第5話 料理は人の心を温かくします

「アイン。あそこらへんで今日は泊まろう。結構良い場所っぽいし」


 ヴィークたちは途中休憩を挟みながら空をゆっくり飛んでいた。ただ人に見つからないように少し山の方を飛んだため何がすごいものがあるわけでもなかった。いうなら山!山!山!っていう感じ。


 ただアインと喋るだけ。だけど話が尽きることはなかった。アインと話すのは他の誰と喋ることより楽しい。アインもヴィークと同じことを思っていた。


「お兄ちゃん。どうやって泊まるの? このまま野宿?」


「そうなるな。でも心配無用。テントを張ってそこで寝るんだよ」


 ヴィークはそう言ってマジックボックスから大きなシートと木の棒を出す。そしてさっさとテントの土台を組み立てていく。そしてテントを張った。これまでの時間ものの5分。勇者パーティーのときからずっとやってきたことだからあっという間に出来る。


「お兄ちゃんすごいね。すぐにできちゃった」


「これくらいならアインもすぐにできるようになるよ。次からは教えてあげるから一緒にやろう」


 アインはとても喜んでいた。いちおう予定ではまだまだ目的の村まではかかるのでアインが慣れるくらいまではいけるだろう。ヴィークもアインにテントの張りかたを教えるのが楽しみになった。


「さてご飯を作らないと。うーん。食材は大事に使いたいからなぁ。ちょっと山菜とか探してみようか」


 さっきの街で調味料とか肉とかをけっこう買っておいたが、非常用とかも考えるとばくばく食べるわけにもいかない。


 という事で日が完全に隠れるまでの後2時間。ご飯作ったりするのを考えて1時間。食べれる物を探すことにした。


 アインが元気よく山の中へ入っていく。それを追いかけるヴィーク。2人はそのまま少しの間、小さい少年と少女のように山を駆け抜けていった。


 山の中からは兄妹の仲の良さそうな声が響いていた。



 ◆◆◆




 1時間ほど山を探した。食べられそうな食材を毒の有無だけを教えてくれる魔法の毒判定ポイズンジャッジを使って調べていったのだが、そんなに毒のあるものは無くあちこちにきのこや果物、薬草までもがあった。人の手が入っていない山はなんでも揃う八百屋みたい。


「うーん。かなり採れたな。今日だけじゃ食べられん気がする」


 もうテントに戻ってとってきた山菜とかを眺める。ほんとにすごい量だ。今回の食事だけでは食べきれない量を採取してしまったことに少し後悔しつつ、アインと楽しい時間を過ごせたことが嬉しいと思ったヴィークだった。


「今日は俺がご飯を作ろう。いいか、アイン?」


「私も作りたい! お兄ちゃんと一緒にご飯作りたいの」


 今日はヴィークが作ろうと思ってたんだがアインも作りたいというのなら断る理由もない。



 しばらくしてヴィークたちの前に料理が並んだ。


「おお。とっても美味しそうお兄ちゃん。私の作ったスープ飲んでみて」


「おお。いただこうかな」


「どうかな? うまくできてる?」


 アインが不安そうに聞いてきたが不安になる心配なんて1つもない。めっちゃ美味いから。


「美味しいよアイン。上手くなったな」


「うん! えへへ。お兄ちゃんに美味しいって言われて嬉しい!」


「かわいいやつめ!」


 ヴィークもそう言ってアインの頭を撫でる。嬉しそうにしている顔がまたとてもかわいい。


「俺の作ったやつはどうかな?」


 ヴィークが作ったのは鶏肉と野菜のクリームパスタ。勇者パーティーのときはあんまり手間のかかるものは作れらなかったけどヴィークの中で1番うまく出来る料理だ。


「美味しいよ! お兄ちゃん。お兄ちゃんの手料理最高だよ!」


「あ」


 ヴィークの目から何故か涙が出てきた。


「お兄ちゃんどうしたの? 何かあった?」


 アインがヴィークを心配そうに見つめる。ヴィークも今動揺していた。涙? そんなものいつぶりだろうか。というかなんで泣いているんだという疑問があふれてくる。


「お兄ちゃん?」


「え、ご、ごめんアイン。変だな。悲しくないのに涙が出るなんて」


 理由が分からない。さっき食べた山菜に変なものが混ざっていてのだろうか。そう考えて不安になるヴィーク。


「お兄ちゃん嬉し泣き?」


「え? アインの言っていることがよく分かんないな」


「だってお兄ちゃん泣いてるのに顔は笑顔で笑ってるから」


 あぁ、そうなのかも知れない。アインの言葉がスッと入って来た。そうだ、ヴィークは嬉しかったのだ。自分が作った料理を褒められて。最近はそんなことなかったから。


 いつもの味気のない食事とは違う。こうして会話をしながらの楽しい食事。


「俺はさ、嬉しかったんだ。自分の作った料理を美味しいって言ってアインが笑ってくれたのが。アインと離れてずっと一人だったから…」


「お兄ちゃん…私もすっごく嬉しかったよ! またこうして二人でご飯食べれて。それに今日のご飯はいつもよりとっても心が温まるの…それでね、私もお兄ちゃんをもっと笑顔にしてあげたい!」


 アインは拳を挙げてそう宣言した。


「いつも笑顔貰ってるよ」


 ヴィークはアインに聞こえないくらいの声量でこっそりそう言った。





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