6th phase-9

「……父の?」

「ああ。昨夜おまえと話した時、おまえは本当に何も知らなさそうな感じだったからな。それを教えてから殺しても、まあいいだろうと思っただけだ。自分が殺される理由が分かった方が、おまえもいいだろう?」

 殺されてやりたくはないが、聞く価値はありそうだ。

 もともと私が『JSA』にいる理由だって、父の、鬼道正義の死の真相が知りたいからだ。

 目の前の女からその情報がもらえるなら、それは是非ともほしい。

 ただ、この女が信用できるなら、の話だが。

「……わかった。その話、聞こう」

「なんだ、随分聞き分けがいいな。まあ、その目はまだ信用してなさそうだが?」

「……他に、当てもないしね。それと、殺されてやるつもりはない」

「はは、言うなあ」

 そう言って、彼女は歩き出す。

 その背にとりあえずついていくこと数分、駅構内にあるカフェに入った。

「飲み物代くらいは出してやる。好きなもん頼め」

「……アイスコーヒー」

「おいおい、せっかくの京都だぞ? せめて抹茶ラテとか頼めよな」

 それを言うなら、おまえが頼んだらいいじゃないか。

 わざわざ砂糖たっぷりのフラペチーノなんて頼まずに。

「さて、話を始めようか。あの男の話を」

「……!」

 彼女の雰囲気が変わり、瞳に殺気が籠る。

 私も思わず緊張してしまうほどの殺気を溢れさせ、芦野は口を開く。

「おまえの父親は自衛隊、それも特殊部隊クラスに所属していたことは知っているか?」

「……その中でも『闇』って呼ばれる特異な組織にいたらしいことまでは」

「よく知ってるな。なら話が早い。『闇』は、文字通りの『人殺し』の集団だ。自衛隊統合幕僚長管轄の、対テロ、対外資系マフィア組織のエキスパートだ。その中でも、おまえの鬼道正義は異常だったらしい。冷徹に人を殺す姿から、ついた二つ名は『殺人機械』。目的のためなら手段を択ばない男だったらしいな。そんな男だが、あるプロジェクトを襲撃してな」

「プロジェクト?」

「ああ。通称『ノア・プロジェクト』。とある企業が極秘裏に進めていたプロジェクトだ。その企業への強襲したのが、おまえの父親の部隊だ。そして、最後に過激派組織『先駆け会』を殲滅した。それが、おまえの父親の最後の作戦、のはずだった」

「? はずだった?」

「ああ」

 肯定した彼女の目がさらに鋭くなる。

 そして芦野は、吐き出すように私に言い放った。

「おまえの父親、鬼道正義はな、わずか数人を残し、『闇』のメンバーを皆殺しにしたんだよ」

「……え?」

 思わず出た言葉が、それだった。

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