7-2
◇ ◇ ◇
それは数日前のこと。
SCCA東京本局が謎の敵の襲撃に遭った十数時間後の話。
本局の長官室に、令の姿があった。長官直々の呼び出しを受けたのだ。
「何か分かったんですか?」
呼び出されたタイミングから見て、長官が令に何か頼みごとがあるのは明白だった。
であるならば当然質問すべきことを令が口にすると、デスクの上で指を組んでいる
「うむ……。どうやら襲撃してきた敵は、捕まえたあの一人だけではなかったようだ。――被害を確認したところ、東京本局付けの捜査官のファイルが盗まれていることが判明した」
「えぇ?! それって……中々マズいんじゃあ?」
つい声を
寒い地方の生まれなのか、長官の色素が少し薄い瞳には、複雑な色が浮かんでいる。
しかし、令が思うほどの致命的な焦りはそこにないように見えた。
「捜査官の能力については重大な情報だ。それ
そこで一度言葉を切り、長官はそのオールバックの髪を一度撫でた。
無意識か意識的にかは分からないが、それが彼の癖であることは間違いない。
実年齢よりずっと若く見えるその
「相手が複数犯であることを
この部屋に来た時から頼まれごとは覚悟していたが、それは想像よりもずっと大きな頼まれごとだった。
令は顔を曇らせる。
「俺がですか?」
「当然のことながら、捜査官でない君はファイルの情報に含まれていないからね」
令はしばし
「正直――俺に守られるようなメンツとは思えないんですが」
令のその答えに長官は
「ハッハッハッ! 確かに彼らは優秀だからね。――だが何も手を打たないという訳にもいかないのだよ。いざ何かあった時、“彼らを信頼していたので何も手は打ちませんでした”とは言えないからね。まあ、これは臨時の処置だと思ってくれていい。せめて状況が掴めるまでは君に居てもらいたいのだよ」
長官の
以前から聡見長官からは捜査官にならないかとオファーを受けている。
令には、なし崩し的にこのまま捜査官にさせられてしまいそうだという憂いがあった。
長官は令のそんな悩みも見抜いて、畳みかける。
「頼むよ。うちが万年人手不足なのは知っているだろう? ――それに、こんなことは言いたくないが……成果は出せていないとはいえ、我々も君の“旅の目的”に十分協力していると思うのだが……どうかな?」
それは、令にとって突かれると弱い“ツボ”だった。
令はしばらく顔を曇らせて沈黙した後、
「……分かりました。じゃあ、事態が
力なく言う令に、長官は目尻にシワを刻みながら飛び切りの笑顔を見せてすぐに返す。
「助かるよ。君が居れば取り合えず安心だ」
◇ ◇ ◇
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