第8話 助六vs将也

 助六達二番隊は、佐助の指示通りにされた場所に到達し、部隊を展開して防衛態勢を整えていた。


「敵の攻撃は苛烈を極めるでごわそうが、戦い抜くでごわすぞ」

「「「「「了解っ‼」」」」」


 助六の激励に、隊員達は一斉に応えた。


「それにしても組長、ここまで敵の反撃が早いとは想定外でしたね……」

「だが敵としても、反撃の機会を窺っていたに違いないでごわす」


 助六がそう言った瞬間、隊員の一人がその場に立ち止まった。


「どうしたでごわすか?」

「……足音が、近づいてきます」

「どれほどで到達するでごわすか?」

「ま、間もなくです……」


 その瞬間、彼らの遥か前方から無数の闘気の槍が飛来してきた。


「迎撃するでごわす‼」(連砲撃‼)


 助六は指示を出しながら連砲撃から繰り出される空圧で迫りくる闘気の勢いを押し込む。

そしてその勢いが殺されたところを、大師討ちの闘気を込めた弾丸で相手の闘気の弾幕全てを叩き潰してした。


「何者でごわすかな?」


 そう言いながら慎重な姿勢で敵の次の行動に備えは始めた助六達だったが、そのすぐ後にのんびりそうな男の声が聞こえてきた。


「この人はボクの相手か~」


 その声と共に、双戟を両手に引っ提げた恰幅の良い男が、部下の男達と共に現れた。


「……お主は東京襲撃の時の……」

「久しぶりだね」


 恰幅のいい男こと冠城将也はそう言いながら両手の大戟に鋼の闘気を流し込み始めた。


「なるほど、幸村翼の忠臣の一人でごわすか……」

「その通り。翼の為に、情報は貰うよ」


緊張感を持って尋ねる助六に、将也は穏やかな態度で言葉を返した。


「あまり我らの力を過小評価してもらっては困る」


助六がそう言った瞬間、隊員達は拳に各々の闘気を纏わせ始め、大師討ちのメンバー改めて拳銃に闘気を流し込み始めた。


「排除するでごわす」

「そんなことは、絶対にさせないよ」


 そう言いながら助六と将也は、そのまま互い目掛けて突進し始めた。


「行くでごわすっ!」(連砲撃‼)


 助六は将也の五歩手前まで迫った瞬間、猛烈な勢いで無数の重い拳打によるラッシュを繰り出した。


「ボクも負けないよっ!」


 将也も双戟を風車のように回転させて助六の連砲撃を受け止める。二つの技が激突した瞬間、周囲に地響きが鳴り響き、アスファルトの至る所にヒビが入った。


「お主達っ‼ 続くでごわすっ‼」

「「「了解‼」」」


 助六の指示を受けて彼の背後を突き進む隊員達と大師討ち。


「みんなっ!」


 すかさず将也は部下達に阻止を命じ、彼らは刀に闘気を纏わせて迎え撃った。


「これでしばらくの間は安心だよ」


 助六の拳を余裕そうな表情で押し込みながら告げる将也。ののほほんとしたその表情とは正反対に徐々に圧力を増していく。


「絶対に屈さぬでごわす!」


 鋼の闘気を足にも流し込んで踏み込みを強化した助六。更に右肩にまで鋼の闘気を流し込み、滑らすように大戟をいなし、将也の体勢を崩し、そのまま彼の右頬に、コークスクリューの要領で一撃をお見舞いした。


「ぐあっ! でも、まだまだだよっ!」


 将也は崩れた体勢を双戟を地面に突き刺して整え、そのままお返しと言わんばかりに鋼の闘気を流し込んだ右拳を助六の左頬に叩き込んだ。


「ぐっ‼」


 吹き飛ばされながらも、直撃の瞬間に右頬に鋼の闘気を流し込んで致命傷は避けた助六だが、将也はすかさず、双戟を引き抜いて助六目掛けて振り下ろした。


「この程度でっ‼」


 負けじと助六が、将也の双戟を身体を捻って離脱する。


「これでどうでごわすっ‼」(連砲撃‼)


 刹那に技を繰り出す助六。


「しま……‼」


将也の対応が遅れる。

その瞬間、助六の怒涛の連砲撃を胸に思いっきり食らった。


「ぐあっはあ‼」


鋼の拳の乱撃は将也を吹き飛ばし、それによって生じた空圧によって周囲の敵も吹き飛ばした。


「ぐふっ‼」


 助六の連砲撃は将也が腹部に鋼の闘気を流し込む隙を与えず、強烈な痛みが彼の腹に走った。


「将也様っ‼」


 その様子を見て慌てた様子で声を上げる彼の部下。


「大丈夫だよ。それにしても、凄い力だね」


 将也は腹に走る痛みに耐えながらいつも通りの態度で答えた。


「今のを食らってもその余裕……」

「これくらいは慣れてるよ」


 その言葉通り、将也は見る者に全くダメージを食らっていないと思わせるほど気丈な態度で立ち上がった。


「許容範囲という訳でごわすか……」

「その通り。ここは通らせてもらうよ」


 鋼の闘気を流し込みし双戟を振るう将也。

その勢いは、彼を遮る数多の敵ですら手に負えず、一方的に八つ裂きにされるだけだった。


「ならばっ‼」


 助六も将也の勢いを叩き潰す為、鋼の闘気が流し込まれた拳で技を繰り出す。彼の拳は、迫りくる将也の部下達を瞬く間に肉塊に変えていった。


「はぁ‼」

「ふんっ‼」


 互いの渾身の一撃が激突し、鈍く輝く得物と拳の応酬。並外れた両者のパワーによってその余波で地面を割り続けた。


「全く力に衰えが見えないとは……‼」

「ボクも驚いたよ。流石は新選組モドキの幹部だね」

「称賛感謝いたすっ‼」


 気迫と共にラッシュ速度を上げる助六。将也も鋼の闘気を流し込んで加重を増した双戟を軽々と振るって迎撃を続行する。

鋼の闘気で強化してるとは言え、将也の強烈な連撃にも全く怯まずに対抗できるのは、助六の腕力と攻撃が、武器を持った相手とも互角の威力を繰り出せるまで極まっているからこそである。


 一方の将也は、更に重い一撃で助六の拳を叩き潰そうと、双戟に流し込む鋼の闘気の力を更に増やす。


「他も、少なくしないとねっ‼」


同時に、右手の戟をブーメランのように投擲した。


「何をっ‼」


 直後に即座のその場にかがんでかわした助六。

だが将也の手元を離れた戟は、銃撃をしていた十名の大師討ちのメンバーを胴体から一刀両断した。

力を失って落ちた戟が、凄まじい地響きを発生させる。それは周囲の者達がまともに体勢を保てずにその場に蹲る程だった。


「……あんなのを軽々と……」

「もっと力を出すよ。君達を完全に倒す為にね」


 左手に持った戟を両手持ちに変え、更に多量の鋼の闘気を流し込む将也。

流し込まれた戟は白銀から鈍い青銅色へと変わった。


「恐るべでごわす。ならばそれがしも……」


 助六もまた、両腕に流し込む鋼の闘気量を増大させ、将也の戟同様に鈍い青銅色に変色した。


「組長があそこまで……」


 戟の落下による衝撃からまだ体勢を整えきれていない隊員の一人が仰天しながらつぶやく。助六がここまでの量の鋼の闘気を実戦の中で流し込んだのはあまり見たことがなかったからである。


「君も、やれるんだ?」

「お主も、この闘気をここまで使った反動は存じている筈で語わす」

「……重すぎて体格がしっかりしてないと、自分の身体が骨から完全に砕ける、でしょ?」

「故に、それがしはいつまでもお主と力自慢をしてる暇はないでごわす」

「だね」


 互いに構え、しばりの沈黙が細道を覆う。そして通路全体に石ころが一つ転がる音が轟いた瞬間……。


「っふんっ‼」

「はぁっ‼」


 互いに地面を強く蹴る。片や拳を、片やは戟を振り上げて全速力で迫り、そして激突した。その衝撃で二人の足元はひび割れを起こし、同時に凄まじい量の砂ぼこりが通路全体を覆う。


「凄いパワーだっ‼」

「将也様の力は半端じゃねぇ‼」


 将也の腕力と鋼の闘気による威力を目の当たりにした将也の部下達はそう言って二番隊の隊員と大師討ちのメンバーに誇った。


「負けるか‼‼」

「「「「「オウッ‼」」」」」


 隊員の一人がそう言ったを聞いた隊員達と大師討ちは、共に敵の間を縫うように、そして将也の部下達の猛攻を凌ぎなら突き進んでいった。


「意地でも突破するぞっ‼」


 それに呼応し、将也の部下達も隊員達目掛け、闘気を纏った刀から闘気の刃を形成し、斬撃と共に彼ら目掛けて発射した。


「やらせんっ‼」


 隊員達の援護に入る大師討ちが各々の属性の闘気を流し込んだ弾丸を放って闘気の刃を叩き潰し、同時に幾人かを屠った。だがそれと同様に、何人かの隊員達が負傷してその場に倒れてしまった。


「俺達に構うなっ‼ 先に進めっ‼」

「分かってるっ‼」


 隊員の一人は足を負傷しながらも別の隊員にそう声を掛け、それを聞いた別の隊員が応えながら他の隊員達と共に通路の奥へ奥へと駆け抜けた。


「おのれぇ‼」

「構わないで追いかけてろっ‼」


 将也の部下達は意地になって追いかける。その背後で助六と将也が持てる力の全てを振り絞って持てる技を繰り出し、その度に攻撃の余波によって通路のあらゆる箇所にヒビが入っていった。


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