第18話 アイン頑張ります

 それから日にちが経ちヴィークたちの修業もアインの花嫁修業も残すところあと一週間くらいになった。一か月くらいこの村にいると言ってもう3週間くらい経ったのだ。


「あれからあっという間だったね。私かなり家事スキルあがったよ」


「ほんとだな。毎日が楽しくてすぐこんなに経ってしまった。サムさんもそろそろたぶん回復魔法を習得できそうだし、ユリンもいい感じに覚えてくれてるんだ」


 生活面などでは王都より大変なところもあったが、それ以上に村のみんなが優しくて助け合いながら暮らしていくこの村は最高だ。


「なぁアイン。アインはこの村にいたいか?」


「え?」


「この村の人たちみんないい人だろ? アインがここで暮らしていきたいと思うんならサムさんにお願いしてみようかなってさ」


 ずっとサムの家の一室を借りていたが、もしここで暮らしていくならちゃんと家を建てるべきだろう。サムもきっと了承してくれるだろうからあとはアインの返答次第だ。


「私はお兄ちゃんが最初に言ってくれたところに行ってみたいな。私はそこに行くってお兄ちゃんが言ってくれたとき覚悟を決めたから」


「そっか。分かった」


「会えなくなるのはさみしいけど、たまにこっちに遊びに行くのもいいよね」


「ははは、それもいいかもな!」


 ということでこの村にいるのは本当にあと一週間程になった。




 ◆◆◆




「そうなの。寂しくなるわね」


「はい。今までありがとうございました」


「ちょっと、ちょっと。そんなもういなくなるような言い方しないでよ」


 いつものようにガールズトーク開催中。ただ、今回はアインとヴィークが決めたことをいつメンのエルとスカーレットに話したのでなんだかテンションは低め。だと、思ったのだが…


「ならアインちゃん! もうヴィーク君に告白するの!?」


「成功したら村を挙げての大パーティーね!」


 全然テンションが低くなることはなくむしろ上がっている。アインがヴィークに告白するとか考える始末。今の会話にそんな要素があっただろうか。


「あの、私お兄ちゃんに告白しないといけないんでしょうか?」


「なに言ってるの。当たり前じゃない。そのために今まで頑張ってきたんでしょ」


「でもでも、ここでしなくてもどこか別の場所とかでもいいんじゃ。私とお兄ちゃんは冒険者だからいつか絶景スポットとかあったらそこで…」


 困惑するアイン。急に告白するとか言われたのだからそうなるのも普通だろう。そんな心構えはしていなかった。


「それはだめよ。私たちは2人がどうなるのか知りたいもの」


「アインちゃん。最後に師匠の私たちから卒業試験よ。自分の気持ちをちゃんと言えたら合格。言えなかったら不合格ね」


「でも怖いです。もしお兄ちゃんにただの兄妹としか思えないとか言われたり、その後が気まずくなったりするの。そうなったら私耐えられません」


 怖い。それは当然の感情。自分の気持ちを伝えても相手に届かないかもしれない。恋愛についてだけいえば努力しても実るかなんてわからないのでから。もしかしたら今の関係が壊れてしまうかもしれない。そんなことを考えたら、本当に恐ろしい。


「大丈夫。アインちゃんの気持ちはきっと伝わる。自分がどうヴィーク君のこと想ってるのか。ヴィーク君とどうなりたいのか。ちゃんと伝えたらいいの」


「でも…」


 なかなか決心がつかない。これは自分の人生で一番大きな変化をもたらすだろう。そっとやちょっとで決めきれるものではない。断られた場合のことが頭の中を駆け巡る。


「アインちゃん。ここで逃げたらダメ。今の貴女は妹という状況に甘えているだけ。ヴィーク君の妹でいいならこのままでもいい。でも、貴女はそうじゃないんでしょ。恋人同士でしかできないことや、ドキドキする気持ちを分け合いたいと思ってる」


 エルが優しい。しかし、心のこもった言葉をアインにかける。


「それに考えてみて。ヴィーク君の横に自分じゃない誰かがお嫁さんとしていたら。貴女はそれを祝福できる?」


 もしかしたら目的地でヴィークを好きになる女の子が現れるかもしれない。ヴィークはアインが好きだがあきらめる可能性もあるかもしれない。


「分かりました、エルさんスカーレットさん。私、お兄ちゃんに自分の気持ちを伝えます。自分の大好きだっていう気持ちをぶつけてみせます。お兄ちゃんのお嫁さんは私がなるって小さい頃からの夢なので」


 アインの目にもう迷いはなかった。覚悟を決めた目をしている。


「一度決めたら実行に移すのは早い方がいいと思うので私は明日、告白します」


 アインのこの発言にはエルもスカーレットも驚いた。まさか明日、告白するなんて。でもこうなったらもう止めることはできない。2人にできることはアインの背中を押してあげること。


「今日じっくり言う言葉を考えて…場所は湖のほとりとかどうですか?」


「すっごく良いと思うわ。アインちゃん頑張ってね。緊張すると思うけど」


「はいっ! 私はお兄ちゃんが大好きですから! 花嫁修業最後、自分の気持ちを伝えて合格します!」


 明日、アインはヴィークに告白する。




















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