第三章 第四話

 司令部に到着した3人を待っていたのは百川と石川だった。

「おはよう!みんな~!」

 石川が微笑みながら挨拶をしてきた。

「おっはよぉ~ですぅ~」

「おはようございます」

「お、おはようございます!」

 相変わらずチャラい克実にそっけない一、まぁ俺も人の事いえるわけじゃないけど……

 挨拶を交わしたところで、咳払いをして石川が話しはじめた。

「え~、諸君にはこれからたくさん仕事をしてもらうよ!でも、その際に注意ね!まず第一に能力はむやみに使わない!第二にシルフは秘密組織みたいなもんだから、活動している事が他人にばれないようにする!第三に何か分かった時にはすぐに僕に連絡する事!いいかな?」

「あの、仕事って何するんですか?」

「あぁ。まだ伝えてなかったね~仕事っていうかまぁ情報収集みたいなものだね~!詳しくはミーシャ君に聞いてくれ!あ、それと、この紙に僕の電話番号とミーシャ君の場所が書いてあるから参考にしてくれ!何かあったら報告を忘れないでね!その時はすぐに部下の川井に向かわせるから~!では健闘をいのるよ!」

 そう言うと一枚の紙を渡し、石川と百川は去っていった。

「ホントに大雑把な人ですね……で、柊人、ミーシャさんの居場所は?」

「え~と、ちょっとまってね~」

 そういい渡された紙を開いた。

「え~なになに~?<鬼の子がいる橋の下で待つ>だってさ……」

「鬼の子ぉ~いったいなんのことなんでしょ~?」

「分かったぞ。多分だが、それはグラウンドの横にある小鬼の石像の下にある地下道の事だ。ここから30分ちょっとといったところか。さぁ行くぞ」

「あんなヒントでわかっちゃうんですかぁ~!やはり頭脳で一には勝てませんねぇ~」

 どうしてあんな適当なヒントでわかったんだよ……神谷一……恐るべし……


 3人は一が運転する車でミーシャの待つ場所へと向かった。柊人は一が地下道の話を始めたときに何処の事か見当もつかなかったが、どうやらいつも通学で使っている道の横にある地下道の事らしい。家からも近い。思い返すと確かにあそこには鬼の子の石像があった。

「着いたぞ!ここがミーシャさんがいるであろう場所だ!」

 周りには誰もいない。地下道というよりか、大きな道路の下をくぐるトンネルといった方がいいのかもしれない。このトンネルは冬には綺麗にイルミネーションが施され、とても賑わっているのだが、今は全くそんな様子はない。

 影が三人の上を通り過ぎる。

「よくぞここにたどり着いたな。この暗号を解いたのは……どうせ神谷だろ。そんな事はどうでもいい。で――お前が四条か。私はイグラアス・ミーシャ。シルフ特務科所属だ。しばらくはお前らと共に行動する。足手まといになるなよ」

 クールでカッコいい女性だ。まさに自分のタイプ――とかいってる場合じゃなくて……忍者?クノイチ?そんな感じの服装をしている。こんなので街中にいてよくもまぁ目立たないものだな……活動中気を付ける事の中にバレないようにとかなんとかなかったっけ……

「はい!四条柊人です!お手間はとらせません!宜しくお願いします!それで、俺たちは何をすればいいんですか??」

「そうだな。お前たちにはこの人物を探してほしい」

 そういうとミーシャは一枚の写真を見せた。薄緑色の髪の少年の写真だ。一が訪ねた。

「ミーシャさん。この方は?」

「コイツはシリウス・ベリト。お前らと同じ能力者だ。この先何が起こるか分らんから保護の必要がある。取り返しのつかないことになる前に探し出してほしい」

 名前を聞いて一が反応した。<シリウス・ベリト>その名前に聞き覚えがあるらしい。

「ミーシャさん。ベリトって……」

「あぁそうだ。世界でも名の知れた財閥。ベリト財閥を束ねるソマルド・ベリトのご子息だ。さすが神谷。よく知っているな」

 そんなすごいやつが厨二病??俺らと同じなのか……でも、大金持ちを味方につけておけば行動範囲は広がるな!某ゲームの大艇的役割を――って、いかんいかん!なんか利用してる最悪なやつみたいになるからこういった発言は控えよう……

「で、そのシリウス・ベリトはおおよそ、どこにいるんですか?」

「分からん!」

 すまし顔で堂々と言われても困るなぁ……ほんとにこの組織は単細胞の――ユニークな方ばかりだなぁ~!アハハハハ

「分かりました。とりあえず財閥関係各所より情報を集めます」

「くれぐれも活動がばれないよう慎重に頼むぞ」

「はい!」「承知」「りょーかいで~す」


 三人はシリウス・ベリトの父ソマルド・ベルトが所有する高層ビルへと向かった。そのビルの名は<ヤマナニュービルディング>高さ270mという、日本一高いビル<あべのハルカス>まで後30mと、まで迫る一流高層ビルだ。下の方にはデパートなどの商業施設が入り、中層には様々な有名企業の事務所が入り、上層はベリト財閥の本社となっている。

「ついたぞ。ここがヤマナニュービルディングだ」

 説明通りのすばらしい建物。流石大金持ちといった所ですね……正面玄関には守衛さんが二人。能力の使用は原則禁止。侵入は……不可能か……

「よし。行くぞ」

 銀髪秀才が声を上げた。

 今、行くって言ったよね?!言ったよね?!

「一~どうやって入るの~?」

「安心しろ。これをみろ」

 銀髪秀才がそう言って一枚のカードを見せてきた。

<社員証 シルフ 神谷一>

「一、これはどういうことだ??シルフの社員証なんか持ってても……」

「このヤマナニュービルディング中層にはシルフの倉庫があるんだよ。今の基地が出来る前に使っていたんだけど。秘密結社には使いにくかったからね」

 初耳だ。まず社員証があったことも知らなかったのに……ましてや倉庫があるなんて……ほんとにいい加減な組織だなぁ…… でもこれで、ビル内には侵入できる。

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