rest phase 2-3

「あ、いたいた!」

 瀬見さんの声の先には、既に待っていた男性陣の姿があった。

 黒い競泳型の男性用水着を着た風間さん。鍛え抜かれた肉体がそこにはあり、一見すると細身のボディビルダーのようにも見える。

 青いボクサーパンツ型の水着を着て、上着に緑のパーカーを羽織った嘉村。こっちは対照的に華奢な体つきだ。筋肉がついてないわけではないが、中肉中背って言葉が合うのではないか。

 というか、ここでも黒なのか風間さん。

「いや~時間かかっちゃってごめんね!」

「あ、いえ。僕らも今来たところでしたから」

「お、おべっか使えるのか少年。若いのにしっかりしてんね~!」

「……」

 明るく話す嘉村に、それを無言で見つめる風間さん。

 いや、見つめるというより、どこか観察しているようにも見えるのだが……。

「嘉村くん! お待たせ☆ 水着似合ってるね☆」

「あ、ありがとう上条さん」

 笑顔で近づく上条さんに、視線を逸らしながら話す嘉村。

 というか、近くないか、その距離?

「ねえ、ちひろの水着、似合ってる?」

 猫なで声で尋ねる上条さん。

 やめろ、本当に。

「え、えっと……似合ってる、と思うよ」

「本当に!? やったー!☆」

 大袈裟に喜ぶ上条さん。

 嘉村も嘉村で、あんな奴に言う必要なんてないと思うぞ。

 というか、なんでそんなに顔を赤らめてるんだ、おまえも。

「……」

 そんな時だった。

 ふと、何か魔が差したような衝動に駆られたのは。

「……お、おい」

 思わず、声が出る。

「うん? どうしたの、鬼道さん?」

 聞き返す嘉村。

「……」

 どうしよう。

 声が、出ない。

 いつも話を聞いてるだけだったからなのか、他の理由があるからなのかわからない。

 聞きたいことは頭ではわかってる。

 だが、体が言うことを聞かないのは何故なのか。

 顔が、熱い。

 口も、僅かに乾く。

 心臓の鼓動も、いつもより速い。

 何故だ。

 何故なんだ。

「二人ともー、いつまで話してんのー?」

「おーい、早く遊ぼうよ~☆」

 その声で我に返る。

 上条さんと瀬見さん、風間さんは先にプールサイドに向かって歩き出していた。

「あ、すみません! 今行きます!」

「あっ……」

 嘉村は先に歩き出して行ってしまった。

 何故だろうか。

 体の不調なんだろうか。

 喉元まで出かかってた言葉。

 私の水着は似合ってるか、と聞こうとしたのは何故だろうか。

 そして、それを聞けなかった時の後悔の気持ちの理由が、わからなかった。

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