107 №10-1 史記に登場する人物<司馬相如>
今年最後の『史記』の講座は、武帝に仕えた宮廷詩人・司馬
『史記』といえば、秦が興り始皇帝が天下を統一し、その後の劉邦と項羽の戦いが有名です。でも、実際に司馬遷が見聞きしたであろう武帝時代の記述、知れば知るほど、すごく面白かったです。
始皇帝の天下統一とその後の話に比べると地味ではありますが、先生が「これで最後」と言われながら、この時代の講義をずるずると延長されたのがよくわかります。
以前にも書いたことですが、この時代のこと、司馬遷を中心にした小説とかドラマにすればさぞかし面白いだろうなあと、『史記』のファンとしては思うのですが。
さて、話をもとに戻しまして。
今回の史記に登場する人物は<司馬相如>です。
彼は架空の世界の架空人物たちの言動を詩に書いて、武帝を褒めたたえたり諫めたりした、武帝お気に入りの宮廷詩人です。
司馬遷とは同時代の人ですが、二人の間に親交があったのかどうかは定かではありません。
しかし司馬遷は、出世欲がなくそれでいて幸福度の高かった司馬相如の人柄と人生をかなり好意的に書き残しています。大恋愛ののちの結婚にいたるまでの詳しいエピソードから始まるのですから、史記の人物伝の中では異例中の異例でしょう。
彼の最期を語る記述も、なかなかにドラマチックです。
武帝は彼が書いたたくさんの詩が散らばってしまうのを恐れて一つにまとめようと、司馬相如の屋敷に使いを出します。
が、ときすでに遅しで、司馬相如は病死したあとでした。
大恋愛の末に結ばれた奥さんは、「夫の書いた詩は一つを残して、すべて欲しいと言われる方々に差し上げてしまいました。残ったこの一編の詩だけを献上します」と言います。
その最後の詩が武帝に
以前にも書きましたが、封禅とは、天と地に王や皇帝の即位を知らせ、天下が泰平であることを感謝する儀式です。徳があり偉大であると自他ともに認められる皇帝でなければ行うことはできません。
この封禅を進める司馬相如の詩を読んで、武帝は「彼のいままでの詩は全部なるほどと感嘆したが、この詩だけは間違ってる」と、謙虚なことを言います。結局は、司馬相如の死後に、武帝は封禅の儀式を行いますが。
大恋愛のエピソードから始まって、彼の書いた詩はすべて武帝に認められて、でも絶筆の封禅を進めた詩だけには、武帝に「異」と言わしめたなんて…。
聞いていて、「ちょっと出来過ぎた話だなあ。本当の話だろうか? 司馬相如って、実在した人物なのだろうか?」と、カクヨムで作り話満載の小説を書いている私は、講義を聞いていて、正直言って思ってしまいました。
① 武帝に封禅を進めた詩の記述の部分、素人の私には難しくて説明できませんが、その時代の漢字の使い方としては「?」と思われる記述が数か所あるそうです。
② 史記は優れた歴史書でありますが、武帝が封禅をするのにふさわしい偉大な人物であることを導くための、神話から始まっての長い長い証明物語でもあります。
③ 司馬遷の父・司馬談は武帝の封禅の儀式が自分の生きている間には見られないことを知って、史記の続きを息子の司馬遷に託して憤死します。
④ 司馬相如の人物伝は、奥さんと出会いから始まって、最後の話の締め括りも奥さんって……。ちょっと、構成が物語的過ぎるような。
う~~ん、聞いていて、司馬相如って司馬遷のお父さんをモデルにした架空の人物かと想像を逞しくしてしまいました。
奥さんはものすごいお金持ちの家の令嬢で美人で賢い人でしたが、夫の窮状のときは居酒屋の女主人までして働いたとか。それから、司馬相如が妾を持とうとしたとき、離縁を申し出て、夫に諦めさせたとか。
これまた司馬遷の記述は好意的です。
でも、ウィキペディアを調べると、実際にいた人物のようなんですねえ。
<2>に続きます。
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