4th phase-4

「……うぅ」

 目が覚めた私が見たのは、どこかのホテルの一室だった。

 広々とした室内と豪奢なシャンデリアやベッドなどの設備から、おそらくはスイートルームかもしれない。

 体を動かしてみるが、動けない。

 自身の体を見ると、縄で両手足が縛られている。きつめに縛られたそれらを解くのは難しそうだ。

 辺りを見回すと、私が案じていた人物をすぐに見つけられた。

「……コンバルトさん!」

「……佐久弥さん、よかった」

 両手足を縄で縛られた様子だが、様子を見るに、ケガとかはなさそうだ。

「……ここは、どこでしょうか?」

「わかりません。どこかのホテルみたいですけど……」

 小声で現状を話し合っていると、部屋のドアが開き、

「お、目が覚めたみたいだな」

 劉が入ってきた。

「……っ!?」

 私は驚愕した。

 部屋に入ってきたのは彼だけではない。

 劉の背後に控えるように立つ、一組の男女。

 見覚えのある二人組を、睨みつける。

「……なんで、おまえが」

「生きてるのか、なんて聞くなよクソガキ。あの時はよくも首落としてくれたな」

 グロリアと、死んだはずのジョーンがそこにはいた。

「不気味だろ、この二人。サイボーグだかなんだか知らないけどさ、死んでも翌日にはこうして送られてくるんだぜ。キモイだろ?」

「おい、劉。てめぇ、調子に乗ってっと……!」

「やめなさい、劉もジョーンも。仕事中よ」

 仲間を窘めるグロリアに、劉は肩をすかし、ジョーンは舌打ちで返す。

「……なんで、私を殺さない?」

 私は疑問をぶつける。

 もっとも解せないことだった。

 少なくとも、私をわざわざここに連れてくる必要なんてかけらもない。

「それは俺も聞きたいな、劉。なんでこの嬢ちゃん連れてきたんだ?」

 どうやら仲間にも黙って連れてきたらしい。

「まあ、これは俺とお嬢ちゃん問題なんでね。悪いけど、おまえらは一旦出てってくれねえか?」

「なんだよおい、おまえそんなガキが好みってか?」

「そんなんじゃねえよ。とにかく、な、頼むよ」

 両手を合わせてお願いする劉。

「……行きましょ、ジョーン。きりがないわ」

「……ちっ、わかったよ」

 舌打ちして退室するジョーンとグロリア。最後まで私を睨みつけていたジョーンから、私は余程恨みを買ったらしい。

「……私に話って、何?」

「なに、おまえはあの鬼道正義の娘なんだろ?」

「……誰から聞いたの? 風間さん?」

「まさか、あの『黒拳』が話すわけないじゃん。まあ、こっちにも事情通って奴がいてね。裏の世界じゃおまえの親父さん、かなり恨み買ってたみたいだぜ」

「……?」

 裏の世界で恨みとは、何のことだろう。

 父は自衛官のはずだ。確かに戦闘があってそれが原因での恨みはわかる。

 しかし、目の前の男の裏の世界とは、所謂、テロリストやマフィア、殺し屋などといった、国内外問わずの外法者達のことだろうか。

 理解が追い付かない。

「ん? その反応、もしかして何も知らないのか?」

 呆れたように劉は言う。


「お前の親父、鬼道正義は自衛隊の中の暗部『闇』に所属してた、生粋の人殺しなんだぜ」


 瞬間、頭が真っ白になった。

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