第20話 告白です

 いつものように朝ご飯を食べヴィークは魔法の修業を、アインは家の家事を手伝っていた。


「はぁ、緊張する。やばいやばい。ってあっ! 魔法陣が…」


「おいおい、ヴィーク。どうしたんだよ。いつも言ってただろ? 魔法を使うときは集中して余計なことを考えないって」


 いつもヴィークが言っていた言葉。魔法のスペシャリストのヴィークがこんな初歩的なものでミスするなんて珍しいどころの問題じゃない。


「ヴィークお兄ちゃんどうしたの? ほらほら、私もちゃんと発動できたよ!」


 得意そうに自分の生成した炎を見せるユリン。ユリンはとてつもなくセンスが高く、ファイアの上位の二重魔法のフレイムまで習得した。


「あぁユリンちゃん。ほんとずいぶん使いこなせるようになったよね」


「それでどうしたの? ヴィークお兄ちゃん朝からずっと落ち着いてない感じだけど」


「あぁそれはね」


「言わなくていいからな! クリフ!」


「はいはい。まぁとにかく頑張れよ。俺らみんな応援してるからな」


「わたしにだけ内緒なんてずるいよ!」


 ほっぺたを膨らましてそう抗議するユリン。その姿はとても可愛らしい。


「明日になったらわかるさ。よくヴィークをみておくんだよ」




 ◆◆◆




「あっ、まただ…」


「アインちゃん落ち着いて。リラックス、リラックス」


 今、お昼ご飯の準備のために台所でニンジンの皮を剥いているところ。包丁を使って皮を剥くのはアインが一番上手い。一本をずっと剥くことだってできる。


 でも、今日はダメダメ。すぐに皮がちぎれてしまう。集中出来てない証拠だ。


「あはは。自分ではかなり落ち着いていると思うんですが」


「そんなことないわよ! 私から見ても分かるくらいに緊張しまくってるじゃない」


「アインちゃん今回は休んでいいよ。ゆっくり心を落ち着かせてきて」


 今日のお昼ご飯はアインが一人で全部作ると言ったがこれじゃやばそう、ということでエルとスカーレットがヘルプに入ろうとしたのだが。


「いえっ、大丈夫です。今回だけは私に作らせて下さい! わがままだとは思っているのですが…」


「ううん。そんなことないわ。今日はヴィーク君に全部自分で作ったものを食べてもらいたいのね」


 さすが乙女心をしっかり理解しているエル。


「それならさアインちゃん。お昼ご飯をお弁当にしてあっちで食べてきなよ。ピクニックって感じでさっ。結構そういうのするのにピッタリだから」


 スカーレットもなかなかにいい意見を出す。大人の女性ってこんな風に相手の気持ちを理解できたり、アイデアを出せたりすることが出来る人なのかな、とアインは思った。




 ◆◆◆




 そしてときは経ち約束の時間に。


 待ち合わせ場所で待っているアインに向かってヴィークは笑顔で走っていく。内心は心臓バクバクでかなりやばいけど。


 それはアインも同じでヴィークの姿が見えると両手で持っている弁当などが入った竹籠の持ち手をぎゅっと握った。


「お待たせ、アイン」


「ううん。全然待ってないよ。来てくれてありがとうね。お兄ちゃん」


 それからしばらく何もせずただ立って湖をながめていた。言い出す勇気を持てなかったから。


「そう言えばアイン…そ、その手に持ってる籠はなにが入ってるんだ?」


(って俺! そんなことより別にアインに言わないといけないことがあるだろ!)


 ヴィークが沈黙を破ったが本当に言いたいことは違う。やはり、あと一歩の勇気が出ない。


 それはアインも同じで「お弁当だよ」と答えるだけでまた黙ってしまった。


 また何も喋らない時間が2、3分。2人にとっては永遠とも思われる時間が続いた。


「なぁアイン。俺、話したいことがあるって言ったの覚えてる?」


 ついにヴィークが勇気を振り絞ったのだ。もう後には戻れない。


 2人は横並びに湖を見ているのをやめ、どちらからでもなく向き合った。風が強く吹いて髪が揺れる。周りに生えている草木も音を立てて揺れている。


 でも、2人はそんなこと気にならないくらいにお互い見つめ合った。


「率直にいうよ。俺さ、アインのことをもう妹って見れなくなってしまって…」


「え…?」


「もう、アインのお兄ちゃんはやめたいなって…。そうじゃなくて…」


 必死に言葉を紡ぐ。


「俺はアインの…」


「お兄ちゃん! 私と付き合って下さい!」


 ヴィークが最後の言葉を言おうとした瞬間、アインがヴィークに告白した。アインの瞳には涙が溜まっている。


「いやだよ…私はお兄ちゃんと一緒に…ずっとずっと一緒にいたい…お兄ちゃんをやめるなんて言わないで…私はお兄ちゃんのこと大好きだもん! 1人の男の人としても大好きなんだもん!」


 そう涙ながらに言ったアイン。言っていることは無茶苦茶。最初に言おうとしていたのとは大違いの感情に任せたものだった。


「はっ! あのっえっと、その…だからね」


「アイン。俺はお前のことが好きだ。一人の女の子として。だから俺と付き合って欲しい」


 次はヴィークがアインの言葉を遮った。


「え? お兄ちゃん私のこと嫌になったんじゃないの…?」


「そんなことない! 俺はアインのことが大好きだ!」

 


===


更新遅くなってすみません。センター試験のがあり遅れてしまいました。これから定期的に更新できればいいなと思います。


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九条 けい




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