第19話 ヴィークも同じです

 アインが覚悟を決めたとき、ヴィークもまたサムや一緒に仕事をしている仲間たちとある話をしていた。


「分かりました。寂しくなりますが、これも仕方ありませんね。あと一週間よろしくお願いしますね」


「はい、いろいろありがとうございました。魔法のほうもあと少しで完璧に発動できるとおもいます」


「毎日頑張りましたからね。ほんとヴィークさんには感謝ですよ。と、それで一つ聞きたいことが」


 ここで、さっきまでの至って普通の空気から一気に変わった。


「ヴィークさんってアインさんのこと好きですよね」


 サムの一言。絶対的な確信を持って言った一言。周りにいる仲間たちもヴィークを見つめる。はよ言えと言わんばかりの雰囲気だ。


「えっと、その…なぜ今その話を?」


 困惑するヴィーク。なんでそれをサムが知っている。いや、他の仲間たちも。アインのことが好きだなんて誰にも言っていない。自分の心の中だけだったはずなのに。


「なんでって顔してるぜヴィーク。でもあれはばれるよ」


 そう言ってきたのはヴィークと同い年でこの数週間でかなり仲良くなったヴィークの数少ない友達。友達が少ないのは勇者パーティーのメンバーで王都にあまりいなかったからだ。そして、ヴィークの友達、名前をクリフと言う。


 サラサラの黒髪がトレードマーク。筋肉ムキムキ。ヴィークの魔法塾(仮)のメンバーでもあるというかなり盛り込まれた人物。なかなかの好青年でもある。


「ばれるってどういう事だよ。そんな確証はないだろ」


 ヴィークの発言にクリフはふぅと、ため息をついた。やれやれといった感じで。


「ほんとにバレバレだって。アインちゃんが来たらあんなに嬉しそうにして。あの時は恋する乙女ならぬ恋する男だったぜ」


「まじで?」


「まじまじ。それでどうなの? アインちゃんのこと好きなのか?」


 ヴィークは迷った。言うべきか言わないべきか。ここにいるみんな、いや、村全体がヴィークとアインが義兄妹だということを知っている。なら、言っても問題はないのでは? それに隠すのは自分がアインに今まで想っていたことを否定する気がした。


「そうだな。俺はアインが好きだ。まず、すごい可愛いところとか…」


「はいはい、惚気話はいいから。で、どうすんの。ちゃんと正式に交際してるわけじゃないんだろ」


「そりゃそうだけど。どうすればいいんだよ」


 ここまで言って分からないのかと半ば呆れるサム、クリフほかのメンバー。


「告白だよ。告白。さすがに分かるだろ」


「こ、告白!? いや、なんでなんで。そんなことしてどうするんだよ」


「そりゃ、好きな女の子に自分の気持ちを伝えるためだろ。なんだ。ヴィークは今の関係で満足してんのか」


「そ、それは…」


 最初こそアインと一緒にいれるだけで満足で嬉しかったが、こうやっていると人は更なる幸せが欲しくなるのか確かにアインと恋人同士になりたいと思うことが多くなった。


「ヴィークは知っていると思うが俺にも大切な恋人がいてな。彼女は俺の幼馴染なんだけど恋人になった瞬間すごい可愛くてな! いや、それまでも可愛かったんだけど…」


 それからしばらくクリフや他の所帯持ちの人なんかのありがたい自慢話を聞かされたヴィークだった。


「とりあえず俺たちが言いたいことはさっさと告白しろってことだな。お前が今以上の関係になりたいのならな」


「そうか。そうだよな。好きな人に自分の気持ちを伝えたい。今の立場に甘んじてちゃダメだよな」


 ついにヴィークも決心した。自分の気持ちをアインに伝えると。成功率100%。しかし、本人たちからしたら決死の。人生を掻けた大勝負。


「おっ。いい顔になったじゃないか。頑張れよ。素直に言えば大丈夫だからな」


「サンキューな。今度からクリフはラブマスターと呼ぶことにしよう」


「それはやめい。っていうかもう休憩おわりだぞ」


 ここで、男たちのボーイズトークは終了した。



 ◆◆◆



「た、ただいま。アイン。き。今日もあのっ、美味しそうな匂いだな」


「あ、お帰りなさい…お兄ちゃんっ。ご、ご飯あと少しだから…手洗ってきて…」


 明らかに朝とは2人の感じが違う。緊張とかいろいろな感情が渦巻く。


(もっと普通に喋れよ、俺! アインに怪しまれるだろ)


(ちょっと私! いくら緊張しているからってそんなんじゃダメじゃない。これで明日、ちゃんと告白できるの?)




 ご飯を食べ、お風呂に入ったあと、いつものアインとヴィークが借りている部屋にいる2人。いつも今日あったこととかをはなしているが今日に限ってはシーンとした部屋になっている。


「あのさお兄ちゃん。明日、お昼に湖のほとりに来てくれないかな。忙しいと思うんだけど…」


 アインがつい動いた。これは告白する場所ということ。さっきエルとスカーレットに良いと言われたスポットだ。


「あぁ分かった。お昼にそこに行けばいいんだな。俺も…アインに言いたいことがあったからちょうど良かったよ」


 ヴィークもそこで告白すると覚悟を決めた。


 ついに2人は明日長年の想いを伝える。

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