第13話 修行開始です

 次の日の朝、ヴィークは山へ芝刈りに、アインは川へ洗濯に行きました。という昔馴染みのあるセリフのようなことがあるわけもなく普通に魔法の修業と花嫁修業が始まった。


 なので、三寸ばかりなる人が出て来たり、川上から桃がドンブラコと流れてくることは無い。ヴィークは庭でサムとユリン。アインは家の中でエルとユリンのお母さんのスカーレットと別々で修業することになった。



 ◆◆◆



「それじゃ、俺たちは魔法を使えるようになるために一か月頑張ろうな」


「はい! 師匠!」


「ははは、私もお願いします師匠」


「ちょっとちょっと、だから師匠はやめて下さいって言ってるじゃないですか! ヴィークでお願いしますよ」


 と、ほのぼのと始まった魔法の修業。


「サムさんは何の魔法が使えるんですか?」


 返って来た答えは回復ヒール熱伝導ウォームなど簡単なものばかり。まあ、教えてくれる人がいないのに独学で覚えたのだからすごいのだけれど。


「それじゃまずはサムさんは出来ると思いますがライトからやっていこう。でもまず魔法っていうのは…」


 ヴィークたちの修業は順調にスタートした。




 ◆◆◆



 一方、アイン、エル、スカーレットの三人組も順調に花嫁修業スタート! と思いきやテーブルを囲んでおしゃべりに花を咲かせていた。しかし、仕方ないことでもある。アインは、両親から食事以外のすべての雑用をやらされていた。なので基本的な嫁力は持っているのである。


 つまり、あと覚えるのが必要なのは料理くらいになる。しかし、料理を作ろうにもまだ、朝ご飯を食べて、1~2時間しか経ってないため、お昼ご飯を作るまでこうやっておしゃべりをして時間を潰すことになったのだ。


「へぇ。アインちゃんはヴィーク君のこと大好きなんだね」


「はいっ! そうなんです! ほんとにかっこよくて頼りになって、私を大切にしてくれるお兄ちゃんが大好きなんです!」


 アインはそう自分の思いを素直に言った。アインとヴィークが義兄妹だということは言ってあるため他の2人は、とても楽しそうに話を聞いたり、アドバイスをしている。


「アインちゃんしっかりアピールしてる?」


「してると思うんですけど、お兄ちゃんなかなかに鈍感で…」


 確かに鈍感かもしれないが、しっかりヴィークはドキドキしているのでアピールは成功しているといえる。


「ちょっと聞いていいかな?」


 ここでスカーレットがアインに聞いた。


「アインちゃんは、ヴィーク君と恋人同士になりたいんでしょ? でも、今のままじゃだめなの? 私が見る限り今でもすごい仲良くて恋人同士って言われたら納得できるんだけど」


 スカーレットの言葉には、今のままでも充分幸せでしょう? 急がなくてもいいんじゃない? という意味があった。


 確かにこれからもずっと一緒にいるということは兄妹も恋人もあまり関係ないのかもしれない。それでもアインには恋人に、今以上の関係になりたい理由があった。


「私はお兄ちゃんと約束したんです。お兄ちゃんが私を幸せに。私がお兄ちゃんを幸せにするって。でも、今のままじゃ私はお兄ちゃんにおんぶにだっこ。それじゃダメなんです。私も立派になってお兄ちゃんを支えたい。そんな私がお兄ちゃんの横に居たい」


 だから料理を覚えたり、いろんなことが出来るようになりたいんです。とアイン。そして、兄妹と恋人には決定的に違うことがある。


「それにやっぱり好きな人とドキドキしたいじゃないですか。好きって言われたいし自分も言いたい」


 そう気持ちだ。これには圧倒的な違いがある。確かに日々を送るのに兄妹でも恋人でもどちらの関係でも幸せだ。でも、一人の女の子としてのアインの夢は好きな人、そう、ヴィークのお嫁さんになること。妹ではなくお嫁さんとしてヴィークを支えること。


 静かにアインの話を聞いていた2人はおもむろに立ち上がりグッとアインの手を握った。


「素晴らしいわ、アインちゃん。そうよ! そうよね! 好きな人のお嫁さんになりたいのは女の子だったら当たり前よね!」


「私もサムとは大恋愛結婚だったの。好きな人に好きって言われるのはほんと嬉しいわよ。私はアインちゃんを心の底から応援するわ!」


 アインの話に感化された2人は興奮気味にそう言った。2人とも大好きな人と結ばれたらしい。


「そうとなったらヴィーク君のハートを打ち抜く作戦を考えよう!」


 こうしてアインたちの花嫁修業が始まった。




 ◆◆◆



 お昼が近づいてきたのでヴィークたちが家に戻ってきた。ヴィークたちの顔を見るにかなり充実した時間になったんだろうなとアインは思った。実際、2人が真面目にヴィークの話を聞いていたためテンポ良く出来た。


「おかえり、お兄ちゃん」


「うん、ただいま。って言ってもすぐそばの庭だけどね」


「それでもおかえりって言うのがあたりまえでしょ」


「それもそうだな」


 ヴィークたちからすればそうやって言える、帰るべき家があるということがどれだけ幸せなことか。


「それにしてもすごい良い匂いがするな」


「そうでしょ! 私たちで作ったんだよ」


「おおそれはすごいな。修業一日足らずでここまでか」


「えへへ。お兄ちゃんに美味しい料理食べて欲しくて。ちょっと包丁で指切っちゃったけど」


 ヴィークが確認するとアインの人差し指には包帯が巻いてあった。


「大丈夫なのか? いや、心配だから見せてみて」


「ちょっとお兄ちゃん恥ずかしいよ。ほら、そんな深い傷じゃないから」


 横ではアインの気持ちを知っているエルとスカーレットが微笑ましく眺めていた。ほんとこれで付き合ってないとか信じられないとおもいながら。

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