私と勝負だよ。絶対負けないから!」


 恋のライバルが出来たと思ったアインは闘志むき出しでヴィークは渡さないと宣言した。


「そ、そうじゃないよ! ただ新しいことをたくさん教えてもらったのが楽しくて嬉しかっただけ。アインちゃんの人なんだからとったりしないよ」


「それならいいんだけど。でもユリンちゃん立派な大人になりそうだね」


 ライバルじゃないと知った瞬間いつもの調子に戻った。その場にいた全員がびっくりするくらいに。


「あのぉ俺も出来るようになったものを見せていいかな? 全然俺を見てくれないからどうしようかと思ったよ」


 ここで声を出したのは今まで空気だったクリフ。みんなは一斉に笑ってクリフの魔法を見た。

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