rest phase 2-4
そこからは、ただただ遊んでいた。
少なくとも、瀬見が佐久弥を見ている限りそうだった。
ウォータースライダーを滑り、持ってきた浮き輪やビニールボールで遊んでいた。
風間だけは、プールに来ても読書という己のスタンスを貫いていたのだが。
佐久弥も自分達と同じように遊んでいた、ように見える。
しかし、
「う~ん、ちょっと表情固いなぁ」
と、瀬見は、少し離れたところから呟いた。
学園組と別れ、少し休憩するために木陰で休んでいたのだ。
当初、瀬見は紫苑から佐久弥の学校での話を聞いた時、これは面白そうだと物見遊山で来たのだった。
佐久弥が学校で浮いてないか不安に思っていたのも当然あるが、今回は何より、佐久弥の笑った顔が見れるのではないか、と期待していたのだ。
彼女が知る限り、鬼道佐久弥は笑わない。
任務の性質上、笑っていたりしたらそれこそ問題なのだが、せめて学校でくらいは普通に過ごしていてほしい。まだ青春を謳歌しているべき時期に、せめてこういう時くらいは血生臭いことを忘れてほしかった。
しかし現在視界に映る彼女を見る限り、それは適わなそうだ。少なくとも彼女が見る限り、今日も鬼道佐久弥は組織で見ている時と同じような表情だった。
それでも、佐久弥に友人(?)がいたことには瀬見自身、非常に驚いているのだが。
そんな時だった。
「うわっ……!?」
「えっ……!?」
驚いた声が周囲に響く。
足を滑らせた嘉村真一が、上条ちひろの胸元に飛び込む形になってしまっていた。
「ご、ごめん……!!」
「お、おう。……だ、大丈夫、だよ」
お互いに顔を赤くして顔を背ける。
「おやおや、青春だね~」
これはからかうネタができたと喜ぶ瀬見。
瞬間、冷たい殺気を感じる。
「……っ!?」
瀬見が冷や汗を流すほどの殺気は、本能的に振り返ることを体が拒否してしまうほどの恐怖を彼女に与える。
恐る恐る瀬見が振り返ると、そこには二人の人の形をした幽鬼からだった。
一人は、特徴的な三白眼が見開かれるほどの眼力を湛える鬼道佐久弥。
もう一人は仁王立ちで二人を睨む風間重一郎。
「え……?」
瀬見は思わずつぶやく。
彼女には全く理解できなかった。
なぜ彼らが殺気を放っていたかを。
佐久弥に至っては舌打ちまでしている始末である。
「……」
殺気を放つ二人を、特に風間を見て、瀬見は、
「……風間っち、ああいうの好みだったの?」
と、一人で気を落としていたのだった。
当の風間本人は、『佐久弥が気にしている男がもしかしたら任せておけない人物なのではないか?』という怒気を孕ませていたのだが、それは本人しか知りえないことであった。
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