第22話 進展です

「ごちそうさま。さて、今からどうしよっか」


「お兄ちゃんの好きなようにしてもいいよ。でも今日はこのままここでゆっくりしていたいな。すごい気持ちいいし」


「そうだな。それでさアイン…ちょっと言いたいことがあるからいい?」


 そう言うと急に真剣な顔になりアインを見つめた。アインも神妙な面持ちでヴィークを見た。これから何を言われるのかドキドキしながら。


「俺たちさ…」


 ゴクッと息を飲んだ。実は妹としか見れません。とか言われるんじゃないかとアインの頭は悪い方へ悪い方へと考えが加速して止まらない。


「もう恋人同士なんだから…お兄ちゃん呼びは止めない?」


「へっ?」


 言われたことが理解できなかったアインは間抜けな返事で返してしまった。自分が思っていたことと全然違うことを言われたから。


「だからさ、お兄ちゃん呼びは止めて欲しいっていうか…いやっ、お兄ちゃん呼びが嫌な訳じゃないよ」


 もう一度聞いてヴィークの話をしっかり理解したアインは盛大に笑い出した。それこそ村全体に響くくらいに。こんなに笑うのは生まれて初めてだ。


「アインどうした!? 俺の言ったことそんなに変だったか?」


「ううん、そうじゃないの。私はなんておバカなんだろうって思ってね。そう考えちゃったら面白くて」


 そうだ。自分のことを心の底から大切に想ってくれてるヴィークがそんなことを言うわけがない。アインは自分がそんな考えをしてしまったことを恥ずかしく感じた。


「それで…そっか。ずっとお兄ちゃんじゃあんまり変わった感じがないもんね。なら…言っていい?」


「おう! どんとこい!」


 ヴィークは謎の気合を入れ、アインもゆっくり息を吸って


「ヴィ…ヴィーク…」


 そっと静かに言った。


「っ~~~」


 破壊力がありすぎた。今までずっとお兄ちゃんと呼ばれてヴィークはもう瀕死状態。アインは嬉しそうに小声で「ヴィーク…ヴィーク…」と繰り返し繰り返し名を呼ぶ。


「なんだかくすぐったいね。お兄ちゃんって呼ぶより緊張しちゃう」


「そっそうだな。でも無理に呼ばなくていいから。アインの好きな方で呼んで欲しい」


「私は自分の彼氏って感じがすごい好きだからヴィークって呼ぶね。あっ、さんとか付けた方がいい?」


「ううん。俺たちは対等なんだからそんなのいいよ。それになんだか他人感でちゃうし」


「分かった。なら、これからもよろしくね。ヴィークっ!」


「あぁ絶対アインを幸せにするよ。これからもよろしく。アイン」


 こうして新しい一歩を2人は進み出した。




 ◆◆◆



「ほんとヴィークってば」


「仕方ないよ。アインはそんなつもりないと思ってたし」


「どうして! 私頑張ったのに…」


 さて、あの告白から一時間くらい経っただろうか。珍しく2人は言い合いをしていた。でも安心して欲しい。喧嘩とかもう仲が悪くなったわけではない。


「あんなにアピールしたのに。私、とっても恥ずかしかったんだよ」


「俺だってすごいドキドキしたけど勘違いしちゃいけないって思ったんだよ。頼りになるお兄ちゃんじゃないといけないと思って」


「それ言われたら私何にも言えないよ。でもドキドキしてくれてたのは嬉しいな。ちゃんと効果はあったみたいだね」


「あぁありまくりだ。いつも可愛いくて俺の大好きなアインにそんなことされたらもう、一発でアウト」


 アインがエルやスカーレットに習ったヴィークを落とす作戦をいろいろしていたとカミングアウトしてどうだったか聞いていたところ。それですこし言い合いをしていたのだ。


「ヴィークさ。私に好き好き言い過ぎじゃない?」


「だって好きなんだから仕方ないだろ。それとも迷惑だったか?」


 少し落ち込んだようにそう言ったヴィークにアインはあわわと慌てたように修正した。


「違うの…嫌なんじゃなくて嬉しくてね。ちょっと恥ずかしかったの。迷惑な訳がないよ。だってヴィークは私の大好きな人なんだから」


 すっかりヴィーク呼びにも慣れて、超あまあまな雰囲気を出す2人。見ている方が恥ずかしくなるほどである。2人とも今まで手の届かないところにあった関係を手に入れて歯止めがかからないようだった。


「確かに好きって言われると照れるな…でも幸せな気分になれる」


「そうだね。心がぽかぽかするよ…あっそろそろ戻ってお手伝いとかしないと」


 アインは名残惜しそうにそう言った。ヴィークとずっといてもあの2人は何も言わないと思うけど。真面目なアインだ。


「そっか。結構時間経ったもんな。じゃあ戻ろうか。でも、戻ったらクリフとかに絶対何か言われるよな」


「大丈夫。ほらいこっ!」


 家野ある方角へ歩き出したアイン。ヴィークもその横を歩く。そしてそっとアインの手を握った。


「ヴィーク…」


 少し驚いた後、アインもその手をぎゅっと握り返す。


 お互いの手と手がの触れ合って温かい。あの最初に空を飛んだ時に握った手とはまた別の感覚。2人の気持ちが伝わったからこそ感じることの出来る感覚だ。


 こうして2人は家に着くまでずっと手を離すことは無かった。

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