第五章 第十四話

「みんな、ついてきてくれてありがとうな!」

「何言ってんだよ。仲間だろ?ついていくのは至極まともなことじゃないか。礼をいわれる筋合いはないぞ」

「相変わらず一は、ツンデレさんだん~ねぇ~?アハハ」

「う、うるさい!この神谷一に限ってツンデレなんてことは!!!」

「ほんとに、二人は仲いいね。でも、柊人君、僕も同じ意見だよ。僕たちは仲間だ。決して他のモノには変えることのできない。そんなかけがえのないものだ。ビジネスマンだからこそ、言えるけど、こんな素晴らしいものはお金で買えることができないよ。家庭の事情で、欲しいものはなんだって手に入れられた。でも、唯一手に入れられなかったのが、親友だよ。だからね?そんな仲間に気を遣う必要なんてない。俺たちは商談相手でも、ビジネス仲間でもないんだよ?きっと、後ろの車のみんなも同じ意見だよ」

 助手席からリアガラスを覗く、後続車の運転をしているミーシャさんがニコッと笑う。可愛すぎる。嫁に欲しい……

 そして、ミーシャさんの隣の八一は、相変わらずの塩対応。こちらには気づいたが、また窓の方を見てしまった。

「ね?柊人、言ったでしょ?」

 緑色の秀才が、自信満々に言った。

「あぁ!!ほんとに頼りになるぜ!持つべきものは友だな!」

「何を今更言ってるんだよ。だからいっただろ?仲間だろ?と」

 もう一人の秀才も言った。

 ゼラリア基地まではあと少し。ここからは一秒たりとも気が抜けない。

 世界は裏でこんなことが起きているとは知らないまま日常を進んでいく。まるで、この二台の車以外の存在すべてが世界から隔離されたような感じさえも感じる。

 そして、秋にふさわしい風が悪戯に笑っている。これから待ち受ける試練を象徴するかのように。


 二台の車は、前回来た時のようにゼラリア基地についた。外見からは、前回と何も変わった様子は見受けられない。

「ここが、ゼラリア基地……初めて見るが、なんとも不気味な場所だな……」

「一は初めてでしたかぁ~!実は、僕もなんですけ~どねぇ~!ほんとに、おもしろいオーラをかんじま~すぅね~!」

「この建物。いいな。ぜひ買収したいものだ!……おっと」

 相変わらずな二人プラスビジネス脳のお坊ちゃま。この先が心配になるけど……

「行こうか、ラストバトルへ!!!」

「「「「「「おう!!!!」」」」」」

 全員が勢いよく、入口へと走り始めた。もう、後戻りはできない。これで、正真正銘のラストバトル。もう、武力による衝突はこれっきりにしたいものである。

 事前に、ニソラから得た情報と、前回の救出作戦の時の事をもとに、ゼラは、地上階にいると予想。この基地は、地上3階、地下4階の7階建て構造となっている。ニソラからの情報で、直接3階まで行くのは危険と判断。ひとまず階段で二階を目指すことに。

 薄暗い廊下を進む。まるでシルフの極秘棟のように、血なまぐさいにおいが立ち込める

 先頭に、俺と克実。続いて、シリウスと一。最後尾にミーシャさんと、八一とうららという陣形である。後方からの奇襲が一番怖いので、戦闘経験のある三人を配置したわけだ。

「ねぇ~柊人く~ん。階段っていったいどこにあるのですかぁ~」

 克実が、首をかしげながらケロッとして聞いてくる。まったく、緊張感がないなコイツ

は……

「ニソラがプログラムしてくれた地図だと……あと、少しだ!ざっと、80mってところかな?」

 ハイテク腕時計式通信機を起動させながら話す。なんと、この通信機!光線を利用して、3Dに地図を表示することが可能なのである。さすがにハイテクと自称するだけのことはある!ちなみに、製造販売はシルフヨーロッパ支部が行っております。つまり、やはり、本部に有能な人はいないってことですね。ハイ。

「敵影確認!!!」

 うららの高い声が響く。

「数は、7!ヒト……ではなくこれは、アンドロイド?アンドロイドが七体接近中!武装あり!後方班で対処可能!!」

 そして、その声を合図に、後方からすさまじい勢いで走ってきたアンドロイドに対して、後方班の三人が向っていく。

 さすがは、アサシン達。素早い手つきで、次々と倒していく。

「無常」

 ミーシャさんが、クールに忍者刀で敵を切り裂いていく。

「甘い……甘い!甘いんだって!!!」

 八一が、アンドロイドたちの攻撃をいとも簡単に躱し、反撃。

「ご主人さまをお守りします!ご主人様に歯向かうものは誰だろうと切る!」

 完全アサシンモードに入った、うららが、睨まれただけで殺されそうな目で敵を睨む。

 三人の活躍で、数分とかからずに敵を排除することができた。

「大丈夫かぁ!って……大丈夫だよな。一発も当たってなかったし……すごいよ!!三人とも!」

 当たり前だと胸を張る八一に、えっへんと誇らしげなうらら。そして、特になんのそぶりも見せないミーシャさん。

「ミーシャさん、相変わらず強いですね!さすがはくノ一!」

「当たり前です。くノ一の武器は、この磨き上げられたスキルと、鍛えぬいたこの体。そして、〇ックステクニックですから」

「最後のは、いらなかったかな。ミーシャさん……」

「これもくノ一には欠かせない要素です。相手を裏切るためには、こういった修行もしなければならないのです。どうですか、どうですか四条様。試してはみませんか?まだ、わたくしも実践経験はございませんが、ご安心ください」

「少し黙ってください。周りの目線が痛いので」

 うららが再度アサシンモードに入り、秀才二人には、じっーっと冷たい目線を向けられる。克実は、じっーっと壁を見つめている。

「ねぇ!!みんな緊張感を持とうよ……最終決戦だよ?」

 ほんとに、こんなので、大丈夫なのやら……

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