「おはちゅ、おはつに、おめにかかりましゅ、るどるふ、れいんべるくです」

「おはつに、おめにかかりまぅ、あんじぇぃーな、れいんべるくでしゅ」

　そんな心の中では、もう早く休みたいしか思っていない私の前に天使が舞い降りた。淡い金髪に碧眼、私と同じ色彩であり、父と同じ色彩でもある、髪と瞳を持つ、双子の幼い子ども。考えなくても、本能で悟った。私の弟妹だと。

大きな瞳を不安そうに揺らし、それでもちゃんと私を見て自己紹介をしてくれた。私は二人の元まで歩き、膝をついて目線を合わせて同じように自己紹介をする。

私はこの子たちが産まれることはあらかじめ知っていた。それでも会うのは初めてだ。

「アイリーン・レインヴェルクよ。ルドルフ、アンジェリーナ、初めまして」

　優しい顔を心がけて、怖がらせないようにそっと笑いかければ双子の表情はパッと明るくなった。しかしその瞬間、私は双子の顔とダブってとある映像を見た。それは、この子たちが王妃にらしき人物に叩かれて泣いているところや、無理やり監視されながら、年に見合わない勉強をさせられているところだった。

それを見てからもう一度注意深く、双子を見れば王族として生活をしている割には細い。いや、痩せすぎている。もっとフニフニした柔らかな体形であってもおかしくはないのに、骨が出すぎている。先ほどの映像を未来だというのならば、双子の生活は明らかに酷いものだと示している。

だけど、それらを証明づける証拠が何一つない。

「大変申し訳ございません!!」

「よいのですよ、幼い子どもを一人で見るのは大変でしょう?」

「その、きちんとできていないことは、事実ですので……」

　双子をニコニコ笑顔で見つめ、はぐれないように手を握ってやり、二人の侍女を探そうと歩き出せば、前から走って侍女が来た。謝る侍女に、私は大変だろうというが、幼くとも王族であるこの子たちの面倒を見られていないのは事実だと侍女は肩を落としていた。

「申し訳ございませんでした！」

あとから双子の護衛を担う近衛も二人やってきて、肩で息をしながら頭を下げてきた。おそらく侍女同様にこの子たちを探し回っていたのだろう。見つかってよかったと安堵しているのがよく伝わる。

「まずは無事なことを喜び、次からまた新しい対策を考えるようにしましょう」

「はいっ」

　イヤイヤと離れたくないことを示す双子に、また会えると言って納得させて騎士二人に預ける。侍女にはちょっとお願いしたいことがあるのでその場に残ってもらった。

「ちょっと、いいかしら」

「は、はい……」

怒られると思っているのか、覚えた表情の侍女を安心させるように、努めて優しい声を出す。そしてそのままそっと小さな声で話をした。

　私が彼女に頼んだのは、双子の生活環境の報告だ。どんな食事なのか、きちんと食べられているのか、勉強はどこを習っているのか、王妃との関係など、多岐にわたる内容ではあるが双子に関係することをすべて、たとえ小さなことでも報告することだった。もちろんこのことは彼女と私だけの間で秘密にすることを約束させた。

彼女は王妃の実家の派閥に所属する侍女ではないので、こちらの約束事を守ってくれると確信していたからだ。そうでなければあの近衛騎士二人にしか頼まない。あとからあの二人にも頼もうとは思っているが、まずは侍女からの視点が欲しい。

「必ず、ご報告をします」

「ええ、待っているわ」

　約束を交わした後は双子と侍女、近衛二人と別れて自室に戻った。パンプスで立ちっぱなしだったこともあって、足が浮腫んでいたので、椅子に深く腰掛けて休ませた。

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