第6話 寝顔とは素敵なものです

「「ごちそうさまでした」」


 ヴィークたちは晩ご飯を食べ終わってテントの傍にあった大きな岩に座ってゆっくりしていた。寝る前のおしゃべり会にみたいな感じでお互い別々の掛け布団を羽織って今日一日のことを話していた。


「今日は今までで1番楽しかった。お兄ちゃんとずっと一緒だったし。お兄ちゃんとずっと手繋いでたし」


「そうだな。俺も楽しかった。これからはこんな楽しい生活が続いていけると良いな」


 ヴィークが目指す生活はただアインと幸せに生きていくこと。それはアインも同じだ。まだ具体的に考えていることはないけど贅沢をしたり、面倒ごとに巻き込まれたくはないと思う。ただ慎ましく平穏に暮らしていきたい。そう、ほのぼのと。


「大丈夫お兄ちゃん。私は絶対お兄ちゃんから離れないからね」


 アインはそう言ってヴィークの手をぎゅっと握った。



 ◆◆◆



「それじゃもう寝ようか」


「うん」


 夜も更けてきた。灯も焚き火の火だけだ。テントに入っても2人はいろいろ話していたが流石に寝ることにした。明日もまた空を飛んで行くので体力はちゃんと回復させておかないといけない。


防御障壁プロテクトカーテン


 ヴィークは左手を広げて魔法を唱える。この魔法は発動させると徐々に魔力を消費するが高い防御力と1度発動させると無意識化でも発動し続けるという高性能な魔法だ。でも、他の魔法と併用出来ない難点もある。なのでアンデットとの戦いでは重宝されなかった。マリンにもよく「そんな使えない魔法覚えるな」とか罵られていた。


「やっぱり覚えておいて良かったな」


 ヴィークはそう思った。無駄だのいろいろ言われてたが今こうやってアインを守れていることが嬉しかった。


 アインもヴィークに守られている安心感がとてもあった。久しぶりにヴィークとこうやって寝ることが出来る。胸が高鳴るのを感じる。


「お兄ちゃん一緒に寝よっ!」


「え?」


 今ヴィークとアインは同じテントにいる。当たり前ではあるが。そして布団はないけれど、薄い掛け布団を2つ買っておいたのでそれをそれぞれかけて寝ようと思っていたのだが...


「んしょ、んしょっ」


 アインは自分の掛け布団をポイしてヴィークの布団の中へ入っていった。


「お兄ちゃんって本当にあったかいね」


「しょうがないなぁ」


 最初はヴィークも抵抗しようとしたがアインが絶対寝るもんと言うことを聞かなかったので最終的にヴィークが折れた。


 今のアインは17歳。ヴィークも18歳。こうやってくっつかれるとヴィークもいろいろ思うことがあるようで。


 しかし、それはヴィークだけではなかったようだ。


(ん〜! 思い切ってお兄ちゃんと寝ようとしたけど緊張しちゃうよ〜! でも、ほんとに嬉しいな)


「アイン、じゃあ寝ようか」


「うん!!」


 アインはそう言ってヴィークに抱き着いた。久しぶりの感覚。大好きなヴィークの温もりをすごく感じることが出来る。本当はずっとこうしていたかった。その反動でか、前よりも余計にヴィークにぎゅ〜っとしてしまった。


(えへへ、お兄ちゃんにこうやって抱き着いて寝られるなんてさいこうだなぁ)


 アインは幸せ気分の中夢の世界へ入っていった。


(これじゃ寝れん!)


 その夜ヴィークはドキドキしっぱなしでなかなか寝ることが出来なかった。ただ、そのおかげでアインのかわいい寝顔を見れたのは誰にも言えない秘密。そっと頭を数回なでたのも秘密だ。頭をなでるたびにアインの顔は「にへ~」となってこれのせいでさらにヴィークが寝付けなかったのももちろん秘密。




 ◆◆◆




「おはよう、お兄ちゃん!」


「ん、ん〜」


 アインがヴィークをゆさゆさと揺さぶる。もう朝になってしまったようだ。アインがヴィークよりも早く起きてしまうことは昔ならなかった。いつもアインをヴィークが起こしていたはずなのに。


「ようやっと起きた。お兄ちゃんおはよう」


「おはよう、まさかアインに起こされることになっちゃうなんてね」


 勇者パーティーの時も小さい頃あの家にいた時だろうとそうでなかろうとここまで熟睡することはなかった。でも今日はここまで寝ることができたのだ。やっぱりアインがいたからかな。とヴィークは勝手に考えた。


「お兄ちゃん、寝顔可愛かったよ〜」


 アインがとても嬉しそうに報告する。何を隠そうヴィークの寝顔を見たのはこれが初めてなのだ。いつも自分より遅く寝て早く起きる。なのでアインはヴィークの寝顔を見たことがなかった。


 初めて見たヴィークの寝顔。それはアインの中では感動と言ってもいいくらいのものだった。それもあってかアインは朝から元気いっぱいだ。


「アインに寝顔見られるなんて...もうお婿に行けないっ」


「お兄ちゃんは私がお婿さんに貰うんだもん! 心配ないよ」


 朝から兄妹の仲の良い声が響いていた。兄妹の会話としてどうなのかは置いておいて...


 朝食を昨日みたいに2人で作って食べた後、テントをあっという間に解体して片づける。そして目的の村へ行くために空を飛ぶ準備をする。しかしまさかの事態が起こった。ヴィークたちの目の前にはなんとアンデットがいたのだ。

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