第16話 車椅子に乗ったエース
「すみません…コーチ…彼女を…リカを見てやって貰えますか…?よろしくお願いします。」
「分かったわ…リカさん…じゃあ…この間と同じ様に準備してくれる?」
「はい!!」
僕はリカをミドリコーチに任せて隣のリンクのミキの元へと歩み寄った…
「もっと腰を落としてブレードの角度を考えなさいよ…あーっ!もう…」
ミキは後輩の女子選手にだろうか?ゲキを飛ばしていた…
「ミキ…」僕は彼女の車椅子の
「何よ…笑いに来たの?」
誰にでもぶっきらぼうにものを言うその態度は変わらないが、幼い頃から彼女と接してきた僕にとってはその声はどこか寂しそうな声に聞こえた…
「僕とリカ…スケートサークルに入部する事にしたよ…これからよろしく!」
「そう…でも、楽しいだけのスケートは私には関係の無い事よ…私は私でやらなくちゃいけない事があるから…どうぞ…彼女と仲良くやってよね…」
それ以上彼女は何も言わなかった…
僕はもう一度コーチとリカの所へと戻ると
コーチはリンクにリカを降ろして指導していた…
「じゃあ…向こうから左足で滑ってきて
右足の爪先で踏み切ってみて…」
リカは頷いてコーチの指示に従った。
スピードに乗って彼女は右足の爪先で踏み切ってジャンプした…
「はっ!!」
僕にはまるでスローモーションのように空中で二回転して着地した彼女の笑顔が輝いて見えた…
ミドリはメガホンを握る手に力が入った…
「やっぱりこの子…本物だわ…
サルコウもルッツも…あとは表現力…ジャンプは凄く嬉しそうに跳ぶんだけど…どこか感情の波を感じられない所があるわ…そう…まるで人形のよう…
喜怒哀楽を表現する演技力をつけささないと…難しいわね…」
「あの…コーチ…」
呼びかけた僕の方に振り返ったコーチは「ああ…ゴメンなさいね…どうしたの?」とビックリした様子だった…何か考え事をしていたのかな?
「とりあえず…サークルの規模が大きくなったらスクール側も対応を考えてくれるでしょうか?」
「え、ええ…それはね。私や他のコーチも掛け合ってみようと思うわ…」
「じゃあ…僕にちょっと考えがあるんで任せて貰えませんか…?ご迷惑はかけません…必ず部員を増やして見せますよ!」
「まあ…あなたが…?」
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