第五章 第十話

ここからゼラリア基地までは約2時間。

 残念ながら、高速は通っていない田舎にあるので、時短はできない。

 のんびり行くしかないようだ。

「ところで、山峰は何故お前らにひっとらえられたんだ?」

「知らないのか?なら、教えてやろう。彼女はイシス文書を盗みに来て、それがゼラのセンサーに反応して、捕まったんだよ。そういえば、もう一人、波間カンパニーの極一うららとかいう女も独房に入れっぱなしだな。ついでに連れてくか?」

 極一うらら……八一の知り合いだよな……かなりの実力者ってきいたな。

「一応連れて行こう。うちの四条八一の知り合いだしな」

「分かった。じゃあ助けよう」

 独房と聞くと、真白の事がフラッシュバックしてきてしまう。

 あぁだめだ。だめだ。あれは忘れろ!!

「あ、そうだ、俺は本部に入れない。おれが入ると、基地は木っ端みじんに吹き飛ぶんだ」

 ニソラが急に理解不能なことを言い始めた。

「それはどういうことだ?」

「あぁ、俺の体にはICチップが埋め込まれていてな、ここから逃げる時に、もう一度、俺が侵入したら大爆発を起こすように設定しているんだよ。なんかで捕まえられて、ここの秘密を教えろとかいわれたら困るし、ゼラの信者にもし捕まって連れ戻されたら、自爆してでも抵抗してやろうとおもってな」

 考えることがサイコパスだ……

 普通そこまでするか?

「てな訳だから、お二人さんで探してきてね」

「どこにいるかわからないじゃないの」

「独房は地下四階にあるよ。そこからの詳しいことはゼラしかしらないからねぇ~まぁなんとかして探してくれ」

 そんな無茶苦茶な……どうか捜索範囲が少なくてすみますように!


「地下四階だったわよね……」

「はい。よし、このエレベーターは動くみたいです!」

「よかったわ!」

 そういい二人はエレベータへと乗り込んだ。


ポーン 地下四階です

 ヤマナニュービルディングのエレベーターと同じ音声が流れる。同じ会社なのかな?

「さてと……ひろくない?!?!」

「広いわね」

「ひろいですねぇ」

「骨が折れるわね」

「はい」

「……」

二人ともあまりの広さに絶句した。

 エレベーターを降りてすぐの廊下が先が見えないほど長いのだ。

「取り合えず、いきますか……」

「そうね……」


 一つ一つ部屋を見て回ったが見つからない。そして、廊下の先は未だに見えない。ほんとどんだけ巨大なんだよ……


 一時間くらい探しただろうか、ついに二人の独房を発見した。

 予想の斜め上をいく綺麗さだった。

 二人は寝ているのだろうか。静かだ。

 やせ細っているようなこともない。

 食事もしっかりと与えてもらっているようだ。


そして、二人を連れ、俺たちは車へと戻った。


「遅かったねぇ~」

「あんなに広いなんて聞いてないわよ……」

「いやぁ~まあゼラリアはお金だけはあったからねぇ~」

「お金ってどうせ闇ルートでしょ?」

「ご名答!さすが一流財閥のお嬢さんだ」

 二人が会話を交わしていると、極一うららが目を覚ました。

「ふぁ!ここは!」

「極一うららさんだね!俺は四条柊人!怪しいもんじゃないよ!」

「四条?まさか八一さんの?」

「そうそう。八一の命令で君をゼラリアの基地から連れてきたの。大変だったね。でももう大丈夫だよ!」

 まだなんか信じ切れていないのだろう。目をキョロキョロさせ時折強い目線でこちらを見てくる。

「で、私は今からどこへ?」

「シルフ本部へ連れて行くよ」

「シルフ?!なんで私が!!そうか、また独房に放り込む気だな!」

 まぁそう思うのもしょうがないか……独房にぶち込まれてて外の状況なんてしらないもんな。

「そっちがその気なら!でも、私には社長がいる!きっと助けに来てくれる!!」

 それもしらないのか……

「落ち着いて聞いてほしい」

「なんですか?」

 また強い目線でこちらを見てくる。

 息苦しさを感じながらも、深呼吸をして告げる。

「君の社長である、波間真仁はしんだよ」

 一瞬の無が走る。

「そんな……社長が死ぬはずありません!!」

 現実を受け入れないらしい。涙があふれている。

「ほんとだよ。ゼラリアによってね。そして、波間カンパニーは壊滅したよ」

「ゼラリア……許さない!!今すぐ引き返して下さい!私が社長の仇を!」

「ゼラリアも壊滅したよ」

「え……?どういうことですか?」

 ここ数日で色々と起こりすぎて、変化についていけないのはまぁしょうがないかな。俺だったら完全に理解不能に陥ってる……

「この、車運転している人が、ゼラリアの元幹部で――――ちょ!ちょ!ちょ!最後まで話を!!」

 うららがゼラリアと聞いた瞬間、ニソラの首を後ろから絞めたのだ。

「なにをするんですか!ゼラリアは敵です!敵ですよ!!」

 急いで腕を振りほどいた。

「はぁ……」

「ちょっとちょっと!うららさん!最後まで話を聞いてください!!ニソラさん大丈夫ですか?!」

「あぁ大丈夫」

 うららがまた強い目線でこちらをみてくる。

 ニソラさんは大丈夫って言ってるけど、あれ完全に入ってたよ……うん……

「このニソラさんはね!あなたの社長さんの仇をとってくれたんだよ!」

「仇をとった?ゼラリアなのに?」

「そう。内戦があってね」

「ゼラリアが分裂でもしたの?」

「まぁそんな感じ、で、このニソラさんが、貴方の社長を殺したイエラニス・ゼラという男を暗殺したの」

「ってことはいいもののゼラリアってこと?」

「今はシルフ所属だね」

 シルフ所属の元ゼラリアって感じのニソラさんはあと数秒締まっていたら死んでましたね。はい……

「つまり、貴方が敵対するゼラリアはもういないの」

「そうなの?じゃあどうやって復讐すれば?」

「もう復讐の必要はないよ……」

「そっか……」

 復讐できないってそれは、少し残念な気がするのには何となく共感できる。別にいままで復讐したいって本気で思ったことないけどさ……

「じゃあ、私はどうすればいいの?」

 心配しながらうららが言った。

「私たちについてこればいいのよ。波間真仁の代わりにこの四条柊人を新たなマスターにしちゃえばいいのよ。なかなかいい男よ~」

 メルディアさんがまたいらないことを吹き込んだ。

「いい男ってのは、ほっといて……でも、ついてきてくれるなら、それは嬉しいな!」

「そっか!新たなマスターになってもらって好きになれば、社長の事も忘れられるもんね!分かった!マスター!これからよろしくね!」

「マスターってよばれると緊張するな。でもまぁよろしくな!」

 こうして、また一人仲間が増えたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る