第24話

 午後、空腹を抑えて授業を受け、マナーレッスンもみっちりと受けた。疲れがどっと押し寄せては来ていたけれど、まだ明日の分の予習やら復習やらが終わっていない。頑張らないといけないことはたくさんある。


「お夕飯の支度をお願いできる?」


「かしこまりました」


ちりん、と呼び鈴を鳴らしてレイラではない侍女を呼び食事の支度をしてもらう。ずいぶんとこの呼び鈴を使うことにも慣れたものだ。レイラでない侍女が来ることにも。


 間延びした声、やる気がないことを隠そうともしない態度に苛立ちが募るが、今はそれらを追及している暇はない。そんなものにかまっている暇があるのなら、少しでも未来視についての情報を得るために時間を割く。


「もう自分でやったほうがいいような気がするわ」


食事を用意するのも、何もかも自分でやったほうが早いような気がする。しかしそれでは王族としての示しがつかない。特に食事の支度はそうだ。お風呂ならば手伝われなくても、拒否をしたと言える。でも食事はそうじゃない。面倒くさいったらありゃしない。



 適当に用意された食事を、誰も見ていなくとも完璧なマナーで食し、終えたら片付けてもらい。そうして一人でお風呂に入って、ふと思う。


「お父さまには言ったけど、確証がないから……。どうしようもないものね、この奇妙な……、力と言っていいのかわからないものも」


父に聞かれて答えたのは、このことをいつから把握していたかだけだ。未来視らしきもののことは、まだ言えていない。何せ、確証が得られていないから。


「私が出しゃばったみたいな形になっていないといいけれど……」


父もこの件は把握していた。それはすなわち、解決策を打ち出していたかもしれないのだ。それを私が無駄に引っ掻き回した可能性だって、否定はできない。


「ううん、終わったことは考えないようにしよう。私が次に考えなくてはいけないことは、あるでしょう」


 長風呂をするとすぐにのぼせてしまうので、そうならない程度に切り上げて寝間着ではなく普通の服に着替える。外にも出られるワンピースにし、髪の毛を乾かして執務机に向かう。図書館から借りてきた本を読み、ところどころ、気になったところを書き出す。


「やっぱり、気になるわね……。このページ……」


とある書物の一つ、たった一ページだけなぜか空白なのだ。不自然なそのページ、なぜ途中だけ、それも一ページだけが空白なのか。古書でもあるこの書物の不思議を解決する術を、私は持っていなかった。


気になりすぎる古書を片付けて、次は予習復習を行い。そして最後は公務に必要な知識の確認。やることだけは多いのが現状で。次から次へと現れる案件に頭を悩ませている。


「さて、さすがにそろそろ寝ないとまずいわね」


 深夜に差し掛かる時間になり、この時間には寝ないと明日が起きられないと思い、寝間着に着替えてベッドに横になる。気になるのはあの空白のページ。


「考えるな、眠るのよ」


深く考えそうになる自分を律して、考えるのをやめて眠ることに専念する。横になってしばらく深呼吸を繰り返せば、すうっと眠りに入ることができた。

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