3-4
◇ ◇ ◇
コンビニ強盗犯のアジトは、
青天の
令は“器”の姿でこっそりと、倉庫の屋根から屋根へ、中の様子を
とは言っても倉庫はそう膨大にある訳でもなく、要は車を見つけてしまえばいいのだ。
令は何棟目かの倉庫で、例の犯人が使用していたバンを明り取りの天窓から見つける。
見れば、バンのそばで男がひとり、頭を抱えてしゃがみ込んでいた。
令はこっそりと屋根を歩いていくと、シャッターが開け放たれた倉庫の入り口側に、体重を軽くして
倉庫の入り口の壁に背をつけて、肩口から中を窺うが、倉庫に居るのはその男ひとりだけのようだった。
状況を確認すると、令は
「生身の人間に俺の能力を使うと拷問になるからさ、素直に投降してくれ」
令が堂々と喋りながら倉庫に入っていくと、男はビクッと肩を震わせて令を見た。
青白くこけた顔からは、男の貧弱さが
どう見ても気の強い男ではない。コンビニ強盗をしたことさえ信じられないくらいだ。
吹けば飛びそうなくらいに生命力を感じない男は、引き
「リヴァイヴ犯罪者だから本来はちょっと特殊な方法で捕まえなくちゃあならないんだが、本人が協力的で反省してるなら、“一般的”なやり方で裁きにかけることも出来る。だから素直に――」
その時令の耳に“破裂音”のようなものが聞こえた。
恐怖を浮かべた男の視線が、スッと令の上方に向けられる――。
その瞬間、令は一も二もなく前方へと跳躍した。体重を軽くしたその動きは素早い。
――直後、さっきまで令が立っていた場所に、“何か”が落ちてきてアスファルトが砕け散る。
落ちてきたそれが何かは、令が振り向いた瞬間に判明した。
――そこには、ずんぐりとした巨大な“器”が、地面に拳を突き立てて中腰で立っていた。
それはゆっくりと拳を引き抜くと、カメラのレンズのような“瞳”を、落ち
「オマエはヘマするばかりじゃ飽き足らず、余計な金魚の
その言葉は明らかに令ではなく、令の背後にいる顔色の悪い男に投げかけられていた。
「ぼっ、ボス……っ!」
男は泣きべそをかいている。
唐突な状況な上に一方的に放置されているが、令はそこに動揺することもなく、この隙を活かしてじっくりと敵の“器”を観察していた。
(この巨体で……どっから降ってきやがった?)
その“器”は言ってしまえば“
巨大な丸が
足はその重そうな身体を支えるべく、短く太い、ジャッキを思わせるもの。とても機動力が高そうには見えない。
腕も人間の腕というよりも、重機のアームのような無骨さがある。
見れば見るほど、機敏に動けそうにはない“器”だった。
「……しかしまたデッカイやつとは……。最近流行ってるのか? 大きければ強いって訳じゃあないのに」
令はそう軽口を叩いてみせるが、その声は真剣で、油断は見せていない。
目の前の敵はそれを軽く
「
「デジャヴかよ。つい昨日もそんな会話をしたばっかりだ」
「生きて
喋りながら構えをとっていた令の前で、敵の“器”の胸部が、唐突に開く――。
令は敵の胸の内にあったものに驚愕し、すぐに動こうとするが――。
「――今日のテメエは死ぬんだからよ」
観音開きに開いた敵の胸にあったもの――それは、“大砲”だった。
敵の言葉が終わった瞬間に、その大砲が火を
避けている
令は
令は右腕をしならせて空中で砲弾を叩きつける。
瞬間、令は砲弾を“重く”した。
それにより軌道は変わり、砲弾は斜めに倉庫の床へと落ちるとそのまま床のコンクリートを剥がしながら倉庫を縦断していった。
令は砲弾に弾かれるように宙に跳ねて、結局はほぼジャンプしたのと同じ場所に着地した。
――しかし、ジャンプした前と後で決定的に違っていたのは、その右腕に“亀裂”が刻まれていることだった。
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