rest phase 2-2
そうこうしている間に、目的地に到着した。
大型プール施設『アフロディーテ』。
大型ウォータースライダー『フリーフォール』を有するこの施設は、老若男女問わず訪れる者が多い。
経営的に厳しかった時期もあったらしいが、ネットでの口コミなどを通じてなどの宣伝効果により、かつての危機的状況は脱したらしい、とは瀬見さん情報だ。普段の情報担当のセリフなだけに、真実味を帯びていて若干恐ろしい。
「さて、それじゃ着替えに行きましょっか! 着替えたら更衣室前で集合ね! 待ちきれないからって、先にダイブとかはダメよ~!」
瀬見さんの言葉で、それぞれ更衣室に入っていった。
受付で指定されたロッカーを開け、荷物を入れる。
そして、カバンから水着を取り出した。
スポーツタイプの、白い競泳水着。
自分の中では無難な方だと思っている。
とはいえ、これも瀬見さんに選んでもらったのだが。
こういったイベント事に興味がなかった私は、水着なんて持ってなかった。
そのことを知った瀬見さんに、先日選んでもらったのだ。
全く、店に行って最初にきわどいのを持ってこられたときはかなり焦ったものだ。
あ、あ、あんな破廉恥な水着は、絶対に着ない! 絶対だ!
「あ、サクちゃん! 準備できた?」
そう言って、瀬見さんがやってくる。
褐色の肌の映える、黒いビキニ。
しかも胸と股の真ん中には、どう考えても必要のないジッパーがついている。
見た目は、どこからどう見てもビッチだ。
「? どうしたの、サクちゃん?」
そう言って、私の顔を覗き込む。
やめろ。覗き込むときに腕を胸に寄せるのは。
ただでさえでかいものが強調されて、思わず殺意が沸く。
「……」
「本当にどうしたのサクちゃん!? 何かいつにも増して怖いよ!?」
黙れ。
私の気持ちは、誰にもわかるまい。
「あ、瀬見さんに佐久弥ちゃん! こっち着替えたよ~☆」
そう言ってさらにやって来たのは、上条ちひろだった。
赤と白のボーダー柄のビキニ。
どいつもこいつもビキニか。
しかも、普段からでかいと思っていたが、こうして見るとやはりそうだ。
やはり、こいつと分かり合うことはできないだろう。
「あ、上条ちゃんも着替え終わったの?」
「瀬見さんも、……けっこう大人っぽいの着てるね」
あ、流石の上条さんも瀬見さんの水着は引くらしい。
「ふ、これこそ、大人の魅力っしょ」
そう言って妖艶に髪をファサっとかき上げる瀬見さん。
「……」
右に巨乳。
左に巨乳。
そして、自分。
「……チッ」
思わず舌打ちが漏れる。
嗚呼、神様。ここには敵しかいません。
「……なんか不機嫌だけど、行こっか」
「そだねー☆」
そう言って、敵二人は歩き出し、二人についていくように、私は歩き始めた。
まあ、とりあえず楽しむように努めよう。
内心、楽しみにしていた自分もいることだし、ね。
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