第21話 大好きです

「俺はアインのことが大好きだ!」


 ようやく言えたこの言葉。そしておもむろに顔を上げる。


「お兄ちゃん…本当に…私のこと好き…?」


「あぁ何回だって言ってやる。俺はアインのこと大好きだ!」


 一度言ってしまえばもう隠す必要がないので何回でも言える。今まで言えなかった分、堰を切ったように何回も好きだと連呼した。


「私も…大好き…本当に大好きなの…」


 さっきみたいな感じじゃなく、しっかり気持ちを込めてアインは告白した。この言葉を言うのにどれだけ緊張して不安になっただろう。


「アイン…ありがとう。それで…返事を聞かせて貰ってもいいか?」


「うん…でもそれはお兄ちゃんが私の告白に返事してくれてからかな」


「え?」


「先に告白したの私だよ。それで…どうかな…私を彼女にしてくれますか?」


 今更ながら顔を赤くしもじもじするアイン。ヴィークはそんなアインの姿が可愛くて仕方なかった。そして、返事をする。答えなんて決まっているけれど。


「はい…俺の彼女になってください」


「お兄ちゃんっ…!」


 そう言われた瞬間アインは嬉しくて嬉しくてヴィークに抱き着こうとした。でも、踏みとどまる。それはまだ早い。だって自分にはまだやるべきことがあるから。好きだと伝えてくれたことに自分も返事をしなくてはいけない。


「お兄ちゃん…私もお返事するね」


 スーっと大きく息を吸って吐く。


「私はお兄ちゃんが大好き。だからその告白受けさせて下さい。ずっと一緒にいさせて下さい」


 そして言い終わる頃にはどちらからでもなく2人はギューッとお互いを抱きしめあっていた。そんな2人を祝うかのように周りの草木はゆらゆらと揺れ、太陽の光に照らされていた。



 ◆◆◆



「それじゃあ、アイン…そろそろお昼にしようか」


「うん…」


 しばらく抱き合っていた後、2人はお昼ご飯を食べることに。シートを敷いて座る。


「はい、お兄ちゃん」


「ありがとう。おっ、これはサンドイッチだな」


 渡された弁当箱に中に入ったサンドイッチを見て嬉しそうなヴィーク。


「お兄ちゃんこれも」


 そうやって渡されたのはほんのり温かさが伝わってくる野菜スープ。良い匂いが漂ってくる。


「このお昼ご飯ね私が最初から全部作ったんだよ。お兄ちゃんに食べてもらいたくて…」


 そう言ってにっこり微笑むアインはとても可愛かった。


「ほんとにありがとな。アイン。それじゃあいただきます」


「どうぞ召し上がれっ」


 三角形に切られたサンドイッチを一口頬張る。噛めばシャキッとレタスのいい音が響く。朝積みレタスが新鮮でみずみずしい。


「んーっ! すごい美味しい!」


 ヴィークはあまりの美味しさに舌鼓を打った。サンドイッチくらいで何言ってだと思うかもしれない。でも好きな人、恋人が自分のために作ってくれたってだけでとても美味しいのだ。


「良かった! サンドイッチって簡単だけど案外美味しくするの難しくって」


 ヴィーク次はスープを一口。少しスープを飲めば野菜の旨味が口いっぱいに広がる。野菜の旨味も残したちょうどいい味付けになっていた。


「これも美味しい!  俺の彼女は最高だな!」


 ヴィークの口から発せられた「彼女」という言葉。この一言で本当に恋人同士。彼氏彼女の関係に本当になれた、さっきのは夢じゃないんだって心の底から感じられた。


「アインどうしたんだ! 涙が流れてるぞ!」


「あっ…気にしないで。お兄ちゃんの彼女になれたのが嬉しくて。ずっと離れ離れでようやく一緒になれて…それだけじゃなくてこうして小さい頃から夢見てたお兄ちゃんの彼女に…私、お兄ちゃんと再会してから幸せしかない」


 ヴィークは嬉しそうに涙を流すアインの頭をそっと撫でた。アインは撫でられながら目を赤くして言った。


「お兄ちゃん…私たち恋人同士になったから…あのっ…キスしたいな」


 そう言って上目遣いで言うアイン。目をそっとつぶって口を少しつきだす。アインの準備が完了した。


「んっ」


 ヴィークもアインの肩に手をそっと置きゆっくり顔を近づける。そこで気づいた。


(なにか気配がする)


 ヴィークは無詠唱化した探査魔法を発動した。効果範囲を周囲100メートルに絞り気配のありかを探す。


「お兄ちゃん…?」


 ずっと待っているアインは待ちきれず不思議そうに目を開けヴィークの顔を見つめた。


「アイン静かに。今、何かの気配がしたんだ」


 そう言ってヴィークはアインを引き寄せて開いた片手で火球ファイアーボールを撃つ準備をし、反応があった方へ手を剥けた。


「うわぁ! 待って待って撃たないで! 撃たないで!」


 茂みの方から焦って出てきたのはサム、エルにスカーレット、クリフ、ユリン。みんな勢ぞろい。


「な、なんでみんなが…?」


「あーまぁいろいろね」


「今来たばっかりだから2人の告白とか聞いてもないし見てもないよ」


 それは見た聞いたって言ってるようなもんだ。実際5人は終始見ていた。微笑ましく、たまに2人のセリフを恥ずかしく聞きながら。


「よし! ヴィーク今夜は祭りだな。じゃ俺たちはこれで」


 そそくさと全員戻って行った。そして残されたヴィークとアインは顔を見合わせて…笑いながらお昼ご飯の続きを食べた。


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