第24話 お礼をしましょう

 夜も更け。そろそろ祭りも終わりが近づいてきた。と言っても、みんな騒がしく放っておけばそのまま夜を明かしそうな勢いがある。一応ヴィークとアインのお祝いという名目だが、たぶんみんなそんなことは忘れている。


「おぉヴィーク君。どうです、楽しんでいますか?」


 ここで声を掛けてきたのはサムとエル。にこにこ笑顔で語りかけてくるが、ヴィークにはどうしても一言いいたいことがあった。


「はい、楽しんでます。でも…俺たちが付き合い始めたからってこんなことしなくても良かったんじゃないですか!?」


 周りにはかなり言ったが、こんなことをするのは大げさすぎる。村人全員が参加したこの祭り。そのみんなからお祝いを言われたのだ。結婚とかならまだしも付き合い始めたってだけで。


「いいじゃないですか。おめでたいことがあったらみんなで祝う。それがこの村の決まりですから。そして、2人はこの村の一員なんだから当たり前です」


「そ、そうでしたか。なら…ありがとうございますなのかな? 恥ずかしいけど」


「そうです。ここのみんなは仲間なんだから忘れないでくださいね。それではこちらへ」


 サムに連れられてヴィークとアインはみんながいる真ん中へ。ここまで来ると2人も察した。


「ではみんなで2人を胴上げしましょう!」


「え? 何か言うんじゃないんですか?」


 みんなの真ん中に行かされて、そろそろ終わりなんだから締めの挨拶を言うのかと思った。しかし、違った様だ。


 サムの掛け声で周りの人が2人に群がる。そしてわっしょいわっしょいし始めた。酒に酔った人もいるようで徐々にヒートアップ。


「おわっ! わっ」


「きゃっ!」


 結構高くまで何回も投げられる。しばらくそうされたらお祭りはおしまい。最後にヴィークが一言いって締めることに。


「あの、皆さん俺たちのためにこうやってお祝いしてくれてありがとうございました。幸せになれるように頑張ります。では俺からお礼ということで…」


 ヴィークは自由飛翔を使って空に舞い上がった。みんな驚いて「おぉ」と歓声を揚げたが夜の空は暗く、もうヴィークの姿は見えない。


 地上20メートルほどまで昇ったら右手を空に挙げて魔法を唱えた。


「天候操作」




「えっ…?」


 突然雪がしんしんと降りだした。今は夏で雪が降ることはあり得ない。それを可能に出来る人と言えば…


「ヴィークなにをしたの?」


 ゆっくり空から降りてきたヴィークにみんなの疑問を代表してアインが聞いた。子供たちとかは大はしゃぎで降ってくる雪を追いかけまわす。


「天候操作の魔法だよ。ちょっと雪降らせてみた。どうかな?」


 雪を降らせるという偉業をしているというのに普通な顔して答えたヴィーク。そんなヴィークにみんなは口をポカンと開けて何も言えなかった。


 でも次第にヴィークならそれくらい出来るかと納得し始め、大人たちも雪を楽しみ始めた。


「ロマンティックだね。夏にこうやって雪が見れるなんて思ってもなかったよ」


「そうだろ? これ結構好きな魔法なんだ。実用性がなくて全く有名じゃないしこれでも四重魔法なんだよ。俺は魔力が少ないからそんなに長くは出来ないけどね」


「みんなへのお礼ならすごく良いと思うよ。だってみんな楽しそうだもん」


 辺りでは大人も子供の一緒になって雪を楽しんでいる。一人眺める人もいれば雪を食べようとする人達まで各々がこの時間を楽しんでいた。


「ヴィーク…」


 こつんとヴィークの肩に頭をくっつけるとヴィークはそのままアインの肩を引き寄せる。今みんなは雪に夢中で2人は見えていない。


「きれいだね。こうやって2人で肩を並べて雪を見るのって初めてだよ」


「うん。また今度、次は冬にちゃんと雪みたいな。ずっと一緒に」


「大丈夫。何回だって見れるよ」


 こうして2人の為の祭りは幕を閉じた。




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 こんにちは、九条 けいです。今回のお話から更新速度を上げるため1500文字くらいでの投稿にさせていただきます。よろしくお願いします。


 評価してくださった方ありがとうございます!!本当に嬉しいです!!

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