第66話 俺達の朝ごはん2


 こんなに大勢で朝ごはんを食べるのは、いつぶりだろうか?


 学校の行事以外なら、初めての経験かも知れない。


「……瑠衣るいの味噌汁はやはり別格ですね」


 まくらさんが舌鼓したつづみを打っているが、瑠衣は唇をとがらせる。


「分かりやすく褒めても、お父さんとは絶交したままだからね!」


 そっぽを向く瑠衣にまくらさんは眉を寄せつつも、


「私は素直な感想を洩らしただけなのですが……」


「くくくくく」


 そんなまくらさんに笑いかけたのは千さんだ。


「まくらを手玉てだまに取る瑠衣はなかなかかしこい娘じゃ。料理もまくらよりはるか高みを行っておるし、わらわが付いていくとしたらまくらではなく瑠衣にしようかの」


「本当ですか!? 嬉しいです!」


 目を輝かせる瑠衣に、東雲しののめがため息をついた。


「こんな鬼と一緒に生活なんてできるわけないでしょ」


「……小娘が!」


 東雲の言葉に、気をよくしていた千さんが眉を吊り上げている。


 それを見て、俺も思わず口を開く。


「東雲もけっこうキツイこと言うのな?」


 そんな俺を東雲は睨んできた。


「ルイルイはこれから普通の女の子になるんだから、もっと普通に生活して、普通に良い人を見つけて、普通に幸せになるべきなの。それが私の遺言ゆいごんってことでよろしく」


 まるで他人事のような東雲の言葉に、まくらさんが困り顔のまま口を開く。


「達観しているのは良いことですが、笑えない冗談ですね」


「そこは妾も同感じゃな」


「右に同じ」


 まくらさんの言葉に、千さんと瑠衣がうなずいている。


 そんな三人の意見に、東雲は薄く笑った。


「いつの世も、天才は理解されない宿命を背負っているのね」


 心配していたのが馬鹿らしくなるというか、気を使ってそういう風に東雲が思わせているのか分からないけれど、


「……やっぱり東雲って変な奴だよな」


「私もそう思います」


「妾も同感じゃな」


「右に同じ!!」


 明らかに機嫌の悪くなった瑠衣に、東雲が慌てて口を開く。

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