老いる

高齢者となった母が、だんだん体が思うように動かなくなってきたのでしょう、何もできなくなるのなら生きていたくない、と申しまして。

老いというものを日々に感じて、将来に不安を感じています。それは当然のことだと思います。

確かに一年一年、体は動きにくくなってきていますし、少しずつ勘違いをすることが増えてきました。

ただ、母は必要以上に、老いを否定的に捉えているように感じました。それは悲しいことのように思われました。


わたしは祖母の介護をしていましてので、ひとつのパターンですが、老いるということ見てきました。


生きていれば、いつかは老いるのです。

それは、ある日突然にやってくるのではなく、1つの道のようなものです。


今のわたしにとって、年を重ねていくことは幸せなことです。若い頃の心の葛藤は苦しいもので、今は体調がよくありませんが、それでも心は落ち着いていて、若い頃よりも幸せです。

このためわたしは、若さを信望しませんし、老いることを自然に捉えることができています。


人はいつでも、その時を生きています。

まだ来ぬ未来を悲観して、嘆くことは悲しいことだと感じましたので、母と話をしました。


今のわたしは、老いていくことが幸せであること。

…失うことによって、得るもがあること。


死に向かう何人ものインタビューをして死とは何かを捉えたと思っていた人が、自分がその立場になったときに全く違うものであったと言ったこと。

…その時にならないと本当のことは分からないこと。


母の周りの老いて足が痛くなったり、しっかりと話せなくなった人たちが、俯いて生きているわけではなく、みんな一生懸命に生きているこも。

…その時々に楽しみを見つけ、みんな前を向いて生きていること。


そして、母が毎日話している「今日という1日を大切に生きる」という言葉の真意は、今という時を精一杯生きることだと思うと話をしました。


母は驚いたようでしたが、これまでそういった考えは持っていなかったけれど、言われてみれば確かにそのとおりだと納得をしていました。


わたしも母の身になっていないので、本当のところは分かりませんが、母もわたしもできるだけ穏やかに、老いていければと考えいます。

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